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本気にさせたい恋

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本気にさせたい恋

100 - 第100話  信じ合っていれば①

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2024年09月26日

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結局あれからあまり寝つけないまま次の日の朝を迎えた。



携帯を確認しても、もちろん透子からの折り返しはなく。

だけど、透子の気持ちを考えると、無理やり会いに行ったり連絡しすぎるのもどうかと思って躊躇してしまう。


昨日の食事会で仕事を切り上げた分、ちょっと早めに会社に行って確認しておくか・・・。



透子のことは気になりつつも、透子からの反応も少し待ちたい気もして、電話したい気持ちも隣の部屋を訪ねたい気持ちも抑えて、そのまま出勤の準備をして会社に向かった。

そして会社に着いてロビーのエレベーターの近くまで向かっていると・・・。

エレベーターの前で待っている透子の姿が見える。



ふっ。こんな時に簡単に会えてしまうオレらに笑ってしまう。

あんなに仕事が忙しくて偶然でも会社の中で会えることもなかったのに。

躊躇してしまって透子の気持ちを優先しようかと思ったけど。

だけど、やっぱりいざ透子の姿を見ると嬉しくて。

オレの携帯に折り返しないこととか、今のお互いの気持ちとか状況とか、そんなことさえもどうでもよくなる。

ただ透子に会えた嬉しさだけでオレの胸はいっぱいになる。


「おはよう」


そして透子以外誰もいないエレベーターの前まで近づき、透子の隣に立ちそっと声をかける。


「樹・・・」


その声に振り向いて、オレの存在に気付く透子。


だけど、思わず呟いたオレの名前は、いつもと違って気まずそうに悲しそうに響いて。


「おはよう・・・」


一応、挨拶は返してくれた。


だけど真っ直ぐ前を向いて、敢えて透子の方を見なくても、その返す挨拶が明らかにいつもの透子と違うのがわかる。


明らかにやっぱり透子気にしている感じだな・・・。

さぁ・・どうしようか。

どう声をかけよう。


やっと会えてうれしいはずなのに、透子のこのあからさまな反応を見ると、やっぱり簡単に声をかけることも考えてしまう。

透子が今どんな感情を抱えて、今オレと接しているのかと思ったら、気軽に今までみたいに声もかけられなくて。

そう思っていたら、他の社員も出勤してきて二人だけで話すチャンスを逃してしまったまま、その後すぐに着くエレベーター。


とりあえずそのままエレベーターの奧へと乗り込む。

すると透子も立ち位置的に無理だったのか、そのまま人に押されエレベーターの奥まで同じように乗り込んだ。

そして今はオレの前に立っている透子。


もしいつもの二人なら。

きっとここでオレは透子との距離を縮め、皆にバレないようにこっそり手を握り締めたりとかしてたはずなのに。

今はそういうことさえも出来ないもどかしさ。

こんなにすぐ近くにいるのに。

こんなに手を伸ばしたらすぐ届くところにいるのに。

なのにこんなにも遠い・・・。


話さなくても感じてくる透子からの雰囲気。

きっとこれはオレにしかわからない。

ずっと透子を見て来たオレだから。

ずっと透子と一緒にいたオレだから。


片想いしてた時からずっと見続けていた背中。

憧れだった透子に近づきたくて、必死に頑張って。

だけど決してオレなんかが相手にされるはずなくて。

隣に並べるように釣り合えるように、ここまでずっと透子だけを想って、頑張り続けたのに。

ようやく手が届いたこの人を、オレはまた理不尽な周りの障害に負けて手放すのか?


そしてエレベーターが止まり、透子もそのまま他の社員に混ざって降りようと足を進める。

そのタイミングでオレは咄嗟に前にいる透子の手首を掴んで引き止める。

すると後ろを振り向いて驚く透子。

そのまま透子が逃げ出さないように、すぐにエレベーターのボタンを押してドアを閉める。


今逃したらまた透子を捕まえられなくなりそうで、この手を放したくなくて。


「ちょっ・・! 何してんの!?」

「何って。降りようとしたの引き止めただけ」

「引き止めたって・・・。他の人にバレたらどうすんの!?」

「別に。オレはバレても全然構わないけど」


思った通り、透子は動揺して反論してくる。


オレはずっと透子との仲が皆にバレても構わないって言ってるのに。

隠したがってるのは透子の方でしょ。


・・・って今のオレがそんなこという資格ないか。


「昨日・・なんで電話でなかったの?」


それよりも今はそっちの方が聞きたい。


「もう・・寝ちゃってたから。折り返すタイミングなかっただけ」


すると透子がそんな言葉で返してくる。


嘘が下手なくせに、なんでそんな強がるかな・・・。


「ホラ。樹エレベーター着いたよ。手放して。私また自分の階まで降りなきゃ」


すると社長室がある最上階までエレベーターが到着したのを確認して透子がそのまま抵抗し続ける。


「話まだ終わってない」


逃げないで、透子。

透子の気持ち、ちゃんと聞かせて。


「話って・・別に何もそれ以上ないし」


だけど、やっぱり透子はオレと話をしようともしない。

責めるなりしてくれれば、透子の気持ちがわかるのに。

なのに、もうオレに興味ないような、そんな悲しい態度とらないで。


「とりあえず話しよ。一緒に来て」


とにかく今はこのまま時間置かない方がいい気がして。

少しでも早くちゃんと話をした方がいい気がして。

そう言ってオレは透子の手首を掴んだまま引っ張ってエレベーターを降りる。


「ちょっ!何考えてんの! 私これから仕事なんだけど!」

「まだ時間早いでしょ。まだ出勤時間まで随分時間ある。ってか今一番会社で決定権があるオレがいいって言ってんだから」


透子が断れないように、こんな時だけ権力を使ってしまうオレは情けないけど。

でも今はそんなことをしてでも透子を引き止めて話をする必要があるから。



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