結構時間空きました
続きだよう
日帝「……万が一のために、ね」
2日前、あの人に貰ったピアスを外し、鏡を見ながら耳に触れた。
私はお洒落には鈍感だし、そういう機会も無かったから、
あの時は若干躊躇したけど内心嬉しい気持ちがあるんだろう。
時刻は夕陽に照らされた午後7時
日帝「……さ、日も落ち着いたぐらいだし…」
そういえば、彼はあの店の常連なようだし
会った場所から察するに近辺の訓練場にでも…
日帝「……」
なに考えてんだ、…落ち着け自分、
そう心に語りかけながら、
髪を器用に結び入れ、厚底のブーツを履いてから
ピアスを引き出しにしまった。
ナチス「おい。」
こちらを警戒しているように呟くドスの効いた声。
「何故ここにいる。」
日帝「………」
あぁ、私に言ってるのか。
探すつもりはなかった。
ただ偶然見かけただけなのに、そうきつく言わなくてもいいじゃないか。
ナチス「………」
日帝「………何故って…見覚えのある顔が居たからだけど。」
ほら、他の剣士の鍛錬を見るのも学びじゃないか。
ナチス「どうも分からんな。」
お前、いつから居たんだ。
鍛錬場と、市街地を仕切っている石壁に座りこちらを見下ろす彼。
前に酒場であったあの雰囲気といい、彼は良い意味で影がまるで無い。
こちらが警戒しているのを他所に、余裕のある話し声が響いた。
日帝「そうだね、…ちょっと前……」
君が踏み込みの位置を少し長くしたときぐらいかな。
ナチス「はぁ、」
そんなのいちいち覚えている阿呆はお前ぐらいだろうな。
日帝「阿呆で結構だよ。」
毎日こうやって続けてるの、君は。
ナチス「……」
あぁ、悪いか。
日帝「へー。」
…
全然、寧ろ大切な事だよ。
ナチス「………」
ガチャン…
数秒私を見つめ、剣を筒にしまった彼。
日帝「…あぁ、やめちゃうの。」
ナチス「気にするな。」
いつもこれぐらいで終わるんだ。
日帝「……」
ナチス「なぁ、この際だから聞きたい。」
日帝「なんだい。」
最初は喧嘩腰で少し焦ったけれど、やはり私が見た穏やかな1面は偽りではなかったらしい。
ナチス「…」
“お前のその剣術は才能か?”
それとも努力か。
日帝「!…、」ピクッ
…どうして?笑
ナチス「深い意味はない。」
あの大会で剣を交えたとき、ふと頭に過っただけだ。
日帝「……」
気付けば夕陽は落ちていた。
星空の下賑わう壁越しの甲高い声は、この空間だけ異常に遠のいて聞こえた。
二人の間にある沈黙の時間は、ただなんの変わりもない腹の探り合いではないように感じた。
…
日帝「才能。」
ハッキリとしていながらも細いその声は、到底彼のものだとは思えなかった。
ナチス「……」
日帝「君が言う剣術は私の才能だよ。」
だから、努力をしている君の気持ちは分からない。
ナチス「……」
そうか。
努力は、才能をも凌駕すると思うか。
日帝「勿論。」
でも、お互い分かり合えることは無いだろう。
ナチス「俺はお前に勝つ。」
勝利したとき、俺は初めてお前と肩を並べられると思っているからだ。
日帝「………」笑
じゃあ楽しみに待ってる。
ヒラッ
風と同時に靡く彼のマントは、儚くもあり強くもあった。
ナチス「…」
俺も才能を持っているお前の気持ちは理解できない。
日帝「!」
ふは…ッ、笑
確かにそうだね、笑
君は自分自身の事が好き?
ナチス「……、なんだよ、その質問、笑」
………
…どうだろうな。
日帝「嫌い?」
ナチス「…ッ、」
ギュッ
ぐしゃりと、胸元の服を掴み、
今までの努力と、実った実力を振り返った。
悔しい。
いつまでも闇雲な道ばかり選んでしまう。
それが例え進むものでなくても
そんな自分が、憎いのかもしれない。
日帝「まぁ、好きでも嫌いでもどちらでもいけど。」
正直にいればいい。
ナチス「…」ビクッ
……、あぁ、そう…だな、。笑
日帝「………」
優しく笑う彼の表情は、彼が少し心を開いてくれたようで嬉しかった。
日帝「……うん、」笑
ニコッ
ナチス「………」
日帝「…んじゃ、」
Wenn wir uns wieders
ナチス「ぁ………」
……笑
Reden wir über keine
ストッ…
胸を撫で下ろし、月夜に当たりながら彼の瞳を思い出す。
私が、貴方がくれたピアスの持ち主だと言ったら怒るだろうか。
正直でいいと言いながら、1番嘘をついているのは私だと伝えたら失望するだろうか。
才能があると言いながら、
貴方が羨ましいと言ったら、?
日帝「…貴方に、恋してると言えば、…
私も、、正直者に…なれる、かな……」
気が付いたときには既に、ボロボロと落ちていた涙の粒は、私の黒い心を流してくれているように感じた。
日帝「……怖い…ッ、」、
バシッッ!!
「こんなの私の子じゃない”“ッッ!!」
赤く腫れ、静かに涙を押し殺していた。
お母さんは、女である私を憎んでいた。
「一族の恥よ…ッ、!!あんたわ、”ッ!!」
それが決まり文句だったお母さんの事を、私はただ聞いていることしか出来なかった。
代々、男を当主とし
優秀な近衛兵を数多く出してきた母の家系
にとって、女として生まれた私は異端児でしかなかった。
認めて欲しかった。
愛している人に、愛して欲しかった。
15になると同時に家系から追い出された今でも、その弊害は残っている。
きっと、女が男に成りすますだなんて、気持ち悪いと思われても仕方がないのだろう。
でも、私にとってそれはただ1つの
“愛され方”に過ぎない。
私が素の自分で居られるのは、
私を何も知らない場所であるときだけだ。
おつかれんこん(?)
毎回投稿時間遅いのやめてね((
いいね、コメント待ってます泣
コメント
2件
続き楽しみです!