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玲於の言葉に慌てて否定する。
すると玲於は俺の服を脱がせにかかる。
「なっ…何して……っ!」
「何って……続き」
「……いい、今日、やっぱいい」
「えーどして?」
「なんかそういう気分じゃない…」
「ふーん」
玲於は不服そうな顔をしながらも手を止めてくれる。
「じゃあ今日はキスだけしよっか」
そう言って再び唇を重ねてくる。
「んっ……ふぅ……んんっ……!」
玲於の首に手を回しそうになってハっとする。
「ま、待って…まだ…っ、聞きたいこと、ある」
「なに?」
「なんでこんなデリヘルみたいな……玲於の愛すってのはやっぱ、セフレ的な意味なの…っ?」
「……」
俺の質問に玲於は黙り込んだかと思えば、またすぐ口を開いた。
「あー…っと?…それってつまり霄くんデートしたいってこと?」
「でっでー……と…って……」
「いいよ」
「え?」
「今から行こっか」
そう言うと玲於は俺の上から退いて立ち上がった。
「えっ、は?い、今から…?」
「うん、ほら霄くん、ぼさっとしてないで行くよ」
結局玲於と出かけることになってしまった。
玲於とホテルを出てから15分後には渋谷の人混みを歩いていた。
「どこ行くの……?」
「どこでもいいよ。どこに行きたい?」
「どこって……別に……」
「んー……じゃあ映画でも見る?」
そう言いながら玲於が提案した映画館は
スクランブル交差点近くにあるビルの一角だった。
上映中の作品を見るためチケットを買うためレジに並び玲於は俺に問う。
「どの映画見たい?」
「え…俺が決めるの?」
「俺は別になんでもいいんだけど。霄くんが見たいのあるなら」
玲於はそう言うが実際俺は映画なんて滅多に行かないし興味もない。
「なら…これで」
「おっけー。じゃあこれにしよっか」
そう言って玲於が選んだのはアクション映画だった。
正直退屈だろうと思ったが席に着くと
案外ストーリーやアクションシーンが面白くて気づけば見入ってしまっていた。
エンドロールが流れ始めると玲於が口を開く。
「楽しかった?」
「まぁ……そこそこ」
「そっか。よかった」
そう言うと玲於は席を立ち出口に向かって歩いていく。
俺は慌ててその後ろ姿を追いかける。
「ねえ」
「ん?」
「なんで急にデートなの…?ここ数日ずっと体だけだったのに。」
「そりゃ、霄くんが欲求不満なのかと思って?」
「なっ…そ、そんなわけ……!」
「ふっ、あんなに気持ちよさそうに善がってたのに?」
「…っ、だ、だったら玲於こそ、なんで本番してくれないの…」
「んー、それは秘密♡」
玲於は困ったように眉を下げながら笑った。
その後、俺と玲於は渋谷のカフェでお茶を飲んだり買い物したり
カラオケに行ったりして時間を潰した。
(……まじで玲於の意図がわかんない…俺ってセフレなんじゃないの?明らかな恋人扱いだけど…セフレでも飯ぐらい行くのか?わからなすぎる……っ!!)
玲於の行動が読めなくてずっと困惑しっぱなしだったが、それでも玲於と一緒にいると不思議と楽しい気持ちになれた。
それからしばらくして日が暮れ始めた頃
玲於は「そろそろ帰ろうか」と言い出した。
その一言は、まだ熱を帯びた街の喧騒の中に、冷たい水滴のように落ちた。
さっきまでの二人で飲んだカフェのコーヒー
カラオケでの賑わいも一瞬にして遠い記憶のようになる。
俺の手から、玲於の手がするりと離れる。
まだ指先に残る微かな温もりが
この時間が終わってしまうことを告げているようで、たまらなく寂しかった。
だからか、気付けば玲於の服の袖をぎゅっと掴んでしまって
「…俺のこと気持ちよくしてから帰って」
そんな恥ずかしい言葉を言ってしまったのはきっと
玲於と一緒にいるのが楽しくて心地よくて……
それに甘えてしまったから。
玲於は驚いたように目を見開いたが
すぐに優しい笑みを浮かべた。
そして俺の手をそっと握り返してくる。
その瞬間、心臓が大きく跳ねたような気がした。
「それじゃあ……俺ん家行こっか?」
「えっ、ラブホじゃなくて?」
「こっからだとホテルより俺の家の方が近いから」
そう言って玲於は俺の手を引いて歩き出した。
玲於の家に行くなんて初めてで少し緊張するけど同時にワクワクしていた。
家に着くと
「すぐ出るからベッドで待ってて、はいこれ着替えね」
と、俺のサイズピッタリのチャコールグレーの
パジャマ上下、バスタオル
ボディタオルを渡され
玲於は浴室に向かった。
歩き疲れたし、ちょっと休ませてもらおっと思いベッドに腰掛けると
ベッド横のサイドテーブルに無造作に置かれた玲於のスマホを見つける。
どうやら電源がオンになっており、好奇心で画面を覗き込むとホーム画面の画像に見覚えがあった。
(これ…俺が1ヶ月前ぐらいに投稿した他撮り写真?)
俺がほんの1ヶ月前、快斗と陽葵と歌舞伎町で遊んでたときに陽葵くんが撮って送ってきた辿りだ。
後ろ姿のビジュが良かったから「他撮り」という文をつけて特に加工もせずTwitterに投稿した覚えがある。
玲於が「Rei」というアカウントで俺の裏アカをずっと見ていた、というのは承知の事実だけど