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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。私はクイーンさんを連れてダンジョンへやって来て、マスターと会わせることにしました。結果は耳が痛くなるくらいの絶叫で、まだ耳がキーンとします。
あっ、ちなみにダンジョン内部に限れば私は護衛無しで自由を謳歌できます。何故なら、誰もがワイトキングであるマスターに近寄りたくないのだとか。失礼だと思いつつ、仕方ないのかなと思います。
マスターは理性的な方ですが、ワイトキングと言えば一体で都市一つを壊滅させることが出来る何て言われている最上位のアンデッドですからね。目撃されるだけで大騒ぎになる……らしいです。
「なんでワイトキングがこんなところに!?と言うかどうして貴女は平気そうにしているの!?」
「私の師ですから、恐れる理由がありません」
当たり前ですよね。クイーンさんがスゴい顔をしてますけど。
「はぁっ!?師匠!?ワイトキングが!?……嘘でしょう……?」
「生憎嘘は苦手なんです」
先程までのクールなお姉さんが崩壊していますね。まあ、こちらの方も親しみを持てますが。
「取り敢えず、お話しませんか?マスター、いつものをお願いします」
『うむ』
「ワイトキングを顎で使ってるし」
「そんなつもりはありませんよ?」
最近マスターは私が知識として提供した紅茶やコーヒー等に情熱を注いでいます。白骨だけの体でどうやって飲んでいるのか、今でも不思議ですが。
少しするとテーブルに三つの席と三つのカップが用意されました。今日は紅茶ですね。
私とマスターが席について、まだ立っているクイーンさんにマスターが、声をかけました。
『そなたも座ると良い。羽毛を持つ者よ』
羽毛?それを聞いた瞬間クイーンさんの顔が強張りました。
「……分かるの?」
『そなたの内に宿す聖なる魔力を感じれば、間違える道理はあるまい。よもやまだ生き残りが居るとは思わなんだ』
「マスター、彼女は?不思議な感覚を信じて連れてきたんですが」
やっぱり人間じゃない?
『うむ、勇敢なる少女よ。そなたの感覚は正しい。人間の呼称を用いるならば……『天使』と呼ばれる種族よ』
「天使!」
あれですか、神話に画かれたりする神に仕える羽根の生えた人!
マスターの言葉を聞いて、クイーンさんは益々警戒していますね。
「……ワイトキングに当てられるなんて、不思議な気分ね」
『そう身構えるでない。我にそなたを害する意思は無い。それに我は闘争を好まぬ。どうしてもと言うならば、相手をせねばならぬが……勇敢なる少女がヘソを曲げる』
「ぐるんぐるん曲げますよ」
マスターの宣言を聞いて、クイーンさんは諦めたように肩を竦めて椅子に座りました。
「私一人で敵う相手じゃないわ。好きにしてちょうだい」
『うむ』
「では好きにしますね。天使とは?」
「人間の神話の通りよ。神の尖兵。神に仕え、神の意思に従い神敵を討ち滅ぼすもの」
そう言うとクイーンさんは背中から真っ白な翼を出現させました。
……ふわふわで気持ち良さそう。
『魔王を討ち滅ぼすため人間と手を携えて戦い、滅ぼされたと耳にしていたが』
「ご覧のように生き残りが居たのよ。まあ、まだまだ子供だった私は何とか逃げ延びただけ」
肩を竦めながら答えるクイーンさん。
……あー。翼が気になる。
『では、そなた以外の者は?』
「この千年、同族には会ってないわ。魔力を隠して人間社会で暮らしてたからね」
ちなみにこの天使族、魔王側から見ればいきなり領地へ攻め込んできて罪の無い魔族や魔物を片っ端から虐殺した存在となる。当然記憶を持つマリアは忌み嫌っている。
「改めて、私の大切なものになってくださいね」
翼はもちろん、お胸様もボリューム満点……お近付きにならねば。
「こんな場所を見せられたら断る気力も沸かないわ。不思議な街だだものね」
「不思議?」
『うむ。そなたもここまでの道中垣間見たであろう?』
「ええ、ドワーフ、エルフ、魔女、獣人まで居たわ。しかも対立しないで共存してる。この街は理想郷なのかしら?」
「理想郷がどんなものか分かりませんが、みんな私の大切なものです。内輪揉めが起きないように頑張ってくれています」
マーサさん達、ドルマンさん達も自分のお仕事に夢中。リナさん達も仲良くしてくれています。
アスカは無関心。魔女は……ああ、サリアさんが遊びに来ていましたね。
「何でもないような感じで言ってるわよ、この娘。誰一人成し遂げられなかったのに。流石『勇者』ね」
『そなたにも分かるか』
「分かるわよ、こんなに強い光の魔力は見たことがない。『勇者』以外にはね」
「『魔石』がなければ魔法も使えないんですけどね」
汎用性はレイミ以下です。いや、普通に魔法を使える他種族の皆さんには遥かに劣ります。
「それが『勇者』の特徴なのよ」
『勇者』なんて柄でもありませんね。私は聖人じゃないので。
「それで、クイーンさん。そろそろお名前を伺いたいのですが?」
「本名なんてとっくに忘れたわ」
「なんと」
『ならば勇敢なる少女よ。そなたが名を授ければ良い』
「マスター?」
「良いわね、お願いできる?」
「いきなり大役ですね」
人の名前を決める。結構勇気が必要ですね。だってその人の今後を左右するものなんですから。
「なんでも良いわよ。なんなら『ああああ』でも」
それは酷すぎませんか?自己紹介の度に笑わせてくれる愉快な人になってしまいます。
……ふむ。
「マナミア、と言う名前はどうでしょうか?」
「マナミア、悪くない響きね。どんな意味なの?」
「特に意味はありません」
うん、決してふわふわな翼を見て飼っていたペットを思い出したわけではありません。
「受け取って頂けますか?」
「ええ、今日から私はマナミアと名乗ることにするわ。ありがとう、可愛いご主人様」
笑顔で返されました。
「ご主人様と呼ばれるのは魅力的ですが、背徳的な感じもします」
「あらそう?可愛いわね。それなら、主様と呼ばせて貰うわ。これは神様を相手に使う言葉よ?」
「私ごときが神様と同列なのは気が引けるのですが」
『傲慢の権現たる神より立派である。そも、魔王を産み出したのは神であり、制御できないと見るや人間を唆したのも神である』
マスターの見解です。
「ではマナミアさん、早速お話をしましょう」
「それより先に、私の配下達の受け入れを許可してくれる?全員人間よ」
「もちろんです。いつでも連れてきてください。大歓迎ですよ」
「それを聞いて安心したわ。それじゃあ、お話をしましょうか」
マスターの知恵をお借りする意味でも、ここで黒幕についての話をすることとしました。