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他国からの賓客を迎えてから数日が経った。

今日は来賓達の帰国日。エインデル城では王族達が別れの挨拶をしている。

どことなく疲れた様子の3人の王妃達がフレアとガルディオに礼を言うと、元気な3人の王女達も習って礼をする。しかし、2人の王子は必死に駄々をこねていた。


「後生です! せめて最後に一目、アリエッタ嬢に!」

「お願いします! ニオ嬢と別れの挨拶をさせてくださいっ!」


王子達の悲しい初恋に、大人達はため息。王女達はジト目になっている。

真剣な本人達にとっては一大事。王子という立場上、庶民と恋に落ちる事は難しい。他国となればなおさらである。笑ってシバかれお尻を押さえながらさようなら……では思い出としてもあんまりだった。

ちなみに王妃達だけは2人の正体を知らされている。登城したピアーニャとイディアゼッターによって、王族の大人にだけ説明があったのだ。


(駄目もう諦めて! 良い子とはいえ女神と魔王なんて絶対手に余るから!)


そう、アリエッタについても教えられていた。色々なリージョンでアリエッタが派手に動いていたので、いっそのこと上層部だけで共有した。そして神が見ていてシーカーが管理しているので、国として極力関わらないようにという取り決めもしたのだ。

ニオについては、ギアンだった頃の話を聞かされ深く同情。シーカーに管理を任せると同時に、今世は自由で幸せに生きてくれという願いも込められている。


「さて、帰りますよ」

「ほら立ちなさい」

「うおー! ニオおぉぉぉぉ!!」

「ありえったああああああ!!」

ごすっ、どすっ


親である王妃達が王子達の前に立つと、何やら鈍い音が聞こえ、王子達は大人しくなった。


(おそろしくはやいハラパン……)


そのまま魔動機に乗せられた。

王女達、王妃達も続いて乗り込んでいく。


「それではごきげんよう」

「ごきげんよう。お気をつけて」


来賓達は帰っていった。

帰国は魔動機による長距離移動である。国同士の移動はよほどの緊急事態が無い限り、塔を使わない。転移先としても設定されていないのだ。理由は戦争による内部破壊防止の為。

他のリージョンを経由すると転移は出来るが、私利私欲の為の戦争で他リージョンを巻き込めば、他国と戦争をする前に権力無効の他リージョンと中立のシーカーを敵に回してしまう事になっている。間者が個人で転移するにしても、転移の記録はしっかりと残るようになっている。よほど野心を拗らせて盲目になっていなければ、リスクが高すぎる事に気づく。

もちろんこれは、転移に関しての危険性をよく知るイディアゼッターの考えた塔の仕様。だからこそ安心してピアーニャも色々な国や世界に設置できるのだ。


「しかし有能な側近たちでしたね」

「完璧だったな。『勉強になった』とみんな感心していたぞ」

「他国には良い人材が揃っているようで」

「……ジンザイか」


何気ない会話を聞いて、ピアーニャがポツリと呟く。


「ウチにも王妃わたくしを攻撃しない人材がほしいわ」

「だな。私も結構縛られたりカップ投げられたりする」

「そりゃオマエらがわるい。マトモにコウドウしろ」


王族のぼやきに思わずツッコミが入った。

というのも、ネフテリアとディランの影響か、ミューゼとパフィからの影響か、最近は王族に対するメイド達や兵士達の距離がかなり近くなっていた。謎の暴走に兵士から国王に裏手ツッコミが炸裂したり、逃げようとする王妃に向かって攻撃魔法を撃つという光景も、あまり珍しくなくなってきたのだ。

そんな光景を数回見てしまった来賓達は、当然ながら口をあんぐり開けて眺める事しか出来なかった。ちょっと楽しそうだと思っていた王女が2人いた事には、誰も気付いていない。

