「あ、なんか近いな。」
第13話:『お前、最近ちょっと変やで。』
昼休み。
ざわついた教室の中、
俺はパンの袋を開けながら、ちらりと横を見た。
樹は窓際の席で、ぼんやり外を見てた。
話しかけようか迷って、結局声をかける。
「なぁ、樹。今日部活どうする?」
「んー……別に、いつも通り。」
「そっか。」
返事はいつも通りのはずやのに、
なんか、違う。
笑い方も、視線の向け方も、
どこか遠くにおるみたいやった。
(……最近、ちょっと変やな。)
昨日もそうやった。
話しかけたら、一瞬だけ驚いた顔して、
すぐ笑って誤魔化してた。
なんでやろ。
俺、なんかしたんかな。
気になって、
気づけば樹のことばっか見てる自分に、
俺は少し戸惑った。
(俺が気にしすぎなんか?)
パンを一口かじりながら、
もう一度、樹を見る。
窓の外を見つめる横顔。
光が当たって、髪が少し透けて見えた。
その姿を見てたら、
胸の奥がじんわり熱くなる。
「……あかん。なんやこれ。」
心臓の鼓動が早くなる。
友達を見てるだけで、
なんでこんな気持ちになるんや。
我慢できんくなって、
俺は立ち上がった。
「おい、樹。」
「ん?」
「お前、最近ちょっと変やで。」
樹は目を瞬かせて、
少しだけ笑った。
「そうかな。」
「そうや。なんか……ぼーっとしてるし、俺が話しても、すぐ目ぇ逸らすやん。」
「……そう見える?」
「見える。てか、そうや。」
樹は少し黙って、
窓の外に目を向けたまま、ぽつりと呟く。
「……ちょっと考えとっただけや。」
「何を?」
樹は答えん。
ただ、少し寂しそうに笑った。
その笑顔を見た瞬間、
俺の胸が、強く締め付けられた。
(……なんやねん、この感じ。)
言葉にならへん。
けど、確かに”何か”が、
心の奥でうずいてた。
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