春の陽気が心地よい昼下がり。
ハイネが書庫で静かに本を読んでいたそのとき──
「──だから、父上は…!」
「違います、師匠には…」
「…私のハイネに、あまり手を出さないでくれるかい。」
その静寂を切り裂いたのは、王子たち+国王陛下の名前を呼ぶ声だった。
「……は?」
ハイネが顔を上げた時にはもう遅い。
王宮の一室には、五人が勢揃いしていた。
「え〜〜何言ってんのさ父上!!センセーは俺のだし〜〜」
口火を切ったのはリヒト。王子スマイルでハイネの隣を陣取る。
「師匠は自分のことを信頼してくれている!!リヒト、余計なことを言うのはやめろ!」
ブルーノは顔を赤くして、でも真剣な目で言い切る。
「先生……ふにふに……好き……」
カイはいつのまにかハイネの手をふにふにしている。
「よくわからんがハイネは僕のだ!!」
レオンハルトは腕を組んで、理屈はわからなくても気持ちだけで参戦。
「……皆さん。何を仰っているんですか……?」
ハイネの声が一層静かになった。
「いやだから、センセーは俺が一番似合ってるでしょって話!」
「論理的に考えて、師匠が一番信頼しているのは……!」
「ハイネは昔から私のそばにいるのだから当然、私の……」
「先生……手……」
「僕のって言ったからな! 早い者勝ちだからな!!」
わーわー言い争う国王+王子たち。
静かだった書庫が、いまや戦場である。
「皆さん、とりあえず落ち着いて…」
「ですから父上…!」
「こればっかりは譲れないな。」
「むー!!父上大人気ない!!アラフォー!!!」
一向に収まる気配のない、王室教師争奪戦。
(どうすればいいんでしょう……私の大切な休日が……)
諦めてだらんぬしたハイネだった。
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