恒例の振り返り企画。前回は甲斐田が倒れるまでの経緯を描きました。
不穏ですね…大分不穏です。
今回は長尾視点、ですから…甲斐田から治療を受けて、
配信が切られるまでの出来事を描いております。
はたまた1日で200いいねとは…恐れ多いですね…はい、やる気が漲っております私。(
今回のお話、戦闘が多少含まれているのと、長尾の拘束される表現が有ります。
苦手だよー心が痛いよーギャァァァという方はブラウザバックを推奨、
あ、全然尊いんで大丈夫むしろもっとやれくらいの何でも許せる方はこのままお進み下さい。
今回も長くなります、結構。
ではでは早速…今回のお話もお楽しみ下さいませ。
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「なんだかんだでハルは優しいんだよなー!…とーじろーはちょっと、うん…w」
さっきまで俺は甲斐田の治療を受けてた。なんでかって?ちょっと任務で隊員を庇いながら戦ってたからさ、治療して貰ってそんで弦月の説教を1時間受けて来たって訳。
説教1時間もされたら機嫌悪くもなってたけど、守ってやった隊員がお菓子くれたから今は機嫌が良い。頭の後ろで腕を組んで、少し笑い混じりに独り言を並べる。
「今から何すっかなー、…もっかいハルん家行って一緒にお菓子食うか!」
彼奴は今何してるんだろう、また薬草を弄ってるか研究してるかのどっちかだろうな。…あぁ、そういえば治療受けに行った時に甲斐田がちょっと困惑してる素振りを見せたんだよな。俺の怪我以外の何かに。あとは若干魔の気配が屋敷周辺に…いや、彼奴の研究対象か。さっきは怪我だなんだで無視してたけど、普通に何があったか気になるな。お菓子を食ってる時に聞いてみよっと。
御機嫌にそう考えていれば、すぐ甲斐田の屋敷玄関に着く。早くお菓子食べたいなーなんて考えながらインターホンを連打。いつも通りの事だ。
…でも今日は反応が無かった。いつもだったら『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙もう五月蝿い!!!!こちとら徹夜で資料作ってるってのにさぁ?!!?!?』とかエナジードリンクを握り締めながら出てきて怒ってくるのに。可笑しいな。少し首を傾げて悩む素振りを見せると、ダァン!!と勢いよく扉を開けて叫ぶ。
「ハルー!一緒にお菓子食おうぜー!」
それでも反応はない。寝てる?出掛けてんのかな?そう疑問を抱きながらも、部屋へとあがってお菓子の入った袋を机の上へ乗せる。周りを見回しても、庭に顔を出しても彼は居ない。やっぱ出掛けたのかな、タイミング悪ぃ…。ムゥと口を紡いで、ハルへと連絡を入れる。連絡方法はまぁ…語り掛ける魔法的なあれよ。
『ハルー、今何処にいんのー?』
答えはまた沈黙…ではなかった。唸るような声、それは紛れもなく甲斐田の声だった。それは驚く程に予想外で、思わず目を見開いてしまう。この情報で解る事は1つ。彼が何か危険な状況にいるという事。それだけ。こうしてはいられない。
バッと刀を手に持ち、家を飛び出す。場所…そんなに遠くないと良いんだけど、迷うし。少し面倒そうにそう考えながらも急ぎ足でそこらを見渡しながら走る。
「甲斐田さん…?此方側の道には来ていないと思います。」
「この店には来てないよ、他をあたって下さいな。」
街の人へ少し問い掛けながら探してはいるが、全く見つからない。結局戻ってきた甲斐田の家。
目撃情報すらないじゃーん!えぇとでもいうように溜息を吐いて、家周辺を今一度確認するように見て回る。…すると、知らない道が1つ有った。決して解りにくい場所に有った訳ではなかったが何故か気付けなかった。確か此処って…、そんな事を考えながら道を辿って行くと1つの神社が。…うわぁなんかめっちゃ綺麗ー。周りの草木も手入れが行き届いていて、とても綺麗な緑色だ。ハルが定期的に掃除してんのかな。
「…ッて、ハル?!おい御前大丈夫か?!?!!」
上ばかり向いていた視線を落とすと、神社の本殿の麓に倒れている彼が視界に入る。彼の元へ駆け走って、少しだけ体を持ち上げて訴え掛ける。彼の容態は…あぁ、息はしっかりある。けど顔が真っ青で、冷や汗を沢山かいて、とても苦しそうだ。…此奴、また飯食わなかったのか?エナドリだけとか言ったらぶん殴ってやる。
そんな事を考えながらも通信機へ手を掛けて弦月へと連絡を入れる。
『おいとーじろー!!ハルが神社で倒れてた、
くっそ顔色悪いから俺も看病するけどお弦は今からこっち来れる?』
『…はぁ?!晴くんも怪我…っじゃなくて倒れたのか、ったくもー解った向かうよ!
