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「まだわかってないみたいやから、説明するわ」新藤さんは怖い位の笑顔を湛えていた。「俺にいつも綺麗な字でファンレターくれる女がいたんや。毎回決まってブルーの綺麗な空色の便箋。だから俺はその女のことを『空色』って呼んでた。俺の誕生日とバレンタインは欠かさず手作りの菓子を送ってくれてさ。どんな女かと思っていたらまさか結婚してマイホーム建てに来た客の中に、ソイツがいるとは思わなかったけど」
そんな
「最初に送ってくれたチョコレートクッキー、ちゃんと味見したか? メチャクチャ固かったで。歯が折れるかと思ったし」
嘘だ
「今、お前の目の前にいるのは、お前が死ぬ程焦がれていた男や。お前が逢いたいって新藤(おれ)に言ったよな? 地獄に堕ちてもいいって。だったら地獄へ堕ちる前に、今から極上の夢を見せてやる。空色――いや、律。白斗(おれ)が、お前を愛してやる。詩音(こども)のことは、誰のせいでもない。律は悪くない。旦那や家族に責められたって関係ない。お前は最善尽くして、精一杯頑張ったやろ」
誰か、夢だと言って
新藤さんは眼鏡を外して前髪をかき上げて私を見つめた。そこに何時もの優しく繕った『新藤博人』という男はいなかった。
「まだわからんのか、俺の正体。律は鈍感すぎるやろ。最初に車乗せた時、『Azure』まで聴かせてわかりやすくアピールしたのに、俺のことをRBの大ファンなんて勘違いしてさ。大笑いしそうになったし。元スタッフなんて俺の嘘を鵜呑みにして、鈍感にもほどがあるやろ。お前、本当に俺のこと好きなん?」
今。目の前に現れたのは、
私が十五の時から恋焦がれていた、
鋭い眼光の白斗に似た男だった——