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「私たちは適切な時に介入するため、特定のキーワードや行動に反応する仕組みを持っています。あなたが部屋から出られた時に、システムがそれを察知して私に通知が来ました。だからすぐに動けたのです。この部屋はもともと私が借りていたものですから、対象者である相原久次郎、松本幹雄、そして美晴さんのGPSを追っていました」
「そうだったのですね…」
「GPSは復讐アプリだけではありません。Matchでも同じようにGPSのプログラムが仕込まれています。相原久次郎や松本幹雄も同じアプリを使っています。Matchをインストールしていいる限り、居場所はすぐにわかります」
美晴は改めて情報社会の恐ろしさを知った。電話番号ひとつ、アプリひとつで行動を監視される社会になってしまったのだ。
「誤解のないように言っておきますが、こちらは不用意に個人情報を収集したり、利用するのが目的ではありません。私たちは困った方々をサポートするために作られた、AIを操るコンピューターの天才集団です」
AIを操るコンピューターの天才集団――納得のいく答えだった。
画面の向こう側にいるのは、自分のように虐げられてきた女性たちの気持ちがわかる『サレた側』の女性たち。だからこそ的確に、AIのようでAIでない、人間味のある回答をしてくれたのだ。
それで万全の態勢でサポートができたのか。
まだ全容はわからないが、それでも復讐アプリが信念をもって運営していることがよくわかった。
「ありがとうございます。最後まで頑張ります」
美晴は礼を言ってアズミの部屋を退出し、自分の部屋に急ぎ戻った。隣の部屋で繰り広げられている不倫の証拠を多く入手した。
――美晴さん、潜入捜査は大丈夫ですか?
部屋でひといきついたところで、隆也からメッセージが入ってきた。心配してくれる人がいるのはありがたく心強い。
――隆也先生、ご心配下さってありがとうございます。嬉しいです。先ほどは危うく彼らに見つかりそうになりましたが、うまく回避できました。
――それはよかったですね!
――先生はどうですか?
――今日は転ぶふりをした松本さんに、Tシャツを汚されてしまいました。唇の跡が点いてしまって…。お気に入りのシャツだったので、ちょっとショックです。
(ひどい…! 先生もお辛いだろうな…)
――先生は直接なにもされていませんか?
――はい。大丈夫です。なんとか。
――無理しないでくださいね。私はあなたの味方ですから、いつでも愚痴や相談をしてください。
――そう言っていただけるだけで心強いです。引き続き証拠が撮れるように頑張りますね!
――はい、それでは先生お休みなさい。
――美晴さんもゆっくり休んでくださいね。
短いメッセージのやり取りをして、美晴は微笑んだ。
最近彼とはMacthアプリを通じて時々こういうやり取りをしている。血の通った味方とのやり取りは、互いにすごく支えになった。