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傾「で、悲鳴を上げられて失礼なやつだよな。」
ノア「え、凄い気になるんだけど、ボクにも見せてよ。」
アリィ「やめといた方がいいよ…鳥肌凄いから。」
傾「気分じゃないから嫌だ。」
白雪「ようござりんしたのかい?」
傾「ん?あぁもうそれに関しては気にしてない。俺にとってはひとつの武器だから。…なぁこの料理、白雪が作ったって聞いたが、シイシャン手伝ったか?」
ノア「手伝ったけど、ちゃんと白雪さんの言う通りにやったよ。結構不味い…?」
アリィ「若干薄味だね。」
傾「白雪の味付けと多少違うからな。だが不味くは無いし、俺は好きな味付けだ。 」
白雪「主さんはなんでも美味しいって言うだろう?」
傾「流石に昆虫食は言わないけどな。シイシャン、見張りのことだが交代してくれ。俺と杏で見張りを行う。 」
ノア「でも傾明らか寝不足でしょ?」
傾「途中で白雪に代わってもらうから問題ない。お前は英気を養うとよい。」
ノア「まぁ白雪さんがいるなら…。」
傾「お前も病み上がりではあるが、それでいいな?」
アリィ「大丈夫。」
アリィ「…で、話したいことがあったからだよね?見張りを予定と変えたのって。」
傾「あぁ。これは私的な話ではあるが、死んでるはずの死体のことだ。」
白雪「死んでるはずの死体とはなんでありんす?」
傾「それを白雪にも聞かせたかった。」
アリィ「まぁアンタがしていいって言うなら、白雪さんにも説明するけど…別に今まで会ったことがある訳じゃなさそうだし、関係があるの?」
傾「お前の説明が終わったら話す。」
アリィ「ってことがあって…」
白雪「それは…」
傾「可能性は低いが、ない話じゃないだろう?」
白雪「冒涜も甚だしい。」
普段の温和な顔から白雪は表情を変え、牙を向き怒りを表す。
アリィ「っ…。」
傾「白雪、殺気をしまえ。杏、俺はずっとある人物を探している。」
白雪「ごめんなんし。」
アリィ「リーダー?でも私的な事だから違うか。白雪さんに話聞いてもらったし。」
傾「俺が探してるのはあるイタチの獣人だ。…恐らく。」
アリィ「恐らくって言うのは…」
傾「人間のフリをして俺と昔関わってたんだ。種族を知ったのは…死んだことによる書状が白雪に届いた時の事だった。」
白雪「生きるためとはいえ、目立つ長い尾を切り、布の下に隠してやした。」
傾「…報せを受けて、すぐに探したんだがどこにもそのヒトの姿は無かった。当時は戦の真っ最中で、死体を回収する余裕もないはずなのにだ。」
アリィ「私のお母さんと同じケースがあるかもしれないってこと?」
傾「ああ。俺がまだ生きていたい理由はそれただ一つだ。骨をちゃんと埋めて弔いたい。」
アリィ「関係者には聞いたよね?」
白雪「もちろん。死んだ者がどういう者か把握している割に見当たらねぇと。」
傾「俺の受けた指示は、テオスの救出だ。だが、少しでいい。時間が欲しい。」
アリィ「特徴を教えてくれる?正直出来るか分からないけれど、なるべく傷つけないようにするから。」
傾「…文句を言われるかと思ったな。」
アリィ「…大切なヒトなんでしょ。どういう気持ちでいるかなんて、私は…分かるから。…それに今は私、悔しいぐらい頭がスッキリしてるの。」
傾「恩返しか?」
アリィ「特徴!」
傾「分かった分かった。長い茶髪で、高い位置で一纏めにしている。切れ長の瞳で、瞳の色も茶色だ。俺とは違って擬態毛がある。」
白雪「それは主さんが特殊なだけでありんす…。」
傾「で、体格は細くて長身。あと分かりやすい特徴しては服だな。あのままであれば、の話だが。」
