翌日、美晴は幹雄たちが部屋を去ったことを確認し、旅館を出るところの写真や動画を撮り、先回りして自宅へ戻った。幹雄たちは途中で寄り道ができるような旅行プランにしてあるので、まったく問題なく帰宅できた。
すぐさま隆也に報告を入れる。
――先生、無事に帰ることができました。ご連絡をいただいてとても心強かったです。ありがとうございました。
――無事でなによりです。ゆっくり休んでくださいね。僕は今、所属しているダンススクールのコンテストに向けて、新しい創作ダンスを考えています。
――すごいですね。頑張ってください! 応援しています。
――ありがとうございます。
若い青年が夢に向かって走る姿はなんとキラキラしていることだろう。
その夢を聞くだけでわくわくする。応援したくなる。
美晴の中でも隆也とのやり取りは、疲弊した現実に差した癒しの光のようだった。
しかしその癒しにばかりかまけてはいられない。アプリに報告を入れた。
――相川久次郎の新たな証拠を手に入れました。
昨日撮影した動画をアップした。早速アプリから返信が入る。
――素晴らしいです。美晴さんに300Pバックを差し上げます。
これでポイントが700Pから1000Pになった。いよいよこれで、夫への復讐方法の開示ができる――!!
美晴はワクワクとした気持ちで復讐方法を開示するボタンをタップした。
今まで必死に貯めてきた1000Pが消費され、一瞬のローディング後、以下のオプションが表示された。
『松本幹雄への復讐方法を以下の中からお選び下さい。
1・証拠を公にして相手の社会的評価を落とす方法
2・家族や友人に証拠を公開して彼らとの関係を断つ方法
3・証拠を法的に使用し、離婚訴訟を有利に進める方法
4・すべての証拠を抹消し、相手に心からの謝罪を求める方法』
美晴は考えた。
松本家の人間は、人として許されないことをした。だから自分も同じように報復をするのだ。謝罪などもう要らない。あとは彼らに地獄を見させ、子供を殺した罪を償わせること――それこそが美晴の最大の目的だ。
――1
チャットに回答を打ち込んで送信した。
さあ。ここから虐げられ妻の復讐が始まる――
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