💜💙短編集

おかめ「…あれ…？」

とある撮影終わり。

スタジオの机にぽつんとおかれた金時計が目に入る。ライブ用に作った金時計。ちゃんと特注したおかげか、針は動かないものの、本物の時計そっくりの物。

撮影用で持ってきたが、今日の撮影で使うことは無かった。般若が持って帰り忘れたものか。

般若はもう帰ってしまったし、明日の練習にでも渡そうか、そう思って、金時計を手に取る。

それにしても精巧な時計である。部屋のライトに透かすようにかざせば、きらりと縁が光る。

狐「おかめさん、そろそろ帰りますか。」

おかめ「あ、おっけー！」

狐は、荷物をまとめ終わったようで、少し大きめのバッグを肩にかけ、こちらに近づいてくる。

とてとて、と可愛らしい擬音が付きそうなぐらい愛らしくて、思わず顔が綻ぶ。

狐「…あれ、金時計…？般若さんが持ち帰り忘れたんですかね…？」

おかめ「そう見たい。明日渡しておくよ。」

密かに想いを寄せてる彼が、こちらをきゅっと見つめる。青い綺麗な瞳が、こちらを映す。

おかめ「にしてもこれ、綺麗に作ったよねぇ、本物みたい。」

狐「ふふ、もしかしたら過去に戻れたり、時が止まったりするかもしれませんね。」

おかめ「ロマンだねぇ〜！」

きらりと光る金時計。装飾の縁を親指でなぞる。

もしも、なんて幻想的なことを考えてしまって、ありえないはずなのに、金時計の上部のボタンに親指を乗せる。

カチリ、やけに小気味のいい音が鳴る。

おかめ「なんて……ね…？？」

ボタンを押した瞬間、スタジオの廊下を歩いていた狐の足がぴたりと止まる。

おかめ「……狐？」

急に止まった彼に違和感をおぼえる。

どこか一点を見つめたまま、ぴたりと止まっている。

不思議に思い、狐のそばに寄ってみるが、やはり動く気配がない。

おかめ「ちょっと、ドッキリ〜？お兄さんは引っかからないよ？」

狐の目の前で手を振ってみても、彼は何も言わない。

肩を揺さぶったり、頬をぺちぺちと叩くが、一向に声を発する様子がない。

ただ固まったように動かない彼を見て、段々と冷や汗が浮かび上がってくる。

慌てた様子で、スタジオの別の部屋を、扉についたガラスから眺める。

ダンスの練習をしていたであろう女性達のグループが、ターンの最中にも関わらず、ぴたりと動きを止めている。

おかめ「嘘でしょ…？」

自身の右手に収められた、金時計。

スタジオのありとあらゆる時計が止まっていることに、じっとりとした恐怖が積もっていく。

試しに自身のケータイを開いてみても、時間が進むことはない。

おかめ「……っえい、！」

漫画でよくある手法だ、と思い、金時計の上部のボタンを再度押し込む。

カチリ、と先ほどの音が聞こえる。

狐「わっ！！おかめさん急に移動されました！？！」

びくっと大袈裟なぐらい身体を揺らす狐。

心底驚いた顔で、こちらを見つめる。

辺りを見渡せば、先程みた女性達のグループも、ダンスの練習を続けている。

金時計が鈍く光る。

_____

狐「お酒、美味しいですね、」

金時計を懐に収めたまま、狐の家で飲み会をする。缶ビール片手に、狐が微笑む。

彼は、からりと音を立ててコップいっぱいの酒を飲み干す。

口からこぼれた水滴を裾で拭うと、また一口ぐびりと喉に通す。

おかめ「きっつん、顔真っ赤〜！」

狐「んえ、飲みすぎましたかねぇ、」

ふわふわと笑う彼の瞼は、完全に蕩けきっている。

いつものふにゃっとした笑顔で微笑んでくれる。

おかめ「お水、持ってくるねぇ、」

重い腰を上げ、キッチンへと向かい、冷蔵庫に入れていたペットボトルを取り出す。

ペットボトルを持ちながら、ふとポケットに入った金時計を取り出す。

自身も酒が回っていたのかもしれない。

リビングでスマホを見ながら酒を煽る狐をちらりと覗いてから、金時計に触れる。

カチリ。

おかめ「…おおー、ほんとに止まってる〜、」

金時計は先程と同じように、時を止めている。

