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私の勤める会社は『文映堂』という大手広告代理店。
25歳の私、森咲 恭香(もりさき きょうか)は、ここでコピーライターをしている。
まだまだ新米だけど…
同期の夏希は、アシスタントカメラマン。
こちらも駆け出し。
私が思いを寄せる嶋津 一弥(しまず かずや)先輩は、グラフィックデザイナーでありWebデザイナーも務める。
27歳で私達の2年先輩。
かなりの才能があり、みんなの先輩への信頼は厚い。
しかも、すごくイケメンだから社内にファンも多い。
広告代理店に入りたての頃には、まさかこんなにも好きになれる人が出来るなんて思いもしなかった。
私がここに入社したのは、ただひとつの夢を叶えるためだった。
モデルや俳優さん達を、自分が手がけるCMやポスターでキラキラ輝かせたいって…
そんな夢を抱いていたんだ。
かなりの大手だけに、倍率は本当にすごかったけど…
私は奇跡的に入社を勝ち取って、今はコピーライターとして、その夢を少し実現させることが出来た。
でも、やっぱりまだまだ修行中。
甘い世界じゃなかった。
辛い時も、先輩がいるから頑張ってこれたと思う。
優しくて、カッコイイ一弥先輩…
ふと見せる笑顔がすごく可愛いんだ。
いったい私、これから何を励みに生きていけばいいんだろ…
ちょっと大げさかな…
やっぱり、仕事を頑張るしかないよね。
そんなことを考えてるうちに、チームを組んでいるメンバーが続々と部屋に集まってきた。
かなり広めのミーティングルーム。
内装はずいぶんオシャレで、それぞれのテーブルとイスもあり、会議用の円卓やくつろげるソファもある。
16階のせいか、大きめの窓から十分な明かりが入ってくる。
仕事場なのに景色も良く、かなりの開放感だ。
夜になると都会のキラキラした街並みが見下ろせて、まるでデートスポットのようだ。
個々の様々なアイディアがかき立てられるような…良い仕事場だと思う。
『朝礼始めるぞ』
その部屋に集まったチームの指揮を執る上司は、アートディレクターの石川良介さん、47歳。
普通の会社で言えば、課長クラスになるのかな…
統率力はあるけど…
私はあんまり好きじゃない。
って言うか…苦手。
『おはよう。今日、午前中にクライアントとの会議がある。私と嶋津君、それから森咲さん、以上で対応する。それが済んだら全員でミーティング。よろしくお願いします』
『はい』
こんな感じで、毎日の大まかなスケジュールが決まっていく…
『すみません。遅れました』
その声と共にドアが勢いよく開いた。
入って来たのは…
え?
誰なんだろ?
この、ものすごい破壊力のイケメンは…
モデル?
CMに出る俳優さん?
いや、それならこんなところにいきなり来るわけない。
『ああ、本宮君。こちらへ来て自己紹介を』
石川さんが呼んだその人は、本宮さんって言うんだ…
うん?
本宮…?
本宮って、うちの社長と同じ苗字だけど…
『初めまして。本宮 朋也(もとみや ともや)です。27歳、カメラマン。これからお世話になります』
見た目と話し方は、どちらも落ち着いてて物静かな人…っていうイメージかな。
『本宮君は社長の息子さんだ。今までいろいろなところでカメラマンとしての技術を学んで、いよいよ我が社に戻ってこられた。まずは、今度うちのチームでやるプロジェクトに参加してもらう。本宮君、浜辺夏希さんがアシスタントカメラマンで付くのでよろしく頼んだよ』
『あ、はい!浜辺夏希です。よろしくお願いします』
急な指名に夏希は慌ててる。
いきなり社長の息子が入ってきて、アシスタントについてって言われても…びっくりするよね。
しかも…とんでもなくイケメンだし。