テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
41
title:ある男たちの話
subtitle:映画スペシャルズ妄想小話
映画スペシャルズの続編妄想垂れ流し劇場~!!
ネタバレ込みなので気をつけてくださいね。
作者の夢と希望と願望にまみれた超作者得な小話たちです。
基本的に熊城×ダイヤ、たまに桐生。
作者は誠に遺憾ながら根が腐りきっていますのでどうしてもそーいう雰囲気が匂うかもしれませんので苦手な方は遠慮なくお戻りください。
いちおうぜんぶ繋がってはいます。
妄想なのでいろいろ好き勝手捏造してますので。
熊ダイは一応ブロマンス濃いめの仕事仲間以上恋愛未満な感じを目指してます。
熊城とダイヤの再会についての一節
(設定として、映画本編ラストの明香ちゃんからの連絡はないです。決勝銃撃戦、車内のあと、明香ちゃんはあじさい園に戻されてその後のスペシャルズのことを何も知らない、という世界線で話が進みますのでご了承ください)
冬は終わりに近づこうとしていた。新たな年を迎え数ヶ月。ダイヤは懐かしい道を歩いていた。普段のぼさついた髪型に黒縁の伊達メガネはかけておらず、真っ黒な全身にサスペンダー姿。鋭い印象を与える銀髪をオールバックになでつけ、深海のサメのような瞳をめぐらせている。そうしてダイヤは看板が立ち並ぶアジア随一の繁華街を進み、やがて古びた雑居ビルに入った。薄暗い廊下の先のエレベーターに乗り込む。相も変わらず3台の監視カメラがダイヤの姿を捉え続けていた。6階に着きマッサージ店のドアをくぐる。タイ式マッサージ「マイペンライ」の中に入ると見覚えのある外国人の女性がダイヤを出迎えた。
「いらっしゃいませ」
「………今日はいい天気ですね」
ダイヤの言葉に笑顔を消した女性が返す。
「今日はどうされますか?」
「足裏のマッサージを左足からお願いします」
言葉は今も変わっていない。
「こちらへどうぞ」
奥の個室の〈4号室〉に案内された。背後で扉が締まった瞬間、壁が動いて新たな部屋が現れる。
中央には大きな窓、その前には同じく大きなテーブル。すこし新しくなっているのを見るに近頃買い替えたのだろう。
「お入りにならないの?」
パソコンから顔をあげた女性がダイヤに声をかける。ダイヤは足を進めて女性の前に立った。
「あら、随分と久しぶりじゃない」
言葉はひどく友好的だが顔は微塵もうれしそうではない。ダイヤは黙ったまま彼女…雨宮サクラに用件だけを短く告げる。
「電話を繋いでくれ」
「どちらに?」
「風間組の熊城」
「ああ、風間組の……。そういえば、風間組、壊滅したんじゃなかったかしら」
「そうだな、………元風間組の熊城に繋いでくれ」
「ふふ、わかったわ。少し待ってて」
ダイヤは近くのソファに腰掛けた。
しばらくして雨宮がダイヤを手招きする。雨宮の片手に掲げられた端末を受け取ろうと伸ばした手を雨宮の手が掴んだ。
「………何だ」
「前の契約者のエージェントさんの組織、潰れたんですってねぇ」
名前を出さないのがわざとらしい。
「俺には関係ない」
「どうして?あなたがやったんでしょう」
ダイヤは答えない。掴まれる手に力が増す。
「わたし、感謝しているんです。ほら、その組織とわたしの組織は薄氷を踏む思いで並立してたけれど所詮お互い邪魔者ですから。だから、あなたがその相手を消してくれたおかげでわたしの組織は頂点にたつことができた」
「それは良かったな」
「ええ、だからあなた…わたしの組織に来ませんか?あの伝説の殺し屋が帰ってきたと、あなたあちこちで噂されてるの知ってます?あなたの実力ならわたしの推薦で一発でしょうし報酬も悪くないですよ」
「断る。手を離せ」
「……つれないですね」
ダイヤは端末を受け取ると壁際によって耳を傾けた。
『…もしもし』
「俺だ、熊城」
『……お前…、ダイヤか』
「ああ、そうだ」
『久しいな…で、どうしたんだ』
「あんたに聞きたいことがあって、フィリピンに飛ぶのはいつだ?」
『………2週間後だが』
「そうか、今夜顔合わせて話がしたい」
『これから商談があってな、2時間はほしい』