ベットに寝かせといて。』
『おーセンキュ!』
弦月に言われた通り甲斐田をおぶって家へ向かう、…あ、羽織こんなとこにあったんか。パッと手に取ってはこんな事を呟く。
「…此奴かっる、筋肉質な癖に。」
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あの後、甲斐田をベットに寝かせてタオルで汗を拭いてたら弦月が来た。弦月も流石に倒れたって聞いて焦ってたのか、大分息切れしてたな。
「は、…ッ晴くんは、?!」
「めっちゃ寝てんよー、まだ顔色悪いけども。、」
「…栄養失調とかだったら1週間監視してやるわ。」
「ッスー…同感っすねー、」
そんな会話も終わって、弦月はまだ仕事が残ってる、何か様子が変わったら連絡して。とだけ言い残して去ってった。忙しいよなー、弦月は。ベットに横たわる甲斐田を膝立ちでベットへ頬杖をついて眺めながら、そんな事を考える。
…ってか、今日此奴配信あるくね?ツイートしてたよな。やっばいじゃんw ふと思い出した事実にスマホを確認するとしっかりとツイートされていた。あと5分くらいで時間だけど大丈夫か此奴…俺が報告しても良いんだけど。うーんと頭を悩ませていれば微かな音が聞こえる。
「…ゔ、ぅん…、長尾ぉ…?」
反射的に彼の方へ視線をバッと向けると、少しだけ目を開いて俺の名前を呼んでいた。その姿は先程倒れたことを忘れそうな程に、いつも通りの寝起きの甲斐田で。
「おま…心配したんだぞ甲斐田!!!
お弦も忙しい中来てくれてたってのに…ちょっとの間だけだけど。」
「ごめんってー!あれはちょっとふらついただけで…、」
彼の額へ軽くデコピンを食らわして、安堵と怒りの混じったような声で訴える。彼は額を抑え、へらへらと謝っている。…デコピンにキレないって事は反省してるって事で良いよな。少し怒りの籠った表情を浮かべながらも、容態を確認するように彼全体を見渡す。すると普段の彼では有り得ない違和感を見つけた。
「…あ?御前誰だよ。」
先程から話している時目は瞑った状態だったから解らなかったが、此奴瞳の色が紫がかった黒に染まっている。普段彼は青っぽい色をしているのに。 ガッ っと甲斐田らしき人物の手首を掴んで、若干圧を掛けながら問う。其奴は小さく身震いして驚く素振りを見せる、普段の彼ならばキレて掛かって来る筈、そう思って言葉を待つ。
すると返ってきたのは__攻撃だった。其奴の手首を掴んでいた俺の手を利用して、ぐるんと俺の身を回して床へ取り押さえられる。それは突然の出来事で手際も良く、反撃の間がなかった。…そして其奴が甲斐田ではない事を証明していた。
「バレるの早過ぎでしょー、もうちょっと騙されてくれても良くない?」
其奴は瞳の色以外全てが一致している、…あぁ、取り憑かれた系だなきっと。知り合いの身と声でそういう言葉を発せられるのが嫌で、ギリと歯を食いしばる。不愉快だ。
「目の色違うんだよばーーーか、」
ハッ、と相手を馬鹿にするように言えば、其奴は多少腹が立ったのか俺を取り押さえる力が強くなる。…てか配信、どうしよ。そう思った時其奴は俺へ一言告げ口を叩く。
「ちょっと僕配信してるから、大人しくしててよ。祓魔師さん。」
配信の事知ってんのかい、いや元は甲斐田だもんな、記憶は有る筈。…甲斐田に取り憑いた魔が配信するとかちょっと笑えてくるな。そんな事を考えていると、其奴は魔特有の黒い霧のような物で俺の手足を拘束して立ち上がる。警戒心がお高い魔です事、厄介だな。
「っるせぇよそんな簡単に従ってたまるか!!」
刀は若干遠い位置だが配信時間を考えれば取れる筈、そう考え其奴へと反抗の意を示す。
「…ね、静かにして欲しいな。配信中に雑音が入っちゃ駄目だからさぁ?」
俺の目の前に屈んで、顎を掴んで顔をぐいと甲斐田の顔へ向けさせられた状態でそう言われる。…あぁ?そりゃそうだが今は例外だろ。キレ気味で其奴を睨んでいると、首輪に近い輪っか上の物を付けられた。いや俺は犬じゃねぇんだから。そうツッコミを入れ掛けたその時だった。
「________!!…?」
声が出なかった、口は動いているが声が出ていない、空回りしているような感覚。やっべ声も塞がれちゃうと弦月に連絡も出来ねぇじゃん。焦りと動揺が隠し切れずに、其奴へ視線を向けた瞬間虫唾が走った。すっげぇ気味悪い笑みを浮かべてるもんだからさ。
パッと手を離されると、彼奴は直ぐに配信をする部屋へ入ってった。…甲斐田の野郎、どんな魔に憑かれたんだよ、割と強い奴やん。ググ、と腕に力を入れても外れたりちぎれたりせず、ただ手首の痛みが増えていくだけだった。
…どーしよっかねぇ。
弦月を呼べれば1番良いけど声がなぁ。
てか彼奴俺を攻撃しないんだな、何がしたいんだか。舐められたもんだわ。
危機感とかはやっぱ慣れてるからそこまでなくて、焦りも数秒経ちゃ消える。うーむ、と縛られてる割には呑気に、対処法を考え始める。
…そして10分程後、思い付いた。
モールス信号覚えたじゃん俺ぇ!!
