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わたしは、きふちちゃんにあいされなくなったのかと、ふあんになりました。
さいきん、きふちちゃんは、とてもいそがしくて、いっしょにいる時間も、話す時間もへりました。
夜にかえってくることが多くなっていて、ねて朝おきると、きふちちゃんがとなりにいないベッドの上でおきることが多いんです。
わたしはおとうさんとおかあさんにあいされたことがなかったんです。
おとうさんとおかあさんがおかしくなる前までは、とてもしあわせなかぞくでした。でも、なにかが、ちがかった。
おとうさんもおかあさんも、”わたし”を見ていたんじゃなくて、”自分たちの子ども”を見ていたから。
わたしが生まれた時のきおくはあまりありません。でも、おかあさんとおとうさんといっしょに、いろんなお店におでかけしたことは、おぼえていました。とてもしあわせで、うれしかったんです。
でも、少し、いわかんをもってから、気づいたんです。
「おかあさん!おとうさん!わたし、二人の絵、かいてみたの!」
そう言ってわたしは、おとうさんとおかあさんに、自分がかいた絵を見せました。
「わあ!美輝凄いねー!お父さんもお母さんも、とーっても上手に描けてるよー!」
おかあさんはそう言って、えがおを見せてくれました。わたしはそれがうれしくて、たまりませんでした。
でも、おとうさんが言ったことばで、わたしはいわかんを、もちはじめたんです。
「ああ、本当に上手だぞー!誰に似たんだろうなあ」
「ふふっ。勿論輝斗でしょう?」
「ははっ。ありがとうな、美幸」
らいとは、おとうさんお名前で、みゆきが、おかあさんのお名前です。
この時、わたしじしんのことを、ほめられているわけじゃないのかも、と思いはじめました。でも、わたしは、おとうさんとおかあさんの子どもだからと、しんじていました。
でも、にたような話が、おとうさんおかあさんといっしょに話すと、まいかい出てくるんです。
いつも、あなたの子どもだから、わたしたちの子どもだから、と言って、わたしじしんのこせいをなにも見てくれないんです。
いつもいつもそんな話をして、わたしはもう、なにもしんじられなくなってきたんです。
そんなある日、おとうさんがおしごとからかえってくると、変でした。
「どうしたの?輝斗…」
「もう嫌だ…なんで俺ばっかり…」
ついつい、その話を聞いてしまいました。
「…輝斗は責任感が強すぎるから。人から良く思われたいのは分かるけれど、私だけだとしても、輝斗のことをよく思っているから、ね?会社の人から責任を押し付けられたりしても、大丈夫、安心して?」
おかあさんはやさしい声でおとうさんにそう言いました。でも、おとうさんはきゅうに大きな声を出して、言いました。
「もうダメなんだ!俺は…もう嫌だ…。何もかも…会社だって、外だって、責任に押しつぶされそうで、何もかもが不安でしかないんだ…!!」
おとうさんはそう言うと、なきました。どあのむこうがわにいるおとうさんのなき声が、わたしのところまできこえてきます。
「っ輝斗…」
そんな話をぬすみぎき夜から、おとうさんはおしごとに行かなくなりました。
わたしやおかあさんが、おとうさんに話しかけると、おとうさんはふるえて、顔が青くなり、ないちゃいそうな顔になるんです。
でもそれから、なんかげつかすると、へやから出てこなくなりました。おかあさんがごはんをへやにとどけると、いつも食べているみたいでした。わたしはだんだん、おとうさんだけじゃなくて、おかあさんもおかしくなっちゃいそうだと、ふあんになりました。
でもまた、なんしゅうかんかたつと、おとうさんがへやから出て、リビングに来てくれました。でも、ソファにすわると、ごはんの時いがいはうごかなくなって、話しかけたりしても、むしされてしまいます。
おかあさんは、おとうさんをあいしていたので、そのじじつに対してショックをうけて、おかあさんもおかしくなってしまいました。
わたしに対してきゅうにどなったり、とがったねずみいろの物をキッチンからもってきて、自分をさそうとしたり、わたしをさそうとしてくるんです。
なにもないときでもさけんで、どなって、わたしがそれを見てなくと、おかあさんはわたしをさそうとしてくるんです。
そんなまいにちが、なんかげつか、つづきました。
わたしはたえられなくなって、ある日の朝、なん分かでつくこうえんに、あそびに行きました。
そのこうえんで、きふちちゃんと出会ったんです。
きふちちゃんは、わたしにどなったりしないし、わたしをしんぱいしてくれました。それに、わたしの話もきいてくれて、やさしく声をかけてくれるんです。
わたしはこの時はじめて、人にあいされるかんかくが分かりました。
わたしはずっとあいされたかったんです。でも、おとうさんもおかあさんも、”わたし”じゃなくて、”自分たちの子ども”を見ていたんです。そして、おかしくなって、あいしてくれることはありませんでした。
でも、きふちちゃんはちがいました。
”わたし”を見てくれて、あいしてくれる。
いっしょにくらそうと言ってくれて、本当にいっしょにすんでくれました。
それはとてもうれしかったんです。
でも、さいきんはいっしょにすごすことがへって、あいされているじっかんがなくなったんです。
どうしんじようとしても、いっしょにすごす時間がへれば、しんじられることも、しんじることができなくなったんです。
本当に奇縁ちゃんは、私のことを愛してくれているんでしょうか。