アリィ「服?」
傾「筆と紙があれば描けるんだが…シイシャンに俺の記憶を杏が覗けるように頼むか。動く屍人は伏せて、な。」
アリィ「私余ってるご飯食べてくる。」
傾「食べすぎて吐くなよ。」
アリィ「そんな馬鹿じゃないってば。」
白雪「では、続きはまた明日でありんすね。」
傾「…白雪、お前どこまで着いてくる気だ?」
白雪「わっちはこの国を出られん。せめて…主さんがこの国を出るまでは離れんせん。」
傾「お前も…役目なんて捨ててしまえ。」
白雪「そうもいきんせん。それにこれは、わっちが好きでやってること。」
傾「鬱陶しくてたまらん。」
白雪「主さんを育てたんは誰だと思ってるんでありんすか。」
傾「じゃあ俺も寝るから後は見張りを頼んだぞ。」
傾は去り際小さなため息をついた。
ノア「ふぁ…おはよ…。」
ノアは隣に寝ている誰かを起こそうとして固まる。
ノア「それ…呼吸できてる?」
傾「でなかったら今頃冷たくなってるな。」
ノア「怖い冗談嫌い。」
傾「うつ伏せで寝るのはそんなにおかしいのか?」
ノア「苦しくない?普通はそれで寝ないと思うんだけど…」
傾「全く。今は白雪が見張りか?」
ノア「杏、ここに居ないから一緒に居るかも。」
傾とノアは話し合いながら、外に出る。
白雪「おはようござりんす。」
ノア「可愛いことになってるね。」
ノアは白雪の膝で眠るアリィを見て、そう白雪に話しかける。
白雪「わっちはテントで寝るように言ったんでありんすが…先に限界が来たようで…」
傾「じゃあずっと白雪1人で見張りを?」
白雪「あいや、ちょうど直前の交代時に…」
傾「なら問題ないか。水を汲んでくる。」
ノア「……。」
白雪「傾があそこまで快眠とは…」
ノア「あれは完全に気付いてないね。」
白雪「どのように?」
ノア「夢と記憶って密接な関係だからね。記憶と同じ要領で、悪夢をパクッと。」
白雪「パクッと。…獏みたいでありんすねぇ…。」
ノア「あのまま寝不足が続くと響きそうだったからさ。ジハードとの共同研究だったんだけど、まさかここで役に立つとは… 」
白雪「しかしそれは記憶ごと抜けちまうのでは?」
ノア「そう。これリスクがあってさ。その通りなんだよ。それをどうにかする段階だったんだけど…色々あって。今回は預かってるだけ。あでも安心して。覗いてもいいって傾は口では言ってたけど、あんまり覗いて欲しくなさそうだったから、ちゃんと見てない!」
白雪「ほうほう。」
ノア「…前から思ってたんだけど、よく理解できるよね。そもそも魔法…?えっ?ってなりそうだけど…」
白雪「ああそれは、傾から聞いたんでありんす。」
ノア「たまに二人きりで何話してるんだろうと思ってたんだけど、その話をしてたの?」
白雪「そうでありんすね。」
ノア「言ってくれれば教えたのに。」
傾「戻った。」
ノア「あ、おかえり。昨日の傾の悪夢ボク預かってるんだけど要る?」
傾「なんでそんな物騒なものを持ってるんだ。早いとこ返せ。」
ノア「自分の記憶を物騒って…。返すけどさ。」
ノアは何かを傾に投げるような動作をする。
傾「倦怠感がある。」
ノア「返した証拠だよ。倦怠感は許して。それどうにもなんないから。で、話の続きなんだけど、やっぱり生活に支障が出てるし消さない?ってこと。」
傾「嫌な記憶なのは間違いだが、死んだという記憶があるおかげで、成長出来た部分もある。だからいい。」
ノア「そう?」
傾「俺にはお前が心底分からないな。杏に魔法を解除させたことにキレて、締めてきたというのに、今度は快眠させるときた。」