「なら4時間後、“始め”の場所で」
『わかった…なぁ、ダイヤ、…お嬢は元気にしてるか』
「…………………明香は元気だ、もうすぐ中学にあがる」
『そうか、よかった。じゃあまた』
熊城の別れの言葉を聞いてダイヤは手早く端末の電源を切った。いつどこで盗聴されてるか分からない。端末を返すと雨宮はすぐに中の配電盤を破壊した。これで情報は残らない。さっさと去ろうとしたダイヤを雨宮が止める。
「ねぇダイヤ、少しわたしとゲームでもしませんか?」
「…ゲーム?」
にこっと笑みを浮かべた雨宮が引き出しからリボルバーを取り出しテーブルに置いた。
「ロシアンルーレット。とっても簡単でしょう?」
「なんだ急に」
「6発のうち実弾は1発。弾が出ると思ったら適当に床に撃つ。出ないと思ったら自分のこめかみに。床に撃ったときに実弾が出なかったら負け」
「死んだら?」
「死んだらそれまでの話よ。それで、負けた方は勝った方の言うことを何でもひとつ聞くこと」
「それが狙いか」
そこまでして勝つ余裕が雨宮にはあるのか、そんなものダイヤに知る由はない。笑みを深める雨宮を端にダイヤはリボルバーを手に取ると、そのまま一切の躊躇なくこめかみに“5発”引き金を止まることなく引いた。
…弾は出なかった。すべて空発。となれば残りの1発が実弾か。ダイヤは表情一つ変えずに床に向かって撃った。鈍い銃声がこだまして、床に実弾がめり込んだ。
薄く煙を巻く銃口を一瞥し、驚愕の色で顔を染める雨宮の前にリボルバーを投げてダイヤは吐き捨てた。
「俺の勝ちだな。負けた方は勝った方の言うことを何でも聞くんだったか、……俺を勧誘するのは諦めろ、俺はもう、誰とも組まない」
颯爽と踵を返してダイヤはその場を後にした。
テーブルに転がる空のリボルバーを前に、雨宮は失笑する。ダイヤの姿はもうない。
「……狂ってる」
事実、雨宮自身も実弾がいつ出るか知らなかったのだ。それなのに、あの男はなんの迷いもなく5発を連続で撃ち抜いた。あり得ない。死ぬかもしれないのに。別にゲームに乗らなくてもよかったのだ。雨宮はただダイヤと話がしたかっただけで、ゲームはその口実というか、ほんの些細な余興にすぎなかったのに。雨宮は畏敬を感じた。彼はやっぱり、どうしようもなく、こちら側の人間だ。
ー
初めて熊城たちと顔を合わせた廃墟のダンスホールにダイヤは1人佇んでいた。再会の時刻はすぐそこにまで迫っていた。
不意に車のエンジン音が近くで響き、どたと足音が聞こえ出す。ダイヤは腰から銃を引き抜き、銃口を掲げた。入り口から人影が飛び出したと同時に引かれた引き金。弾は恐ろしいほど正確に人影の眉間を貫通した。うめき声をあげることさえなく、人影が崩れ落ちる。そのすぐ後ろに現れた新たな人影は別の銃に倒れた。背後からゆったりとした足音とともに熊城が姿を見せる。
「…風間組の残党か?」
「そうみたいだな。悪い、一匹逃した」
「いや、別に…問題ない」
「それにしてもよく躊躇なく撃ったな。俺だったらどうしたんだ」
「……車の音がしたがあんたのとこの車のエンジン音と違った。それに足音もうるさかった、だからあんたじゃないと分かってた」
「…そうか」
「松葉杖、とれたんだな」
「ん?もう走れるぞ」
「それはやめとけ」
「はは、身体がついていかねぇからな…………それで、話ってなんだ」
ダイヤは改めて熊城と向き合った。なぜか熊城はまた背が伸びたのか少しダイヤが見上げる形になる。
「熊城、……明香を引き取ってくれないか」
「…何だって?」
「明香を養子にしてフィリピンに一緒に連れて行ってほしい」
「、何言ってんだお前…」
「俺はもう明香の傍にいない。これからも傍にはいられない。でも俺が日本にいる限り、俺を調べればきっと明香にたどり着く。同じ日本にいるのは危険だ」
「……だからフィリピンに」
「そうだ。俺はもう明香を守れないから…だから、」
言い淀みながらダイヤは俯いた。無意識にぎりと奥歯をかみしめる。
「…ダイヤ、悪いが、無理だ」
「……なんで」
「そうだな。…まず聞くが、お嬢をどうやって説得するつもりだ?」
「……………」
