「お母さん、だいじょうぶ?」
僕は薄汚いベットに横たわる母を心配して声をかけた。
数日前から母は軽く体調を崩してしまっていた。
「えぇ、大丈夫。わたしは…」
話している途中、お母さんは何回も咳をしていた。夜も、咳や熱に苦しめられていた母を、僕はもう見過ごせなかった。でも、僕の家にはお金なんてないから薬も買えない。
だから、前に見たアネモネの花畑に行って、花をお母さんにプレゼントしようと思ったんだ。少しでも元気になって欲しいから。でも、今思い返したら、花をあげるより、街の人々にお願いしてお金を寄付してもらってから、薬を買った方が良かったかもしれない。でも、結果的にはアネモネの花畑に行って良かったんだな、と思う。
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「よし、ここがお花畑だ!お母さんにプレゼントしよう!」
一生懸命にアネモネの花を選ぶ。花畑は小さいが、様々な色のアネモネがあり、とても美しい。
「あれ?」
ふと前を向く。
そこには、白いワンピース(でも、美しい刺繍がされていて高そうだった)を着た美しい金髪をした女の子がいた。
その女の子は、とても綺麗だった。
僕はその女の子に声をかけることにしたんだ。まさかそれが、君との出会いになるなんて。
「きみはだれ?この辺に住んでいるの?」
すると、その子はこちらを振り返る。
「わたし、あそこに住んでるの。」
と、少し遠くの煌びやかで豪華な家を指差した。
でも、お母さんは前に、ああ言う豪華な家に住む家庭の子は、普段は家にいると言っていた。なぜ家にいないのかと疑問に思ったから、なぜここに来たの?と言った。
「今日はここの別居に遊びに来てるんだけど、つまんないの。別居でもいつもと同じで、家の中でお勉強とお稽古しかしてないのよ、せっかく来たのに休めないから抜け出してきちゃった!」
君は、無邪気に笑っていた。
僕は、そんな君から目を離せなかった。
すると、
「じゃあ聞き返すけど、なんであなたはここにいるの?」
と聞き返されたので、
「お母さんが体調をくずしちゃったから、元気になれるようにお花をあげるんだ!」
と答える。
「ここ、わたしの家のお花畑で、普通の人は立ち入っちゃダメなんだよ?看板見えなかったの?」
慌てて後ろを見る。すると、立ち入り禁止のマークが書かれた看板があった。
僕はすぐに、
「勝手に入ってごめんなさい!花に夢中で気づかなかったんだ」
と謝る。でも君は、
「ふふ、いいよ。私も驚かせるようなこと言っちゃってごめんね」
と許してくれた。そして、
「本当はダメだけどお花取っていいよ!特別にね! あ、でもそろそろ家の人たちが私を探しに来ると思うから、早く行かないと君が花畑にいること、バレちゃうよ!」
と笑いながら言う。
僕はそんな優しい君に感謝しながら、赤いアネモネを取った。
そして帰り際に、君の名前を聞いた。
「わたしの名前は、カノンよ!カノン・メロディー!
あなたの名前は?」
「ぼく…ぼく、ルンって言うんだ!
いつかまた会おうね!」
僕は君に手を振りながら、家まで走って行った。
これが、僕と君との最初の出会いだった。
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