ドラゴは羽音を響かせてヘロンに聞く。
「俺は然程(さほど)詳しくないんだが、ヘロンよ、スキルの種類とはどれ位有るものなのだろうか?」
ヘロンは首を傾げながら答える。
「そうさなぁー、最終的に数十万を数えた悪魔たちは、皆それぞれ独自のスキルを持っていたみたいだけど…… 勿論どこか似通ったスキルは存在していたみたいだがな、それが?」
このヘロンの問いに対して、ドラゴは深い溜息で返し、ナッキが代わりに説明をする。
「ヘロン…… 何十万と種類があるスキルからたった二つを引き当てる確率ってほぼゼロじゃないかぁ、幾ら緑の石が沢山有ったってさ、使い切る前にギンブナがいなくなっちゃうよ!」
「あ、そうか……」
「ご心配なく、何とかなりそうですよ」
そう言って話に割り込んだのは、つい先程まで何故かオラつき気味でふて腐れていたニホンザリガニのランプであった。
ナッキとヘロン、ドラゴの三匹は首を傾げている。
ランプは言葉を続ける。
「ヘロンさんもドラゴさんも失念されておられる様ですが、悪魔や魔獣はその位階が高まれば魔力を吸い上げる位の事は造作も無くやってのけますよ、かの四魔神に率いられた悪魔たちは、地上の魔力を吸い尽くして輝く光の天使と化し天空に去った、有名な話でしょう? そして今この場には、悪魔四柱、私と仲間のニホンザリガニが十六匹、我々は魔獣ですが今後魔力を増やして位階を上げれば、早晩魔力吸引が可能になる事でしょう」
ナッキが聞く。
「それなんだけどさ、ランプ君達って長老さんの配下なんでしょ? 何かさっきから聞いてるとこの池に加わる感じに聞こえたんだけどさ、そうするの? 大丈夫なのかい? 長老さんの許可とか」
「ええ、許可を貰ったと言うのとは違いますが、長老様から命令されたのです、アナタ方の力になるように、そう言われています」
「そうなんだ」
納得した感じのナッキの横からヘロンがやや項垂(うなだ)れた感じで呟く。
「はぁー、結局振り出しに戻っちゃったじゃないか…… ヒルは兎も角、肝心の魔力草が無いんじゃ我々の位階が上がるまでに一体どれ程の時間が掛かってしまうやら…… その間に仲間達が石と化して死んで行くのを見続けなければならないんだな……」
この言葉にはナッキとドラゴは揃って俯き黙り込むが、横から発言したランプの声音は意外にも明るいものであった。
「どうやらアナタ方の覚悟は付いているようですね♪ 私は長老様から言われてきたのです、皆さんに悪魔として生き抜く覚悟があるのならば、森の中の沼にお連れする様に、と♪」
「えっ! それって若しかして!」
「はい、位階を上げるために必要な事をお教えするそうです」
「「「っ!」」」
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