「お嬢は頑固だからなぁ。急に俺に引き取られてフィリピン行くことになったからって素直にうなずきはしないだろうな。それに、現実的に考えればお前も分かるだろ。養子縁組の施行には2週間じゃ間に合わねぇぞ」
「………、っ」
「…だから代わりに俺から提案するが、」
「……、ぇ、?」
ダイヤは顔を上げた。熊城の顔が近づく。
「お前が俺と来い」
呆然とするダイヤの片手に熊城のメールアドレスと飛行機の情報を記したメモを握らせ熊城はダイヤに言った。
「ダイヤ、お前が自分で考えろ。自分で決めるんだ、わかったな」
ダイヤはそのまま廃墟で夜を明かした。夜が明けてしばらくたってからダイヤはようやく廃墟を後にした。
外は太陽が眩しくそこまで寒さはない。登校時間なのか小学生たちが多くにぎわっていた。そんな小学生たちをうまく避けながら行く宛もなく歩いていると、ふと向かいの歩道によく知った少女の後ろ姿がうつりダイヤは息を詰めた。
「明香ちゃーん!」
後ろから友達に名前を呼ばれ少女…明香が振り返る。ダイヤはあわてて脇道に逸れた。
ー
明香は振り返りある一点を見つめていた。
「…ダイちゃん…、?」
「明香ちゃん?どうしたの?」
「あ、ううん、なんでもないよ、行こっ」
明香はランドセルを背負い直すと踵を返した。
ーあの日、あのダンス大会の日、あの、真実を告げられたあの日。
車内に居座る彼らはみんな血に塗れていて、その場に似ても似つかない少女…明香はダイヤの胸に顔をうずめて抱き合っていた。熊城の意識はなく、桐生もシンも撃たれて満身創痍で、そして村雨はもうここにはいない。車は高速道路を走り続ける。風間組の闇医者は裏返っている可能性も否定できないため当てにできない。桐生の回し手で、彼の知り合いの医者の元を頼ることになった。その道中、ダイヤが倒れた。もともと小柄なうえにはじめに撃たれたわき腹の止血もままならず、血が流れ過ぎていたのだ。明香も途中でおろされることになった。はじめ明香はひどく嫌がった。返事をしてくれなくなったダイヤの腕を握りしめて離さず、一緒にいると泣き叫んだ。明香にとってダイヤはかけがえのない家族で、もうこれ以上家族を失いたくなかった。離れたくなかった。それでも、明香は車をおろされた。これ以上は踏み入れてはいけないと、明香は押し戻された。見えない壁に阻まれてダイヤと手が離れる。明香の記憶にこびりついて消えないのは、意識を失い力なくシンの腕の中で横たわるダイヤの姿だけだった。
その後のダイヤを、スペシャルズを明香は知らない。ダイヤは結局あじさい園に戻ってこなかった。莉子の話だと別の施設で働くことになった、と言っていたが。
………うそつき。
さみしさに涙を見せる子もいたが、明香は泣けなかった。ただ、胸が苦しかった。明香にとってダイヤが何者であるかなんてどうだってよかった。たしかに、明香にたしかな記憶はないが、明香の両親の命を奪ったのはダイヤなのかもしれない。それでも明香の命を奪わなかったのはダイヤであって、明香はダイヤに救われたのだ。ずっと傍にいてほしかった。そう言ったのに。………うそつき、
熊城とダイヤが日本からいなくなることさえ、彼女は知らない。
ー
2週間後ー○○空港にて。
ダイヤはボストンバックを片手に集合場にて熊城と合流した。
「荷物、そんだけか?」
「持っていくものそんなにないし…」
銃などの武器はもちろん別ルートである。ダイヤの所持品と言えば、衣類と衛生品、趣味の類などはほとんどない。唯一胸ポケットにあじさい園で撮った集合写真を入れているくらいだ。それぐらいしかダイヤには残っていなかった。
こうして熊城とダイヤはフィリピンへ発ったのである。
つづく。
コメント
1件
読み終えました。冒頭のロシアンルーレット、5発連続でこめかみに撃つダイヤの狂気と冷静さに息を呑みました。雨宮の「狂ってる」はまさにその通りで、でも彼がそれを選んだのは、もう誰も巻き込みたくないからなんでしょうね。ラストの熊城の「お前が俺と来い」にはぐっときました。ずっと自分を削って生きてきたダイヤが、ようやく誰かに「一緒にいよう」と言ってもらえた気がして。明香視点の「うそつき」も胸に刺さります。続きが気になりますね。