狐は缶ビールに口をつけたまま、ぴたりと止まっていて、時計やスマホの動画、はたまた空を飛ぶ鳥までも。微動だに動かない。

おかめ「きっつんー？」

ペットボトルを狐の頬に当ててやる。

反応はしない。目がぴくりと動くこともなければ、体勢が動いたりするわけでもない。

おかめ「…。」

狐の、首筋に目が行く。

暑さと酔いのせいで、ぽたりと雫が落ちそうになっている。

そのせいで、狐の首筋が嫌に情欲的で。

自身の右手が、するりと狐の首筋に伸びる。

凹凸をなぞるように、指を滑らしていく。

おかめ「…っは、やば…」

彼が反応することはないけれど、彼の肌に触れているという感覚が、自身を興奮させる。ついには、彼の肩に自身の顔を寄せた。深く深呼吸をして彼の匂いを嗅ぐと、頭がクラクラする感覚が自身を襲う。

もっと触れていたいのに、これ以上はいけない気がしてならない。それなのに身体が言うことを聞かない。

おかめ「……好き」

掠れて出にくい声帯から絞り出したような声を出す。言葉に表すことなどできないと思っていたのに、気づいたら言葉はするりと零れていた。

言葉にしてしまってからは早いもので、目の奥がじんわりと熱を帯びてくるのが分かる。

狐の、唇に視線がいく。彼の唇は薄くて、それでいて柔らかそうである。

自身の唇をそこに重ねる想像をするだけで、顔が火照って仕方ない。

狐の唇に、自身の唇を重ねようと顔を近づけるが、すんでのところで止まる。

おかめ「……っ、」

今自分が何をしようとしていたかを理解して、思わず顔を離す。

しかし一度火がついた欲望は収まることを知らず。むしろより強いものへと変わっていく。

いつ金時計の効果がきれるかもわからない。

今だけなのかもしれない。

少しだけ。少しだけなら。

そう自分に言い訳して、狐の唇に自身の唇を重ねる。

おかめ「っは……ん……」

彼の唇を軽く食んでから、舌でちろりと舐める。

軽いキスだけのはずだったのに、何度も角度を変えて口付けをする。彼の薄い唇の感触が心地良い。

気持ちいい。俺、狐とキスしてる。舌先で唇の割れ目をなぞれば、軽く開いた隙間に舌を入れる。熱い舌が自身の口内に入る。

おかめ「っは……ん……」

唇を離せば細い銀糸が伸びる。狐とキスをしたという事実が、酷く自身の情欲を昂らせる。

酒のせいか、気持ちいいせいかでふわふわした頭は正常な判断を奪っていく。

おかめ「…ごめんね、きっつん。」

狐の身体を、床に落とす。酒の匂いと汗の匂いが混ざるのがやけに官能的だ。

おかめ「こっち……向いて？」

狐の頭をくいっと持ち上げ、無理矢理こちらを向かせる。赤くなった肌も、半開きになった口も何もかもが扇情的で仕方がなかった。その唇に再び自身の唇を重ねる。舌を絡めれば互いの唾液が混ざりあって零れる。零れ落ちたそれは先程の欲望を刺激するには充分だった。

狐の着ていたシャツのボタンに手をかける。

一つ一つ、丁寧にシャツのボタンを外していく。全て外し終われば、はだけた狐の腹に手を添わせる。それと同時に空いた方の手で彼の胸の飾りを掠めるように触れる。ぴくりと反応する彼を横目に、その突起に舌を這わせた。

おかめ「はぁっ……あ……」

息が上がってしょうがない。自身のズボンのチャックを外し、硬くなった自身を取り出す。

彼の唇は蠱惑的で、触れてもいないのに自身がびくびくと震えているのが分かる。

彼の口元に自身を宛てがい、ゆっくりと腰を動かすと、まるで彼が口淫しているような感覚に陥る。その感覚が酷く気持ちよくて、何度も腰を振り続ける。

狐の口に自身の先端を押し付ける度に響く水音がいやらしくて仕方ない。

ぐちゅ、ぐぽっ♡♡♡

おかめ「っは♡♡♡は、きっつんっ……ごめん、ね……」

せり上がってくる感覚には抗えず、狐の口内に欲を吐き出す。彼の口の中を自身が汚していると思うと酷く興奮した。

ちゅぽんという音と共に自身を引き抜けば、だらりと白濁した液が口端から零れる。それを拭うこともせず、ただ彼はぼーっと虚空を見つめていた。口元を中心に、彼の端正な顔が自身の白濁液で汚れている。

