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「おじゃまします」
「何言ってんの、!ここはもうあなたの家なんだから」
そう、春夢さん…姉は霧雨家を選んだ。ただ1週間に1度は春夢家へ帰るとの事だった。
「鈴華の部屋はここよ。」
「霧雨さん…!」
「もう、私は鈴華のお母さんなんだけどな。まぁ鈴華は鈴華で別に親がいるもんね」
少し寂しそうな顔をして母が言った。
「たしかに、私にとってのお母さんは変わらずお母さんです。ですが、私は霧雨さんがお腹を痛めて、必死に生んでくれた子です。だから、かあさんってよんでもいいですか?」
「….いいの、?」
母は質問を質問で返した
「かあさん、!この部屋、すっごく広いね!」
無邪気な笑顔で春夢さんはそう言った。
「まぁ、家具がまだないから広く見えるだけよ笑」
少し微笑みながら母はそう返した。
その瞬間から、二人は本当の親子としての距離感を作り始めた。
1日前までは他人だった相手同士だと思えないほどに自然な距離感を。
ピーンポーン
「はーい!」
母が出てみると、そこには引越し業者の人が居た。
「霧雨さんのお宅で間違いないですね?」
「ええ、」
「棚などの荷物を運びにきました!」
「あぁ、はい!ありがとうございます!」
春夢さんの家具だろう。
「運搬までしたいのですが…あいにく今人員が不足してまして…」
「あぁ!全然私たちも運びますよ!!」
「本当ですか!助かります!」
なんだろう、嫌な予感がする
「はるとー!手伝ってー!」
「あ、はーい!」
やっぱりだ。僕の悪い予感はだいたい当たる。
「あ、!私も!!」
「鈴華はいーの!ソファにでも座ってやすんでて!」
差別だ。今の時代ネットだと燃えちゃうやつだ。
「ほら!はるとー!はやく!」
「まって!今行ってる!」
重厚感漂う本棚を持ち上げる。
重たい。すごく重たい。
「….グッ!」
一人で運べなくもなさそうなくらいなのがまた意地悪だ。
1歩、また1歩、ゆっくり歩いてく。
ソファに近づくと、そこでは春夢さんが僕を見てオドオドしていた。
休んでてと言われたなら休めばいいのに、妙なところで春夢さんは真面目だ。
春夢さんが僕の家に来てから、実は僕はまだ1度も春夢さんとは話せていない。
何を話したらいいのかわからない。
正直かなり気まずい。
いつもと関係が変わってしまった。
急に姉弟っぽく話し出すのは怖いだろう。
かといっていつもどおりもなにか言われそう。
そうやって考えると正解がわからなくなって、話しかけれない。
「よい、しょっと!」
春夢さんの部屋に本棚を置く。
重たい荷物が手から離れ、安心した。
リビングへ戻ると、業者の方がベッドを運んでいた。
「もう運ぶものはないそうよ〜」
そう母が伝えてくれた。
「はる、くん」
突然、春夢さんが話しかけてきた。
「ど、どうしましたか?」
突然のことで素っ頓狂な声が出てしまった
「私たち、兄弟だったんだね」
春夢さんは微笑みながらそう言った。
「..ですね、びっくりです。」
なんだろう、この気まずさ。
「はるくん、なんだかよそよそしくない?笑」
「そ、そんなことないですよ!」
春夢さんは、普段の調子を取り戻したようだ。
なんだか、ずっと気まずく感じてる僕がばかばかしく感じてきた。
テレビには、うちの町内で起きた乳児の入れ替え事件でもちきりだった。
「これ、うちらのことだよね」
「..はい。おそらく。」
「すっごー!全国ニュースにまでなってんじゃん!笑笑」
「まぁ、大事件ですからね。」
「やったね!うちらゆーめーじん!笑」
「別に喜ばしくはないですよ。」
「ほら!ご飯できたよ!」
台所から母が呼ぶ。
「はーいっ!やった!」
春夢さんはルンルンでテーブルへ向かう。
ショックだとか、ないんだろうか?
今まで親だと思っていた人が赤の他人だったというのに。
今まで顔すらも知らなかった人が急に親になったのに。
あの人は驚くくらいにいつも通りだ。
「すごいなぁ…」
「ほら!はるくん食べるよ!!ちゃっちゃと座って座って!!」
「あぁ、はい!」
「いっただきま〜す!」
月ヶ瀬 涙
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コメント
5件
第12話、読ませていただきました! 「かあさんってよんでもいいですか?」のシーン、じんわりきました…。お互いに「親子」としての距離を慎重に、でも自然に作り直そうとする姿がとても繊細に描かれていて、編集者的にもグッとくる描写でした。 それと、春夢さんの「やったね!ゆーめーじん!」の無邪気さが逆に、彼女なりのショックの裏返しというか、必死に明るく振る舞っているようにも見えて切なくなりました。主人公が「すごいなぁ…」とつぶやく場面、すごく共感しました。続きが気になります🌷