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[王子様の魔法のキス]


涼架side





翌朝、涼架は不安で胸が張り裂けそうだった。



昨日の劇の出来事でいじめっ子たちがいい気持ちになっているわけがない。



いじめっ子たちに、また何を言われるのだろう



そう思うと、足がすくんで学校に行くのが怖かった。





重い足取りで教室に入ると、いじめグループの女子たちは、私を睨みつけてはいるものの、何も言ってこなかった。





それは、昨日の若井君の行動に彼女たちも恐れをなしているからだろう






しかし、その静けさが返って私の不安を煽った







昼休み、私が一人でお弁当を食べていると、若井君が私の机の前に来た。





彼は、私の元にやってくると、いつものように優しい笑顔を向けてた







「なぁ、ちょっときて」



若井君は、そう言うと私を軽音部の部室へと連れて行った





「今日は、大丈夫だったか?」




涼架は、こくりと頷いた。





若井君は、私の顔を両手で包み込むと優しく言った





「良かった」

「じゃあ、もっと強くなれるおまじない、かけてあげる」



その言葉に、私は戸惑った




若井は、涼架の顔にそっと近づけ

『はい、目瞑って?』と優しく促した。





私は、彼の真剣な眼差しに、ドキドキしながらも彼の言葉に従った






涼架がそっと瞼を閉じると、若井の温かい息遣いが目の前に感じられた。





そして、涼架の額に柔らかい感触が降ってきた。



それは、若井君の唇だった。




私は、驚きで目を見開いた。



若井が涼架の額にキスをした



私は、反射的にキスされた部分を両手を覆った



頬が熱くなり、心臓がバクバクと音を立てる



「…な、なに…?///」





私が戸惑いながら見つめると、若井君は少し照れたように笑った





「強くなれるおまじない。これで、もう何も怖くないだろ?」



若井君の言葉に、私の心臓はさらに激しく音を立てた




若井君の優しさと、彼の真剣な想いにこれまでの不安がすべて消え去るのを感じた




そして、彼の顔を見つめ心から笑った









若井君から魔法のキスをもらい、私は生まれ変わったような気持ちで部室を出た






若井は、涼架の横を歩きながら、いつもより少しだけ強めに彼女の肩を抱き寄せた。





「何かあったら、すぐに俺を呼べ。

分かった?」



彼の優しい声に私は**「うん」**と頷いた


もう、一人で戦う必要はない。


若井君が、私の『居場所』になってくれたからだ。







教室に戻る途中、いじめグループの女子たちに呼び止められた。





彼女たちは、私を睨めつけ苛立った様子で口を開いた。





「ねぇ、昨日のあれ、何?あんなのシンデレラの劇じゃない」



彼女たちは、自分たちの完璧な計画が台無しになったことをまだ根に持っているようだった





「王子様が勝手に出てきて、一人で喋って…ふざけないでくれる?」



いつものように、嘲るような言葉を浴びせてくる。




私は、一瞬、体がすくみそうになった。




だけど、私は若井君がかけてくれた魔法のおまじないを思い出した。




彼の温かい唇の感触が、まだ額に残っているようだった。





「…そうだよ。あんなの、シンデレラの劇じゃない」


私は、震える声で、でもはっきりとそう言い返した。





その言葉にいじめっ子たちは一瞬驚いて目を丸くした






「だって、シンデレラは、誰かに罵倒されるだけの存在じゃないから」


私は、若井君の言葉を思い出しながら、続けた





「シンデレラは、自分の力で幸せになるの。誰かにいじめられて、泣いてるだけじゃない。

王子様に助けてもらって、立ち上がって、自分で物語を始めるの!」



涼架のまっすぐな瞳に、いじめっ子たちは圧倒されていた。




涼架の瞳は、もう恐怖で怯えてはいなかった。




そこには、若井から受け取った強さと自分自身を信じる心が宿っていた。







「だから、あなたたちがやろうとしてたのは、

シンデレラの劇なんかじゃない。ただのいじめだよ」



私は、ついに、これまで言えなかった本心を初めて口にした





その言葉は、私を縛り付けていた鎖を完全に断ち切った






若井は、涼架の隣でその勇気に満ちた姿をただ誇らしげに見つめていた。










次回予告


[僕の居場所は、君だから]

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『君の居場所は、僕が作るから』

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