その扇情的な姿に自身のそれはまた熱を持ち始める。

おかめ「…後ろ、使わせてもらうね。」

理性なんてどこかに消えてしまって、彼のズボンを下着ごと引き摺り下ろす。

狐は抵抗もせずただされるがままに、自身の欲を受け入れようとしている。

おかめ「きっつん……好き、好きだよ。」

そういいながら彼の後孔に指を入れると、そこは柔らかくてすんなりと自身の指を受け入れた。指を2本3本と増やしていく度、中がきゅうっと締まっていくのを感じる。

早くそこに自身のものを埋め込みたくて、ある程度慣らしたところで自身をあてがう。

おかめ「…っはは、きっつん動かなきゃ、男に挿れられちゃうよ…♡♡♡」

夢にまで見たこの行為。大好きでたまらない君の中に、自身を埋め込む夢。

時を止めたのは自分自身なのに、どうしようもない戯言を呟きながら、狐の腰を掴む。

ぐちゅんっっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡

おかめ「っは♡きっつんの中、気持ちいい……♡♡♡」

温かくて柔らかいそこに自身を奥まで挿入し、息を吐く。もっと堪能していたいのに、自身を動かしたいという欲が先行してしまう。ゆるゆると腰を動かすと肌が赤く染まるのがわかる。

それが自身の興奮を駆り立てたのか、次第に腰のピストン運動は激しくなっていく。何度も彼の最奥を突き上げるうちに快楽に溺れていくのが分かる。段々と彼を想う気持ちが溢れてきて仕方が無い。

おかめ「っは、はっ♡♡♡きもち、っ♡♡♡」

ぱんっパンッ♡♡♡♡♡と肌が激しくぶつかる音が響き渡る。

より彼を感じたくて、自身の昂りを彼の最奥に押し付ける。ああ、気持ちよすぎてどうにかなりそうだ。

おかめ「はっ……♡♡♡きっつん、俺もうイきそう……♡♡♡」

腰のピストン運動が速まるうちにガクガクと大きく震えて、奥の奥に熱を吐き出す。彼はピクリとも動かないままであり、それがまた酷く自分を興奮させた。

気持ちが良くて背徳感を感じるような行為に、自身が再びゆるゆると主張を始める。

おかめ「はは……きっつん、ごめんね……もう一回……」

もう一度彼の腰を掴みなおし、ギリギリまで自身を引き抜く。このまま一気に突けば彼を孕ませることが出来るかもしれない。そんな根拠のない思考が頭をよぎるが、今は快楽のことしか頭にない。

狐は人形のように反応してくれないけれど、それでも本能か何かが、己の精を吐き出そうと動く。

ずちゅっ……♡♡♡ばちゅんっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡

おかめ「っは、きっつんっ♡♡♡」

もう訳も分からずに腰を振り続ける。自身の先端が彼の最奥を突く度にきゅうっと中が締まるのが気持ちいい。

もっと、もっと彼を感じたい。

彼の中に出したい。

そんな欲望だけが自身を動かす原動力になる。

おかめ「…狐…！！」

その時、不意に机に自身の肘がぶつかる。

机の端に置いてあった金時計は、ぐらりと傾き、無惨にも、机の下へと滑り落ちていく。

がちゃんっ、金属が床にぶつかる音がする。

狐「んぇ…っ！？！♡♡♡♡」

びくん、と今まで無反応だった彼が声を漏らす。それに合わせ中が締まるのを感じる。

どうやら、金時計が落ちる際に、上部が下になって落下してしまったようで、時が進んだようだ。

狐はパチリと目を見開くと、自身の状況を見て、何が何だかわからないように辺りを見渡す。

狐「えっ、な、なにして…？？？」

自分の中に埋め込まれている俺のモノをみて、顔を赤くする狐。

狐「……っ、あ……おかめさ……ん……」

自身のそれの質量が大きくなったのを感じたのか、上擦った声で俺の名前を呼ぶ。その声がまた自身を昂らせる。

おかめ「きっつん、ごめん、俺もう我慢出来ないや」

ずちゅんっっ♡♡♡♡♡♡♡♡ 彼の腰を掴んで自身を動かす。先程より強い快楽に思わず声が漏れる。

狐「あっっ♡な、なんでぇ……♡♡♡」

おかめ「ごめんね、きっつんっ…」

狐「ひぁ♡♡♡」

先程まで無反応だった彼とは思えないほど艶めかしい声が出る。それに呼応するように中の締めつけも強くなっていく。もっと奥に進めたくて彼の脚を自分の肩に担ぐようにして覆いかぶさればより奥まで自身が入っていく。

