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「な なんですか、これは…」
白い粉めちゃくちゃ怪しすぎる!!!!
「GPSの専用アプリのURLと睡眠を補助する薬です」
「すいみんっ…!」
目がぎょろぎょろっと動いた。睡眠を補助する薬って言うけどそれ大丈夫なの…!?
「安心してください。クズ夫が死に至るようなことはありません」
言い方よ!
「ほんとに大丈夫なんですか?」
「まあ、言うなればサプリのようなものですよ。よく効きますから安心してください」
よく効くのか。もはやそれは、強力な睡眠薬ではなかろうか…。それよりお店で薬売っても大丈夫なのかな。販売許可とかいるよね。聞いてもサプリなら別に許可は要らないと認めなさそうだ。ここは敢えて流すことにした。
「クズを眠らせたらその間にGPSアプリ仕込めます。ダウンロード方法は簡単です。アプリ製作の会社にお勤めならそのくらい俺が説明しなくてもできるでしょう」
「まあ…」
「隠しアプリですから、スマートフォンのトップ画面に表示はされません。これで彼の動向をチェックしましょう。2週間も観察すればパターンがあるかどうかわかります。1か月くらいは動向を探りたいところですがね」
「とりあえずやってみます。代金はおいくらですか?」
「ふたつで5000円です」
「5000円!!??」
たっか…!
「はい」
にっこり笑う金さん。値切ってみたけど応じてくれなかった鬼。
「あと、監視カメラもいると思いますから、それも合わせたら1万円になりますね。こちらをどうぞ」
「いやちょっと待ってください!! 監視カメラって…ただのスマートウォッチじゃないですかぁっ」
「おや。知らないのですか? これは時計型監視カメラです。隠しカメラと言った方が早いですかね」
「でも5000円はちょっと高…」
「紀美さんのための特別価格で、おまけにおまけして5000円です。あなたもう残金5000円ほどしかないでしょ? 中のSDカードは特別に貸して差しあげますが、離婚成立したら返してもらいますからね。ほんとうならカード代も含めて5万円は欲しいところですが、特別に仲間価格にしました」
結局言いくるめられ、航大さんからもらったクリーニング代の1万円をもぎとられた。
「毎度あり~」
金の亡者め!!!!
そんなわけで、私のもちものが増えた。
勇者ノリミのステータス
武器:なし(家では包丁)
防具:なし(家ではおなべのふた)
その他装備品:なし
もちもの:GPSアプリURLの紙・白い粉(?)・カメラ付きスマートウォッチ
レベル:3
所持金:900円
今、包丁やおなべのふたを持っていたら、確実怪しい女だもんね。逮捕されちゃうよ。だからそれは家に置いてある。実際の戦闘で使ったらほぼ100%の勝利は確約されているが、間違いなく逮捕されて刑務所行きで人生詰む。まだ若いし、あんなクズ夫を刺して人生ゲームオーバーにはなりたくない。
さっき金さんのところで高い買い物をしたので、所持金が大幅ダウンした。昨日大吉で半額券を使って飲食して1100円利用したため、残金は900円。
「もうほとんど無一文ですよ。900円しかなくなってしまいました…」
「900円あれば2週間はしのげます」
すごいな金さん。どうやって過ごすのか気になるよ。
「節約術すごいですね」
「俺の家は驚くほど貧乏でしたからね。それこそ道端に落ちているものはなんでもお宝でした。この国は豊かなようで貧しい国です。幼少期から血を吐くような思いで生きてきた人間からすれば、まだまだ使えるものをすぐに売ったり捨てたりする愚行そのものが悪だと言えましょう」
どんな生活してきたの!?
「まあ俺の話はどうでもいいです。900円でほぼ無一文などと言ってはいけません。また必要なものがあれば、その金額以内でも商品はお売りできますから」
金さんはまだ私に物を売りつける気でいるようだ。
「ひとまず今買ったアイテムを役立ててください」
金さんに隠しカメラ付きスマートウォッチの使い方の説明を受けていると、私のスマートフォンにメッセージの通知が入ってきた。
――よかったら大吉で飲みませんか? ご馳走します。
「あ…航大さんからです。大吉で飲もう、と」
「それはいいですね。行きましょう」
金さんも立ち上がった。一緒に来る気でいる。まあ、仲間だもんね。