テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
りんごの飴と君と恋の続き
あのあと本当に涼ちゃんは俺の家に来てまた練習して。
スタジオよりも狭いけど落ち着く空間で2人の音を合わせながらする練習はすごく心地よかった。
いつもと変わらない涼ちゃんはなにを思っているか分からなかったけど、彼が些細な俺の言葉に笑ってくれることが嬉しかった。
「服、貸してくれてありがと」
「ううん···えと、ここ使ってくれたら···俺ソファで寝るし···」
なんで身長はほとんど変わらないのに、俺の服をそんなにゆるっと可愛く着こなせるのか···手だって指先だけだしていわゆる萌え袖、みたいになってるし。
そんなことでドキドキして目線を向けられない俺に涼ちゃんは不思議そうにしている。
「なんで?僕がソファ借りるよ?それか一緒に寝たらいいよ、ここのベッド大きいもん」
「寝言とか、うるさいかも···」
「それはお互いさまでしょ?ほらー、寝るよ」
さっさと布団に潜って隣を開けてくれる。
自分のベッドに入るだけなのに隣にいる人のせいでひどく緊張してしまう。
そっと入れた足先が少し触れてその冷たさにびっくりする。
「涼ちゃんって、足も冷たいんだ」
「あ、ごめんっ」
当たらないようにときゅっと身体を小さくする彼の足に自分のを絡ませて、温めてあげる。
「俺あったかいの、ほら」
「···ありがとう」
可愛い、嬉しそうにする涼ちゃんが。
少しすると足も暖かくなってきて眠ったようだった。
涼ちゃんは俺のことどうおもってる?
キスくらいなんとも思ってないのか···もしかして、好意的に思ってくれてるのか、何にもわからなかった。
わかったのは、俺は彼のことを可愛いと感じて今もドキドキして、これは好きだって自覚したことだった。
次の日、またキーボードとギターを持って俺達は同じタクシーでスタジオ入りした。
朝起きたてのぼんやりしている涼ちゃんを見てやっぱり好き、なんて思いながらいっつも特に何もしてない髪をといてをくくってあげると少し恥ずかしそうに笑っていた。
なんだかそれだけで今日は昨日よりもっと頑張れそうになるから俺も単純だなって思ってしまった。
「おはよー、あれ、涼ちゃんなんかいつもと違う」
元貴が目ざとく涼ちゃんを上から下ままじまじと見つめる。
そりゃそうだ、上も下も俺の服だから。わりと最近買った服だったけど、涼ちゃんぽくはない。
「おはよう、そんなことないよ〜」
あ、これ言わないつもりなんだって思って少し2人だけの秘密みたいで嬉しくなる。
「おはよう、昨日の続きしよ。練習してきたから!」
そんな風に話題をそらしてそれ以上元貴が何か言わないようにした。
めちゃくちゃカンが鋭いから、何か気づかれてそうだけど。
練習の成果もあって今日は上手く行ったんじゃないかって嬉しくなって、涼ちゃんと2人でアイコンタクトして笑った。
仕事は順調、じゃあこの恋はどうしようか?考えても上手くいく方法なんて思い浮かばなくて、けど今日も一緒にいたいとそれだけの気持ちで涼ちゃんに声をかけた。
「あの、今日も一緒に練習しない?」
「えっ、いいの?」
仕事を理由にした誘い方しか出来ない俺に涼ちゃんは嬉しそうにしてくれる。断られなくて良かったとほっとする。
「さすがに家に1回帰ってになるけど、それからお邪魔してもいい?」
「うん、待ってる!」
嬉しくて家に帰ってからも落ち着かなくて、とりあえず今日も泊まってくれたらいいのに、なんて思ってベッドシーツを変えたり掃除したりする。
「お邪魔しまぁす」
「お疲れ様!いらっしゃいー」
涼ちゃんは白いふわふわしたセーターに着替えていて、手にはたくさん食べ物とかジュースを持って来てくれた、もちろんキーボードと一緒に。
昨日みたいに、けど昨日よりももう少し穏やかに練習をしてから休憩しようと持って来てくれたお菓子なんかを2人で食べた。
「服はちゃんと洗って返すね。それにしても元貴になんか違うって言われてびっくりしちゃった」
「ほんとにそういうとこ目ざといよな···さすがって感じ」
しばらく2人で笑って元貴のクセとかそういったことを話しして頷き合ってしまう。
こんな風に話をできるのは涼ちゃんくらいで、時間が過ぎるのはあっと言う間だった。
「今日も涼ちゃん泊まっていきなよ」
あくまでさりげなく伝えて様子を伺う。
変に思われたくないし、断りづらいとか考えさせたくもなくて他意はないように、下心なんて見えないように。
そう思って涼ちゃんを見ると困ったような顔をしていて失敗した、と思った。
「ごめんっ、ごめん!俺調子に乗ったかも、つい昨日楽しくて···ごめんね」
「···ねぇ若井、教えてほしい。あれは、あのキスはどういう意味だったの?その答えがわかんないと僕はうんって言えないよ···」
ずっと、気にしてたんだ。
余裕そうに笑って、あのあともいつも通りだったから俺はそれに甘えて···。
「ごめん、かっこ悪いことした。あの時、涼ちゃんのこと可愛くてあんなことした。それから好きって気づいて昨日も今日もドキドキして···。涼ちゃんが好き。大好きです」
「ほんとに?嘘じゃない?」
「本当、嘘じゃないよ。涼ちゃんが笑ってると幸せで、俺頑張ろうって思えるんだ」
「僕も好き···ずっと好きだった···!けど言えなくてキスが嬉しくて、でもそんなのバレたら嫌われるって思って···けど好きな人になんとも思われてないまま一緒に過ごすのが嬉しいのに辛くて···僕も若井のことが好きです」
”ずっと好きだった”その言葉に嬉しさと申し訳なさで泣きそうになる。俺は全然気づいていなかったから。
「好きでいてくれてありがとう、涼ちゃん!大好き!!」
「わかいーっ···嬉しい···」
ふにゃふにゃと泣き笑いみたいな表情の涼ちゃんを抱きしめる。
そっと唇を寄せてキスすると、ほんのりとりんごの味がした。
「甘い、涼ちゃんおいしい···」
「あ、あの飴さっきまで食べてたからだ···また買っちゃった、またキス出来たらいいのにって思って···」
「っ、可愛すぎるから!」
甘い涼ちゃんに再びキスして、そのりんごを味わって昨日よりももっとくっついて2人で眠る。
「好きな人に飴をあげるのはね、あなたを好きです、ずっと愛情が続きますようにって意味なんだって···」
頬をそっと撫でて、 そしてもう一度キスをするも、 愛しい人は目尻を下げて幸せそうに笑ってくれるのが俺も幸せで、そっと耳元で返事をした。
「じゃあ俺も涼ちゃんにプレゼントするよ···ずっと、愛情が続くように」
コメント
2件
んふふ〜🤭癒しだね♪想いが通じてよかった!

すてき♡大好きです