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「……そこまでだ、橘」
限界まで近づいたゆうの顔を、蓮は空いている方の手のひらでぐっと押し止めた。
指先から伝わるゆうの体温と、図書室を包む息苦しいほどの静寂。胸の奥が激しく脈打っていたが、蓮は元ヤンらしい目力でまっすぐに後輩の瞳を見つめ返した。
「……これ以上はダメだ。ここは学校だし、俺たちはまだ……そういう段階じゃねえ」
ピリッとした雰囲気が二人の間に流れる。
一瞬、ゆうの瞳に暗い情熱が揺らめいたが、蓮の真剣な表情を確かめると、ふっと力を抜いて体を引いた。
「……ちぇ、あと少しだったのに」
いつもの「可愛い後輩」の顔に戻り、ゆうは名残惜しそうに唇を尖らせる。握られていた手の力も緩み、指と指の隙間に心地よい風が吹き抜けた。
「たく……心臓に悪いことすんな」
蓮は深く溜息をつき、乱れたシャツの襟元を整えた。
自分を翻弄し、強引に距離を詰めてくる後輩。けれど、こうして自分が本気で「待て」をかければ、ちゃんと踏みとどまってくれる。その微かな誠実さに、蓮は安堵すると同時に、どうしても彼を突き放せない自分を再確認していた。
「先輩が本気で嫌がることはしませんよ。……『今は』ですけど」
「最後の一言余計だろ」
荷物をまとめ始めたゆうの横顔を見ながら、蓮は文庫本を閉じた。
一筋縄ではいかない後輩との関係は、まだまだ一進一退が続きそうだった。
コメント
1件
いやもう、あの「これ以上はダメだ」って蓮先輩が言いかけて押し止めるシーンがエモすぎて泣いた😭💕 図書室の静寂の中での二人の呼吸音とか、手のひら越しの体温が伝わってくるようだったよ…!ゆうくんの「ちぇ、あと少しだったのに」って拗ねるところも可愛すぎるし、蓮先輩が本気で止めれば従うその誠実さがまた尊い…。「今は」って含み持たせるゆうくんもズルいよな!?次どうなるのか気になりすぎてソワソワが止まらん🤯✨ 紫音さん、神回をありがとうございます…!