『貴方ノ為ならどんな罪モ犯ス』〜桃の花は赤く散る〜
第7輪 惨劇ノ序章ノ始まリ
私とベリアンとミヤジはベリアンの部屋に向かって話す。
『主様にあの態度は頂けないよ。ベリアン。』
『っ、そうですね…執事として失言でした。でも、主様のことを信じるということは同時にユーハンさんが嘘をついてるってことに…』
『でも実際そうだっただろ?』
『それは何か嘘をつく理由が……。』
『ベリアン。君の仲間思いな所嫌いじゃないよ。でもね。行き過ぎた信頼は…自分も相手も蝕むだけだよ。』
『ルカスさん…。』
『ベリアンの信じたい気持ちは私も尊重したい。だけど、彼の主様に対する忠誠心が行き過ぎてるのは見て分かる。だから今回の犯行に及ぶ理由も……。』
『ミヤジさん…。』
『よく考えてご覧。主様の言葉を信じて彼を止めるのか。自分のことを信じてユーハン君を守るか。』
『……。』
『先に戻ってるよ。ミヤジ行こう。』
バタンッ。
『……。』
『主様…。大丈夫ですよ。きっと2人が説得してくれてるはずです。』
『…うん。分かってる。自分でも…こんなこと言いたくなかった。』
『主様……。』
(そうだよな…一番辛いのは主様だ。
ユーハンが手を汚すのは他の誰のためでもなく主様の為だって。それに尚更そうさせた原因が自分にある。そう思わせてしまうのが…何より辛いか…。)
『お待たせしました。主様。』
『ルカス…。』
『ベリアンならしばらくしたら戻ってくると思う。私達は主様を信じるよ。ユーハン君を止めよう。』
『ミヤジ…うん。』
私達はユーハンの居場所を突き止めるため作戦会議をする。
一方その頃――。
エスポワール森 空き家
『そろそろ抵抗する力も無くなってきましたか?』
『貴方…こんな、ことして許されると思ってるの?』
『許される…ですか。えぇ。もちろん。私は主様の為にしているだけですから。フィンレイ様や屋敷の皆様も気付いてるはずです。でも構いませんよ。私は主様と一緒に地獄に堕ちるんですから。その為に私は手を汚してるんです。主様の為なら私はなんでもしますよ。』
『狂ってる……っ。』
『ふふ、御自分の子供を目の前で殺されたのにまだ元気な口を叩けるんですね。』
私は床に落ちている子供の死体を剣で刺す。
ザシュ!グシャ!
『やめて!!これ以上その子達を傷付けないで!!』
『死んでるのにですか?死んだらみんな骸ですよ。』
ザシュ!グシャ!
その赤い悪魔は……。骸を刺し続けた。
純新無垢な綺麗な笑顔で。
人を殺した後とは思えない……そんな顔で。
デビルズパレス 食堂
『トゥルージュ家の死体が見つかったのは…エスポワールの森の中。つまりユーハンがいるのはこの森の中だと思う。』
『計算高いユーハンのことだ。公に姿を現す訳ないな。』
『うん。…みんな。今更だけど私は…みんなの仲間であり家族のユーハンを捕まえに行く。それでも着いてきてくれるの?』
『……。』
『正直……。まだ戸惑ってます。』
『あぁ。』
『でも…。俺はユーハンさんに罪を償って欲しいです。』
『正しい道に導くのが俺達が最後に出来る償いだと思う。』
『…ありがとう。』
と、その時――。
ガチャッ
『主様。』
『ベリアン…。』
『目が覚めました。私も主様に…皆さんと一緒に行きます。』
『ベリアンさん…!』
『ユーハンさんを悪魔執事に勧誘したのは私です。そして…フィンレイ様との約束を果たします。』
『約束…?あっ…。』
『悪魔執事が裏切ったら君たちはどうするんだ?』
『もちろん…私たちの手で執行します。どんな思い出があろうと…グロバナー家に仇なす者は許しませんから。』
『まさか…実現する日が来るなんて思いませんでしたけど。』
『…っ。みんな、明日の夜にここを出よう。そして、ユーハンを迎えに行こう。』
『はい!』
惨劇まで残り24時間――。
次回
第8輪 惨劇ノ始まり始マリ
コメント
2件
いやー、ベリアンが主様に反対した時はマジで焦りました(-_-;)次の展開が気になりすぎる