その後、話し合った結果判った事が有った。
当初、鳥の王ヘロンがこの池に戻る事で目論んだ狙いは、昔と変わらぬ仲間達の魔獣化だったそうである。
『魔力草』を摂取して魔力総量を増やしながら、適度に体内の魔力を吸い上げてくれる魔界ヒルを使用して、慎重に、群れ全体が石化の恐怖から開放されるであろう、全員で魔獣を目指せる、そう思っていたそうだ。
しかし、ランプの言葉で絶望した後、目覚めてティターン化したナッキの姿と言葉によってこう思ったらしい。
――――思った通り、ナッキ様とサニー様はティターン、悪魔として覚醒されたのだ! ギンブナの皆さんがこんな感じで悪魔になられるのならば…… 遠からず誰かが手に入れてくれるのでは無いだろうか? 善悪様のユニークスキル、魔力の出し入れが出来るエスディージーズ、若(も)しくはラマシュトゥ様の強靭化、弱体化付きの回復系スキルを……
なるほどね……
魔獣化して石化の恐怖から仲間達を解放したい、そんな風に願い続けていたヘロンからすれば、魔力を増やせる『魔力草』と魔力過多による石化症状を抑える事が出来る『魔界ヒル』が揃っている『ペジオの池』、『美しヶ池』に戻れる事は、望外の慶事であったのだろう。
まあ、それは無かった、絶望だ。
しかし、彼と彼の配下が探し出したウランをナッキは受け入れて見せた。
一瞬で強靭な悪魔へと進化して見せたのである。
悪魔はレッサーからグレイターへ、更にアークデーモンを経てデーモンロード、魔王と呼ばれる最上位種に至る進化のタイミングで、それぞれ個別のスキルや特性による能力を顕現させる、この事をヘロンは自らの中にあったアートマンであるストラスや親しく付き合った魔王達から教えられて知っていたのである。
魔力過多による石化はエスディージーズで吸引して貰うか、魔力自体を減らす弱体化治癒で治す事が出来る事実を……
しかし、両者はとっくのとんまにお空の上である、今日も元気に空を照らしているのだ。
と、ここに来て、新たな可能性が現れたのである、しかも二者同時に、である。
サニーはアヴァドンやアルテミスの『蹂躙(カリンマ)』に類似したスキル、一方のナッキはシヴァやフンババ的な物だろうか、何やらフィジカル面で強化されていることが判り、テンション爆上げ中に吹っ飛ばされて意識を失った、そう言う事だろう。
大体の流れを理解したナッキは自身の額を鰭で指しながら言う。
「んで、ギンブナがティターン化出来るってのは判ったけどさ、この緑の石ってそこらに有る物なの?」
ヘロンは瞑目(めいもく)したまま考え込む様にした後、目を開けてナッキに答える。
「今サーチした範囲には無いみたいですけど…… 何、世界中をくまなく探せば見つかるでしょう! ここに二つ揃っている位ですからそこらにゴロゴロしてるんじゃないですかね?」
ふむ、ウランがそこらにゴロゴロか…… 楽観的と言えばまだマシだろう、ゴールドラッシュに酔う山師の方が近い気がする。
当然の事だが、ナッキの仲間達にはヘロンやドラゴの言葉は伝わらない為、この間、サニーはナッキの口の中から出て周囲に通訳し続けているのである。