ぬちゅっ♡♡♡♡♡ばちゅんっ♡♡♡♡♡♡ぱんっ♡♡♡

狐「お”ッッッ！？！な、なに”ｯｯｯあ”へっ！？！」

おかめ「きっつん……気持ちい……♡♡♡好き、すきだよ……」

狐は驚いたように目を見開く。いつもは見せてくれない反応に堪らなく興奮してしまう。ごりゅ♡と中を抉るように突くたびにビクンビクンと体が跳ねるのが可愛らしい。思わず笑みが深くなってしまう。もっと気持ちよくさせたい。自分の下で喘ぐ君を見たい。

ぐちゅっ♡♡♡♡♡ばちゅんっ♡♡♡♡♡♡ぱんっ♡♡♡

狐「お”ッッッッ！？！？！？♡♡♡♡♡」

おかめ「……は、きっつんの一番奥、入っちゃった……♡♡♡」

彼の最奥に自分の先端が触れた感覚がする。そのままぐりぐりと押し当てると、彼は面白いように体を跳ねさせる。

狐「あ”ッ♡♡なんっれぇ♡♡♡♡おぐっ♡♡♡ぎでうのぉ”！？！♡♡♡」

おかめ「きっつん……好き……大好き……」

狐の唇に自身の唇を重ねる。舌を入れればそれに応えてくれるのがまた愛おしい。

狐「んむ、っは♡♡♡おがめさ、あ”ッッ♡♡♡♡♡」

ずちゅっ♡♡♡♡♡♡ばちゅんっ♡♡♡♡♡♡ぱんっ♡♡♡♡♡♡ 彼の中を犯していくうちに、自身の限界が近くなるのを感じた。

おかめ「……っきっつんっ……もう出そう……」

狐「ひぁッ♡♡なかっださないでぇ♡♡♡」

もう自分が何を言っているのかもわからないのだろう、舌ったらずに言う彼が可愛い。そんな願いを聞いてあげられるほど余裕はない。

おかめ「ごめん、きっつんっ……もう無理……」

狐の腰をぐっと掴み、彼の最奥に自身を押し付けて欲を吐き出す。どくどくと脈打ちながら中に注ぎ込む感覚が気持ちいい。

おかめ「…っは、…」

びゅるるる♡♡♡♡♡

彼の中が自分のもので満たされていく感覚に浸りながら、ゆっくりと腰を引く。ずるりと自身のそれが抜ければ、ごぽりと白濁液が溢れる。

狐「んぁ…♡♡♡は、♡♡♡おがめさん…………」

はあはあと荒い呼吸を繰り返しながらこちらへと顔を向けてくる。涙で潤んだ瞳がこちらを睨むのすら可愛らしく思える。

もっと君に触れたい、味わい尽くしたい。

おかめ「…ごめんね、俺、狐のこと好きで…。」

彼の身体も心も全て自分のものにしてしまいたい。もうぐちゃぐちゃにしたい。彼を労るより前に、もっと彼に触れたい。そんな欲求が自分を支配していく。

狐「……ん……ぅ」

なんとか言葉を紡ごうと口を動かす彼に優しく口付けする。首筋を撫でた時の反応はとても可愛らしいものだ。頭を撫でる度に彼はぴくりと肩を震わせる。

狐「…ちゃんと言ってくれたら、シたのに…。」

自分で言ってて恥ずかしくなったのか顔を赤く染める。

言葉の一文字一文字を、大事に考えながら、彼の言葉を飲み込む。

夢にまで思った。狐と、思いが通じ合う夢。

ああもう、全部愛おしい。

おかめ「きっつん……好きだよ。」

狐「……ぼくも、…」

確かめるように発した言葉を、大事に返してくれる。そう言いながら彼の腰に腕を回す。今度は逃げないようにしっかりと捕まえて、もう一度唇を重ねる。離したくない。彼ともっと触れ合っていたい。そんな想いは口付けを深くさせるばかりだ。

角度を変えて何度も唇を重ねれば、彼の熱い息が当たるのを感じる。唇を割って舌を入れると、驚いたのか弱々しく押し返されるがそれすら愛らしいと思ってしまうからもう末期だ。

狐「ん……ふ、……」

彼の歯列をなぞるように舌を動かす。彼はそれに反応するように小さく声を漏らすのがまた可愛らしい。

おかめ「っは、きっつんっ……もう1回だけ……シていい……？」

_____

翌日、再度金時計を使ってみたものの、時が止まることはなく、普通の時計に戻っていた。

あれはなんだったんだろうか、なんて思ってはみたものの、答えが出るわけもなく。

神様が与えてくれた、奇跡なのだということにした。

でも、もう奇跡はいらない。

時を止めずとも、彼の微笑む笑顔が見れるから。

_______

作者から。

時止めパロでした。難しい…。

次回もよろしくお願いします！！