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「私のことなんてどうでもいいよ。お父さんの工場のこと、涼香姉さんは本気でそう思ってるの?」
何だか心が痛くなる。
本心ではないと思いたい。
「そうよ。パパはずっと昔から仕事が1番大切だった。あなた達が来てからはもっと仕事にのめり込んで。養わなきゃならない家族が増えたからって、私をないがしろにした。まあ、別に今さらどうでもいいわ。とにかく私には関係ないこと。私には私の幸せを掴む権利があるの」
涼香姉さん、そんな風に思っていたんだ……
「ないがしろにした」なんて、お父さんは私達のために朝から晩までずっと一生懸命頑張ってくれているのに。
「涼香姉さんが幸せになることは私の願いでもある。家族4人、みんなで幸せになりたいよ。でもね、そんな言い方したらお父さん、絶対に悲しむよ。姉さんを誰よりも大切に思ってきたのは、他の誰でもない、お父さんなんだから」
その言葉に間違いは無い。
お父さんが、血の繋がった姉さんを大事に思わないはずがない。
「大切に思ってたですって? お父さんは、仕事仕事って、運動会も授業参観も来てくれなかったじゃない! それで大切だなんて言えるの?」
涼香姉さんの美しい顔が強ばる。
「それは……」
「あなたのお母さんが代わりに来てたけど、でも、あくまで代わりでしょ? 私が本当に来てほしかったのは……」
お父さん……と言いたいに違いない。
そうだと思う、私だってお母さんが来てくれなかったら寂しいから。
気持ちはわからなくはないけれど、お父さんもお母さんも必死だった。
いろんなものを守るために――
涼香姉さんにも、それをわかってもらいたい。
でも、やっぱり……今の姉さんには納得できないのだろう。
工場や家族のこれからのこと、一緒に考えて悩んでもらいたかったけれど、声が届く気はしなかった。
それどころか、思っていた以上の確執に、胸が苦しくなった。