私は一体、中也のどこを…どうして好きになったんだろう…
そんなことを考えていると、顔がボワッと赤くなる感覚がした。
予想通り、すれ違った敦くんから「太宰さん…?顔が赤いですよ…!?」と言われてしまった。
探偵社に戻ると、国木田君がとても難しい顔をしていた
私は「国木田く〜ん!な〜んでそんな難しい顔してるの〜?」と煽り気味に言った。
すると、国木田君が「あぁ、太宰か。実はこの依頼が少々難しくてな…」と椅子を回し、体をこちらに向けそう言う。
「ふ〜ん?あ、これ…」
「あぁ、…ポート・マフィアの連中が起こしたものだ。
…大量の岩を空に浮かばせることができる奴らしい」
「ふーん…」
「…大量の岩を浮かせるなんて、異能力者でも限られている。
そんなことが出来るのは…
「おはようございまーす!!」
国木田君が言いかけたところに賢治君が来て、良く通る高い声で挨拶をする。
「…あれ、この依頼書…ちょっとおかしくないですか?」
賢治君がこちらへ来て、そう言う。
私が「おかしい?」と言うと賢治君は「はい、だってこの依頼書、目撃した!!という情報しか書いていないじゃないですか」
「あぁ…そういえば…」
武装探偵社は警察でも解決出来ない事件などを異能を使い解決する集団。
なのにこの依頼書には“怖い”とも“解決して欲しい”とも書かれていない。
ただ”見た”という事しか書かれていないのだ。
「…あぁ、実は…
これは子供が渡してきたものなんだ」
「子供?」
国木田君ってば、こんな難しい顔して…
「あぁ、と言っても高校生くらいの子だ
悪戯ではなさそうでな…」
「ふーん」
頬杖をつきながらつまらなそうに返す。
「岩を持ち上げる…僕かポートマフィアの人ならできそうですね」
賢治君が呟くようにそう言う。
「…そうだね」
今、私はどんな顔をしているのだろうか?
私は、笑っているのだろうか?それとも…
…いや、私は笑えているはずだ。だって私に危害は無いのだから。
太宰が自分の頬を手でなぞるように触る
中也に会いたい。
ただそれだけが私の頭を支配していた。
今日の依頼を全て終わらせた頃にはすっかり日が落ちてしまった。
もうすぐ夜になりそうな夕暮れ
何となく中也の髪の色を思い出す。
ポート・マフィアを抜けたこと、それ自体は後悔していない
けど、中也に会って話すことが出来なくなってしまったのは少し惜しいことをしたと思う。
「…中也に会いたいな」
裏路地にあるベンチに座り独り言をつぶやく
私のつぶやきは空へ消えていく
最近はいつもそうだ
でも、それが、凄く安心する。
「…太宰…?」
ドスの効いた、聞きなれた声がする
「…ちゅう、や、?」
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