ノア「感謝してるところもあるんだよ。正直今の杏と関わるのは今でも怖いよ。でも…あのままじゃ良くなかったのは事実だし、代わりにやってくれたと思えば…」
傾「俺が好きでやっただけだ。感謝してるならしてるでいい。ついでに頼まれろ。」
ノア「うん?」
傾「俺の記憶を杏に覗かせてくれ。」
ノア「いいけどどうしたの?」
傾「フィヌノア国に俺の知り合いがいる可能性があってな。侵入時に、出来ればソイツとは戦闘を避けて欲しいんだが、特徴を伝えるより直接記憶を見た方が早いと思ってな。」
ノア「ボクは?」
傾「そうだな、お前にも知ってもらう必要があるか。人生をまるごと見せる訳にもいかんからな。…俺が6歳の時の記憶にしよう。」
ノア「まるごと1年?」
傾「いや。とりあえず1時間でいいだろう。それで覚えられなければ伸ばす。時期は…」
傾は事細かに記憶の指定をノアにする。
傾「これでいいだろう。…何故そんな輝いた目をしてるんだ。」
ノア「…だよ。」
白雪「何か言いんした?」
ノア「ここまでちゃんと言ってくれる人初めてだよ!もう皆アバウトに頼むんだもん!助かる〜!」
傾(そう言えば前に『黒馬』も愚痴をこぼしていたな。)
傾「それはなにより。」
アリィ「うぅ…あれ私、力尽きてた?」
白雪「うむ。」
アリィ「あちゃ…ごめん。」
白雪「構いんせんよ。」
傾「シイシャンに話は通しておいた。」
アリィ「昨日の件ね、分かった。」
白雪「さて、朝餉をつくるとしんしょう。」
傾「俺が作る。」
白雪「わっちが作りたいんでありんす。」
ノア「じゃあお願い。」
傾「お前が勝手に決めるのか…。」
アリィ「まぁ折角作りたいって言ってくれてるんだしさ。美味しいし。」
傾「お前美味しいが理由だろ。」
アリィ「……。」
傾「こっちを向かんかい。」
アリィ「あー美味しかった!」
傾「ご馳走様。」
白雪「お粗末さまでありんした。」
アリィ「でも流石に食べ過ぎたかも…シイシャン、先に補給していいよ。」
ノア「そう?分かった。」
アリィに促され、ノアはアリィの肩に手を置く。
ノア「あー染み渡るぅ。」
アリィ「なんかやだ。」
ノア「えー。」
傾「魔力は十分か?」
ノア「十分だよ。すぐやるって。記憶を覗いてる間、ボクら寝るからねよろしく。」
白雪「不思議でありんすねぇ…。魔法…まるで…」
傾「何か言ったか?」
白雪「いんや。」
10分後、ノアとアリィは目を覚まし立ち上がった。
傾「覚えたか?」
ノア「ばっちりだよ。杏は?」
アリィ「私も大丈夫。喉が渇いたから水を飲んでくるね。」
白雪「わかりんした。」
傾「そういえば俺も竹筒が底をつきそうだな。俺も水を補充してくる。」
ノア「変にアリィに絡まないでよ。」
傾「たわけ。補充に行くだけだ。」
アリィ「あれ、アンタも来たの。」
傾「ああ、携帯用の水が底をつきそうで…」
傾はアリィの顔を見て驚いた顔を見せる。
傾「…泣いているのか?」
アリィ「…そういうの分かっても言うもんじゃないと思うんだけど…」
傾「俺はシイシャンに覗かせる記憶をかなり限定的に指示したはずだが…」
アリィ「…別に記憶の中で辛い思いをしたとかじゃない。ただ…アンタに見せてもらったヒトがもう生きていないっていう事実が悲しかっただけ。」
傾「…いいヒトだったろう。」
アリィ「いいヒトだったよ。…恨めしいくらい。」
傾「まぁこれだけあれば充分か。俺は先に戻って出発の準備をしている。早いとこ来るように。」
アリィ「分かってる。」
傾はノア達の所へ戻る最中、独り言を呟く。
傾「…鼬一郎さんは恨んでるか?私を。」
(…死人に口なし。だが…あのヒトは絶対恨んでなどいないと答えるんだろう。)
傾「恨んでくれるようなヒトであれば幾分か良かったんだが。」