テラーノベル
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登場人物
僕: 会社員。日々の生活に虚無感を抱え、何かに縋りたい心理状態にある。
アイドルの声: 画面の向こう側から響く、明るく全能感のある声。
僕: RPGをクリアして世界に平和が戻る。けれど、僕はクリア後のマップをうろついて、使われていないダンジョンの隅をつい覗いてしまう。「まだ何か、続きがあるんじゃないか」。きっと、そんな経験をした人は少なくないと思う。
僕: でも、シナリオの目的は達成され、勇者としての活動はもうそこにはないのだけれど。
僕: (電車の揺れを感じながら)深夜、電車の窓に自分の姿が映った。スーツを着て、吊革につかまって、明日もあさっても同じ時間に家を出る。思い描いていた未来は、こんな景色じゃなかった。もっとキラキラしていて、もっと特別で――そんなふうに思ったことは、正直ある。
僕: スマホに視線を落とす。そこにはステージで笑っている人たちが映っていた。
アイドルの声: 「応援してください! 私たちは“夢の続きを”お届けします!」
僕: そんなキャッチコピーが目に飛び込んできて、胸のどこかがざわついた。“夢の続きが買える”と考えた途端、なぜか財布の紐が緩む。もう自分の番はとうに過ぎてしまって。
僕: 会社という大きな歯車には命を懸けているのに、肝心の自分自身の人生には、ほとんどなにも賭けてこなかった。もし目の前に「賭けたくなる誰か」が現れたら――そりゃあ賭けたくもなるだろう。
僕: その日から僕は“どこかの誰か”に賭けるようになった。動画を見て、ライブに通って、グッズを手に入れて。追いかけて、追いかけて、ただその先を見たくて。
僕: (間をおいて、冷ややかなトーンで)――そして、二年後。その人は突然、僕の前から消えた。
僕: 売られていたのは「夢の続き」なんかじゃなかった。僕が買っていたのも「昔の続き」じゃなかった。
僕: ただ単に――“見たくなかった未来”を買っていただけだった。