昔に配信の企画でやってたんよな。意味無いと思ってたけど意外な所で役に立つ…やっぱり人生何が起きるかわからんなぁ。そう考えると早速弦月へと通信を繋げる。
『おー景くん、なんかあった?』
特に変わりもしない弦月の声、…そういや弦月ってモールス信号知ってるっけ。…まぁ気づいてくれるっしょ多分。そう考えれば体を力ませて仰向けに変わる、流石に頭を床にぶつけてモールス信号とかヤバいし、仰向けになった時に手元が床に近づくから爪とかで音を立てれば大丈夫だろう。
『-・ ---・- -・-- ・-・-- ・-・-・- ・-・・ ・- -・ ・・ ・・-- ・- -・--- -・-・ -・-・・ ・-・-- ・- -・・- ---・- ・・・- ・・ ・-・・ ・- -・ ・・ ・-・・ ・・ -・・- -・-・ ・--・ ・-・・ --- ・-・-- -・--・ ・-・-・- ( 助けて、甲斐田の家に来て。今すぐ。甲斐田が魔に憑かれてる。)』
『…おぉ??何何ドッキリ?』
『-・・・ ・-- ・・・- --・-・ ・-・- -・-- ・・ ・-・-・ ・--・ ・・ -・-・・ ( 早くしろ弦月 )』
『あ、あれ、怒った?w音でか…あぁ成程。ちょっと待って。…今危険な状況?そうなら音立てて。』
声色が変わった、気づいてくれたってことで良いんだな?都合良く解釈すんぞ。ゴッ と床を叩いて応答を示す。すると通信は途絶えず弦月の方からドタバタと動く音が聞こえる。…おん、大丈夫そうだな。良かった。…てか場所わかるのか彼奴。そう気付いた頃には扉から外に出る音声が聞こえてきた。行動がお早いことねー、なんて呑気に考えて1人静かに笑いを零す。
「景くん!!大丈夫?!」
眠ぃなぁなんて考えていると、扉を勢い良く開ける音と、聞き慣れた彼の声が耳に入る。…扉勢い良く開けんの俺と一緒やなー。なんて考えながら、ドン と音を立てる。すると弦月はすぐに気づいて此方へ駆け寄ってくる。
「…うわー、変な趣味してんのかと思っt…んん、今解いてあげるからね!」
いやまぁ確かに一見そう見えるかもしれんが違うわ。鼻で笑いながら彼の方を見れば、彼は自分の前に屈んで言葉を唱え始める、魔除的な奴な。すると時間も掛からずパキンという音と共に輪が外れる。
「…あ”ー、疲れた…。弦月、今甲斐田が魔に取り憑かれた状況で配信してんのよ。
あ、ちなみに意識はもう魔のもんになってる。」
「…はぁ?!??!もっと早く言えよ馬鹿!!!」
「いやいやいやモールス信号で一応伝えたんだが?!」
「分かるわけねぇだろ!!景くんはよく迷子になるから
GPSつけてたけどこんな時も役に立つとはね!!!」
「それはごめんて、w」
淡々と進む会話。声の大切さも実感すんなぁ。彼の怒りの強さでわかる、心配してくれてた事実が。
その場で立ち上がって刀を手にする、…と弦月はすぐに察してくれたのか家の周りに結界を張り始めた、流石とーじろーだな。と少し誇らしげに考えれば、配信部屋へと足を運ぶ。
ハルのリスナーには悪いが、こうするしかないんだ。そう自分に言い聞かせて、静かに部屋へ侵入する。やはり配信中はヘッドホンをするから、あまりバレないもんだ。俺も気を付けないとな、そう考えると即甲斐田の頭にゲンコツをくらわすように腕を頭の上で振りかざす。
「ッて、いったぁ”!!!何すんだお前ぇ!!今配信中なんだけど?!??!」
見事なクリーンヒット、そして甲斐田らしい反応。腹が立つ。大丈夫だ、弦月も待機してくれているんだから。フッ とひとつ笑いを零すと彼へと言葉を贈る。
「配信切るぞ!!甲斐田…いや、魔か?」
コメント
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めっちゃおもろい
続きありがとうございます!!! 魔に取り憑かれた甲斐田さんと友人の長尾さん、弦月さん達はどうなるんですかね!?!? めちゃくちゃ気になります!気長にゆっくり待ってますねヽ(•̀ω•́ )ゝ