城の中に戻っていく王達を見送ったピアーニャは、一息吐いてからポツリと漏らした。


「アリエッタをまかせるジンザイ、ほしいな」

「やめてください。アリエッタさんとお嬢がじゃれるのは素晴らしい事なんですよ」

「をい」


なんとイディアゼッターも、翻弄されるピアーニャを眺めて楽しんでいた。

ピアーニャが抵抗の為にジト目で睨むも、イディアゼッターには孫の反抗のように見えて微笑ましいと感じてしまう。


「わちはオトナなんだからな!」

「儂から見ればトーラスも子供ですから」

「そりゃ…そーだが……」


納得がいかないので抵抗したいが、年齢で神に勝てるわけがない。

悩んでいると、イディアゼッターがニコリとほほ笑んだ。


「それでしたら……──」

「!」


何かを吹き込まれたピアーニャは、リージョンシーカー本部へと走っていった。




『ごふっ』


本日エルトフェリアのヴィーアンドクリームで、流血騒ぎが続出。沢山の客が浮かれた笑顔で帰っていくという事件が朝から続いていた。


「可愛すぎませんかねルイルイちゃんのトトネマ耳!」

「やべぇ……シャンテちゃん直視した瞬間鼻血が…ブフッ……なんでラーチェルの耳と尻尾ついてんの?」

「いやああエリーティオ様みみっ耳があああ! ピクッて! 今ピクッて! しっぽおおおああああくるまれてシにたああああああ!」


アリエッタがメタモルバッジを店員につけて、ケモミミ娘に変身させたのだ。

獣の耳と尻尾をつけるという遊びがこれまで無かったせいか、ケモミミ美女という存在は刺激が強かったようだ。しかもすっかりアイドルと化したフラウリージェ店員達という事で反響も大きい。赤面、気絶、興奮、心停止、鼻血、吐血、発狂と、反応は様々である。

こっそり覗いているアリエッタが、ちょっとコスプレ味が強すぎたかと反省している。反応が嬉しくて止める気はさらさら無いが。


「ニオ、やる?」

「は、はいっ」

「気を付けてねー」


本能的な恐怖のせいで従順になっているニオに声をかけ、出ていく準備をする。ネフテリアが2人に料理を持たせ、付き添いで3人一緒にヴィーアンドクリーム店内に顔を出した。


ざわっ


瞬間、フラウリージェ店員を含めた全ての人が注目。時が止まった。


「がんばれっ、こっちの席よ」

「はいぃ」


2人を客に見せつけるように案内するネフテリア。その思惑通り、全員がアリエッタとニオから目が離せない……なんて事はなかった。確かに目が離せないくらい注視しているが、チラチラとネフテリアの頭と往復している。


「んしょ」

「むっ、むっ」

(なにあれ死ぬほどかわいい……)

(ノシュワールだ……尻尾もっふもふだ)

(コルアット……だと……)

(あんな美幼女2人は反則だろ死人出るぞコラ)

(あっ、可愛すぎて意識飛びそう……)

(でも……)

(なんで王女様は耳じゃなくて花なんだ?)


先日と同じく、アリエッタはリスっぽい生き物ノシュワール、ニオはネコっぽい生き物コルアットで登場した。そしてネフテリアも自覚の無いまま花を咲かせている。

今日は頭に何か生やす日なんだろうと納得されているが、1人だけ花なので違和感が凄い。


「な、なぁ。あんな青髪の可愛い子いたっけ?」

「ご存知ないのですか? 彼女こそフラウリージェ期待の新人、アリエッタちゃんのライバル、ニオちゃんです!」


勝手にライバルにされ、ニオが悲鳴を上げかけたが、なんとか飲み込んだ。


「儚い子ね」

「気が弱そう……だがそれがいい」

「守ってやりてぇ」

「2人とも超絶美人になるだろ、しかもフラウリージェのエリートだ」

「だな。王女様よりずっと高嶺だ」

「ちょっとそこ聞こえてるわよ!」


全員が見守る中、3人は注文のあったテーブルへとたどり着いた。そしてテーブルにそれぞれ1品ずつ置くと、座っている客を見上げ、笑顔で、


「ご、ゆーくりドゾー!」

「ごゆっくりどうぞー」


元気でたどたどしいアリエッタと、ちょっと困った顔だが丁寧なニオのハーモニー。

笑顔を直接向けられた客は、胸を押さえ、「は……」と声を漏らし、動かなくなった。


「あ、死んだ」

「無理もねぇ……」

「僕もしグフッ」


なんだか周りに飛び火しているが、ミッションコンプリートした子供2人はそれどころではない。これで良かった?とネフテリアを見上げ、次の判断を待っている。

そのネフテリアは、胸を押さえて息を荒らげていて、必死に生存しようとしている。困った視線を受けてすぐに復活し、2人を連れて奥へと引っ込んでいった。

その瞬間、


『ぐはぁっ!』


幼女達に無様な姿を見せないようにしていた大人達……フラウリージェ店員を含めたほぼ全ての生き残っていた人々が、致命的なダメージを受けてブッ倒れたのだった。




後日、密偵からの報告を見た他国の王子2名は、それはそれは悔しそうに血の涙を流していたという。

からふるシーカーズ

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