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「ましろせんぱい……」
実里くんが私の名前を呼ぶ。
でも、いつもみたいににこやかに答えられない。
「みんな、私になにを隠してるの?」
「お前には関係ない話だ」
武蔵先輩にそんなこと言われるなんて思わなくて、胸が痛む。
関係ないって……歩くんの話なんだよね?
「武蔵」
潤が制すように声を上げた。
握りしめた手が僅かに震える。息がうまくできない。
「どうしてですか」
わかってる。九條の家の問題が絡んでいるんでしょう?
でも、私……
「もう部外者じゃありません」
自惚れかもしれないけど、私はみんなとたくさん関わってきた。
みんなのこと知ってきたつもりだ。
「歩の家の問題なんだ。……ましろんだけじゃない。俺らには何もできないんだよ」
潤が悲しそうに眉を寄せて俯く。
歩くんの家の問題……だから、放っておくの? ただ待っていることしかできないの?
歩くんの笑顔の裏側の抱えている問題にずっと気づかなかった。
最後に会ったときだって、元気がないってわかってたのに触れないようにしてしまった。
手の届く距離にいたのに。
「せんぱい」
俯いて涙を堪えている私に実里くんが声をかけてきた。
「顔あげて」
いつもの実里くんの口調じゃない。真面目でしっかりとした声。
涙が零れ落ちそうだったので、できるだけゆっくりと顔をあげる。
目の前には実里くんが真剣な面持ちで立っていた。
「歩に会いに行こう」
「実里!」
武蔵先輩と潤が咎める声がした。
けれど、実里くんは私を静かに見つめ続けている。
「ましろせんぱいなら歩を説得できるかもしれない」
「説得?」
そう聞き返すと実里くんが優しく微笑む。
「歩は本当は誰かに助けてほしいんだと思う。けど、助けを求められないんだよ」
「どう、して?」
「そういうやつだから。自分よりも他人の気持ちを優先する。だから、家族のこと考えると抵抗できなくなるんだ」
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