テラーノベル
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耳にかかる、息が、くすぐったい。
密着した熱を感じる。うっすらと目を開けると、視界はまだぼやけていた。
点滴が続いている。ぽたぽた、と音もなく身体に入って行く。夜中の間に、看護師が足したのかもしれなかった。
体温を感じた。
シングルよりは少し大きな個室のベッド。横には大好きな翔太が眠っていた。
💚「戻って来てたの」
💙「ん……」
人形館で別れた時の服装のままで、口をモゴモゴさせて、眠っていた翔太はやがて目を覚ました。頬には、白い大きなかけらがひとつ。
💙「おはよ」
💚「おはよ」
キス。
ここまで、自然な流れすぎて、違和感がなかった。意識が現実に戻って来た途端、俺は飛び起きた。
💚「えっ!!!」
💙「もうちょっと……寝ようよ…」
翔太の腕が伸びて、俺の病衣の裾を摘んだ。起き上がった拍子に、パリパリと手元に、卵の殻を破るような音がした。
ベッドの中には、顔が割れた、フランス人形が置かれていた。中は空洞だった。頭部は鼻のところが強い力で殴られたように抉られている。
💚「翔太、無事なの?」
💙「ん………ありがとね……俺を待っててくれて」
俺は翔太を強く抱きしめた。
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