灰色の天井が低く覆う狩り手本部。ここは異能者との戦いに備えるための秘密基地のような場所だが、その雰囲気は意外にも軽い。重厚なテーブルを囲む8人の狩り手たちは、今や雑談を繰り広げている。
「いや、俺たちが集まるってことは、異能者連中もびびってるだろうな!」
そう言って声を上げたのは港、異名“阿弥陀”。温厚そうな顔つきだが、本質は武闘派。両手を組みながらにこやかに笑っている。
「阿弥陀さん、ビビってるのは僕らも一緒ですよ。特にあの爆発の後なんて、正直、命あってよかったです…」
僕――石動、異名”殉教者”は、恐縮しながら笑みを浮かべている。体の痛みがまだ抜けないけれど、ここではそれを見せないようにしていた。
「ま、般若のマイクロチップなんてのはイレギュラーだったがな。問題はその背後にいる奴らだろ?」
低く冷ややかな声で口を開いたのは渋谷、“死神”。彼は机の端に座り、目を閉じたまま耳だけを傾けている。
「異能者集団か…。それに狩り手の裏切り者までいるって話だ。洒落にならんよなぁ。」
声を挟んだのは観音、狩り手の頭脳と呼ばれる女性。眼鏡を光らせながら、資料の山を整理している。観音の声は冷静で落ち着いているが、その言葉には軽さがある。
「裏切り者ですか。私たち、普段から仲良くしてる分、誰がそうだなんて考えると切ないですね。」
大らかな声で話すのは法師。大柄で筋骨隆々の体格をした彼は、皆の兄貴分的存在だ。
「切ないっていうか、普通に腹立たない?だってさ、命懸けで戦ってるんだよ。裏切りって、無いわー。」
南無が口を挟む。小柄な彼女は言葉遣いがフランクで、時折鋭い指摘をすることで知られている。
「まあ、でもほら、裏切り者探しも人間関係の一環ってことで!」
観音が冗談交じりに言うと、一同が苦笑した。
「観音さん、それは流石に無理がありますよ。」
僕は苦笑しながら応じたが、みんなの間に漂う空気が少しだけ軽くなったのを感じた。
阿弥陀(港)
温厚な性格だが、狩りの際には誰よりも動く行動派。異能者たちを倒すことに命をかけている。普段は親しみやすく、仲間からの信頼も厚い。
死神(渋谷)
冷徹で寡黙な狩り手。任務の遂行を優先し、無駄口を叩くことは少ない。ただし実力は折り紙付きで恐れられている。
観音
頭脳派の女性狩り手。作戦立案や情報分析を担当している。冗談を交えた会話で場を和ませるが、いざというときの判断力は誰よりも的確。
法師
力自慢の大柄な男性。仲間想いで、常に敬語を外さない糸目。
南無
小柄でフランクな女性狩り手。最年少狩り手。口調は軽いが、その観察眼と行動力で仲間を支える。
殉教者(僕)
他の狩り手には秘密だが、異能持ち。自分の正体がバレないように振る舞うのに必死。
「でもさ、石動って地味に異能者っぽいよな?」
突然、観音が冗談ぽく僕に向けて言った。
「えっ!?ち、違いますよ!」
僕は慌てて否定した。内心では冷や汗をかきながらも、なんとか動揺を隠そうとする。
「まあまあ、冗談だって。ほら、次の作戦について真面目に話そうか。」
観音が手元の資料を叩いて話を切り替える。次なる任務は、異能者集団に潜む真実と裏切り者の正体を暴くことだ。
「般若波羅蜜――彼女の名前の意味を考えると、我々が戦うべき相手は何なのか、見えてくるかもしれない。」
観音の言葉が場を引き締めた。
それでも、彼らの中にはわずかに笑顔が残っている。これが狩り手たちの強さだと僕は思った。
それぞれの異名を背負い、どんな困難にも立ち向かう、そんな仲間たちと共に戦う覚悟を、僕は再確認した。
般若波羅蜜とは———
仏教用語。完全なる智慧という意味。智慧って何なん?ってなるでしょう。物事をありのままに把握し、真理を見極める認識力らしい。要はしっかりと現実を見れ、真理を見いだせる…みたいな?知らんけど()
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