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#シリアス
「へぇ。じゃあ、これって今だけ特別?」
天馬くんが少しだけ意地悪そうに、でも期待を込めたような瞳で僕を覗き込む。
「……今だけじゃなくても、天馬くんが困ってたら、いつだってする、よ」
思わずこぼれた本音。
言ってから、自分の大胆さに心臓が止まりそうになった。
けれど天馬くんは、少しだけ目を見開いたあと、今日一番の穏やかな笑顔を浮かべた。
「……そっか。…サンキュ」
その声があまりに優しくて
僕は逃げ場を失ったように、ただプリンのカップを見つめることしかできなかった。
◆◇◆◇
気づけば、窓の外は燃えるような夕焼けに包まれていた。
最初に出迎えてくれた時より、天馬くんの頬には赤みが差し、活力が戻っているように見える。
体温計を脇から抜いた天馬くんが「お、下がってる」と声を弾ませた。
「本当?よかった……」
自分のことのように安堵して、力が抜ける。
すると、天馬くんはベッドに座ったまま、じっと僕を見上げた。
「これ、マジで水瀬のおかげじゃね?」
「そ、そんなことないよ。天馬くんの体力がすごかっただけで……」
「あるって。正直、一人だったら飯も食わずにずっと寝てたし。……水瀬が来てくれて、助かった」
「……ご飯食べないのは、絶対駄目」
「はは、怒られた。はい、気をつけます」
軽口を叩き合えるまでになった彼を見て、ようやく僕の緊張も解けていった。
僕は鞄を肩にかけ、立ち上がる。
「じゃあ……僕、そろそろ帰るね。お家の人も、もうすぐ帰ってくるだろうし」
「ん。今日は、マジでありがとな」
改めて真っ直ぐにお礼を言われると、どうしていいか分からなくなる。
玄関まで、彼は少し足元をふらつかせながらも見送りに来てくれた。
靴を履き、ドアノブに手をかける。
けれど、最後にもう一度だけ顔が見たくて、僕は振り返った。
「……天馬くん」
「ん?」
「早く良くなって……また学校で、たくさん話したいな」
自分の声が、夕暮れの空気に溶けていく。
天馬くんは一瞬、呆気に取られたようにきょとんとしていた。
けれど、すぐにふっと、とても幸せそうな笑みを浮かべた。
「……それ、今の俺には一番効く」
「え?」
「なんでもない。……すぐ治して、学校行くわ」
その笑顔の破壊力に、僕の胸はじんわりと熱く、甘く痺れた。
「……じゃ、じゃあ、またね。お大事に」
「おう。また学校で」
軽く手を振る天馬くんに、僕も小さく振り返して、外に出た。
閉まった扉の向こう側を思いながら歩き出す。
夕闇が迫る帰り道、僕の胸の奥は、まるで春が来たみたいにふわふわと暖かかった。
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