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――『最後の日』
写真の裏に残された四文字が、頭から離れなかった。
放課後、 四人はいつもの教室に集まっていた。 机の上には、前世の写真が何枚も並べられている。
「やっぱり、おかしい」
柔太朗が一枚の写真を手に取った。
「何が?」
勇斗が聞く。
「この写真の日付。俺たちが覚えてる『最後の日』より、少し前なんだよ」
「……え?」
勇斗が写真を受け取る。 確かに、写真の端に小さく日付が残っていた。
「じゃあ、これが最後の日じゃない?」
「たぶん」
柔太朗は別の写真を並べた。
「こっちも。その次の日に撮った写真がある」
「でも……」
太智が眉を寄せる。
「俺らが覚えとるんは、この写真のあとに別れたってことやろ?」
「うん」
「じゃあ、なんでその間の記憶だけないん?」
誰も答えられなかった。 そこへ、舜太がぽつりと言った。
「……仁ちゃんは知っとるんやろな」
勇斗が顔を上げる。
「最後の日に何があったのか」
「うん」
舜太は写真を見つめた。
「だから俺らから逃げとるんちゃう?」
その言葉が、教室に落ちる。 もしそうなら。 仁人は四人が嫌いだから逃げているわけじゃない。
むしろ――
「……俺たちを守ろうとしてる?」
勇斗が呟いた。 その瞬間、四人のスマートフォンが同時に鳴った。 知らない番号からだった。
勇斗が画面を開く。 そこには、一枚の写真が送られてきていた。
五人で写っている、 今まで見たことのない写真。 五人とも笑っている。 けれど、写真の裏側には文字が書かれていた。
――『この日を最後にしよう』
「……何これ」
太智が息を呑む。
「誰が送ってきたん?」
勇斗は送信者を確認した。
「……分からない」
番号は表示されていない。 ただ、その写真を見た瞬間。 勇斗の頭に、一つだけ映像が浮かんだ。
夜。 雨。 四人の背中。
そして――
「……仁人」
勇斗は立ち上がった。
「行こう」
「どこに?」
「仁人のところ」
今度は誰も止めなかった。
*
仁人は、一人で歩いていた。 夕暮れの道。
ポケットの中には、さっき四人に送った写真と同じものが入っている。 本当は送るつもりなんてなかった。 ただ、見つけてしまった。 あの日の写真を。 そして、四人の顔を見ていたら。
どうしても――
最後に一度だけ、伝えたくなった。 忘れてほしくなかった。 でも。
「……これで最後」
仁人は自分に言い聞かせる。 これ以上、近づいてはいけない。
そう思って歩いていたとき。
「仁人!」
後ろから声がした。 足が止まる。 振り返らなくても分かる。 勇斗だった。
「……なんで」
続いて、舜太。
「仁ちゃん、待ってや」
柔太朗。
「少しだけ話そう」
太智。
「……逃げんといて」
四人の声。 仁人は目を閉じた。 会いたくなかった。
いや。 本当は、会いたかった。
だからこそ――
「来ないで」
振り返らずに言う。
「お願いだから」
「嫌だ」
勇斗の声が返ってくる。
「……どうして」
「今度は、お前を一人にしたくないから」
仁人の目に涙が浮かぶ。
「……違う」
「何が?」
「俺は、一人でいたいんだよ」
「嘘」
柔太朗が静かに言った。
「仁ちゃん、ずっと俺たちのこと見てたじゃん」
「……」
「昨日だって、俺たちが帰るまでずっと校門から見てた」
仁人の肩が小さく震える。
「……見てない」
「じゃあ、こっち向いて」
太智の声は優しかった。
「ほんまに俺らのこと何とも思ってへんのやったら、向けるやろ?」
仁人は振り返れなかった。 四人が少しずつ近づいてくる。 そして。
「仁人」
勇斗が呼んだ。 昔と同じ声。 何度生まれ変わっても、忘れられなかった声。
「俺たち、何か間違えた?」
「……違う」
「じゃあ、なんで?」
「……」
仁人は唇を噛んだ。
言えない。 言ってはいけない。 なのに。
「……大切だから」
小さな声が漏れた。 四人が息を止める。
「え?」
仁人は俯いたまま続けた。
「大切だから……会いたくない」
涙が落ちる。
「また一緒になったら、また……」
そこで言葉が止まった。 四人には、その先が分からない。 けれど。 仁人が泣いている理由だけは、少し分かった気がした。
「……仁人」
勇斗が一歩近づく。 仁人は逃げなかった。 ただ、震える声で言った。
「俺たちは……何度も同じことを繰り返してる」
四人が顔を見合わせる。
「何度も、出会って」
仁人は涙を拭った。
「何度も、五人になって」
そして。
「何度も……最後には、誰かがいなくなる」
静かな夕暮れに、その言葉だけが響いた。 四人は初めて知った。 自分たちが覚えている「前世」は。
まだ、すべてではなかったのだ。
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コメント
1件
あー……今回えぐかったわ。仁人が「大切だから会いたくない」って言うシーン、グッときた。逃げてるんじゃなくて、守ろうとしてたんやなって。それに「何度も繰り返してる」って台詞で、今までの伏線が一気につながった感じがした。5人で写った写真の裏の文字も不気味やし、「皆の記憶がまだすべてじゃなかった」で終わるのはやばい。続きが気になりすぎる!