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ちろりーぬ
164
なーさん。です
200
森ノ宮学園体育祭
体育祭当日。竜一と隼は赤組、咲茉は白組だった。特別参加の保育ルームのメンバーは、赤組に加えてもらうことになった。
『みんな同じチームでいいなあ。私1人だけ白組…』
朝、保育ルームで子どもたちを着替えさせながら、咲茉が寂しそうに呟く。
「チームは分かれちゃってるけど、お互い頑張ろ!マーチングも応援してるよ」
『うん…、ありがとう』
「まあまあ、エマちゃん。竜ちゃん隼と俺らとはチーム違っても、そっちにはいのちゃん根津くん山羊くんがいるじゃん」
『!そうですよね』
兎田の言葉に咲茉が少し元気を取り戻す 。
「カラーガードも頑張れ〜。成功するように念を送っとくから」
兎田がぽんぽんと咲茉の頭を優しく撫でる。
『ありがとうございます、兎田さん』
咲茉も嬉しそうに頭を撫でられている。
「マーチングでのパフォーマンスが成功しても万が一失敗しちゃっても、結城さんがものすごく頑張って練習してたことは俺たちがいちばん分かってるし証人になるからね」
『うん。ありがとう』
「……つーか、結城。お前の髪巻き過ぎじゃね?気合入ってんな」
隼の言う通り、今朝の咲茉の2つに結わえられた髪は見事な縦ロールになっていた。癖っ毛なので元から少しカールしているのだが、今日は普段の比ではない。
『違うよ〜。ガードのメンバーは予めこんなふうにして来るように言われたの。後でセットしやすいようにって。コテもアイロンも使ったことどころか持ってすらいなくてすんごく困ったんだから』
「え、じゃあその巻き髪どうやって作ったの?」
すげえな〜、と言いながら兎田が咲茉の髪を見つめる。
『これ、靴下パーマなんです』
「「「靴下!?」」」
『動画で見つけて。これなら寝る前に仕込んで、寝返り打っても痛くないし、アイロンとか使うより簡単そうだと思ってやってみたら結構いい感じに仕上がって。…あ、もちろん靴下は未使用のですよ』
咲茉がその動画を見せてきた。なるほど、靴下でこんな綺麗な巻き髪が完成するのか。
「へえ〜、いいじゃんいいじゃん。可愛いよ。じゃ、エマちゃんのカラーガード、楽しみにしてるから」
『あんまり期待しないでくださいね』
綺麗な縦ロールを揺らし、咲茉が照れたように笑った。
入場行進が終わり、最初の種目は保育ルームの子どもたちによる徒競走だ。
猫に気を取られ、スタートして早々にコースアウトする拓馬と数馬。虎太郎はぽけっと突っ立っていると思ったら、声を掛けた兄のほうへまっしぐら。ちゃんと走れているのは奇凛と鷹。あと一歩のところで鷹が転んでしまい、奇凛が1等賞に輝いた。
男子100m走では隼がぶっちぎりの1位。
竜一が出場した男女の二人三脚ではペアになった雪がプレッシャーと緊張によりすっ転びまくって結局ビリに。
パン食い競争ではパンを欲しがる子どもたちに捕まってまたビリ。
綱引きでは白組の屈強な男たちに赤組は為す術もなく敗退。
棒倒しは隼の活躍により赤組が勝利した。
「竜ちゃん隼お疲れ〜。そういえばエマちゃんは技巧走に出るって言ってたね。次じゃない?」
応援席に戻ってきた竜一と隼が腰を下ろす。そこにすぐさま膝に乗ってくる子どもたち。
「なあなあ、ぎこーそってなんだ?」
鷹がたずねる。
「あー、お前らにも分かりやすいように言うと、ただ走るだけじゃなくて、なんか色々指示されたことをこなしながらゴールに向かう競争かね」
兎田が説明する。
「指令って何が書かれてるんだろうな」
「本番まで分かんねえっつってたぞ」
「おたのちみってことでしゅね!」
「そうそう」
子どもたちがわくわくした様子で出場する選手たちを見つめる。
「あ!おれおねえちゃんみっけたー!」
「へーちゃもいゆ…!」
拓馬と数馬が指を差したほうに、咲茉とA組の朋也がいた。こちらに気付いて指を差す子どもたちを見て、今日も鼻血を垂らす朋也と、いつもの光景に慣れた様子でポケットティッシュを差し出す咲茉。
第一走者がスタートした。男女でそれぞれスタートし、男子は網を潜り、二重跳びを10回、女子は平均台を渡り、フラフープを腰で10回回す。そして2人が合流してから指令の書かれた大きなサイコロを転がす。それに従って走る彼らを見ると、指令は“手繋ぎでスキップ”、“背中合わせ”、“おんぶ”、“お姫様抱っこ”、“手押し車”、“二人三脚”があるようだ。せっかく早くサイコロのところに到着しても、出てきた目の指示次第では順位が大きく変わるかもしれないのがこの競技の面白いポイントだ。
朋也と咲茉は第6走者。ピストルと共に駆け出す選手たち。朋也はひょいひょいと網を潜り抜け、軽々と二重跳びをクリア。咲茉も体幹がしっかりしているのか軽々と平均台を駆け足で渡り、フラフープを手に取る。そして難なく腰で10回回すことに成功した。
「結城さん運動苦手とか言ってたけど平均台もフラフープも上手にできてますよね」
「でも顔必死だったよ」
面白そうに笑う兎田。
2人が指令のサイコロのところに到着した。ぽーん、と高くサイコロを投げ、係の生徒が出てきた目を読み上げる。
「山羊朋也くん、結城咲茉さんペア!“お姫様抱っこ”です!」
きゃーーっ山羊くーん!!
うおおぉぉ!!結城さん!!!
エマちゃーん!!
それぞれのファンの叫び声が響く。
「わー。2人とも美男美女だから周りの反応も面白いね。…しっかし、エマちゃんはお姫様抱っこされる星のもとに生まれたのかってくらいお姫様抱っこされるよね。去年の隼でしょ、ドラマの中でも3回くらいお姫様抱っこされて、そこに加えて今のも」
兎田がケラケラ笑っている。竜一は試験期間中森ノ宮邸に泊まっていた隼が、3人で勉強している最中に眠ってしまった咲茉を抱きかかえてベッドに運んでやったのを思い出したが、それを言うと隼に怒られそうだし兎田もからかってきそうなので黙っておくことにした。
当の本人たち。出たサイコロの目を見て固まっていた咲茉を、朋也がひょいっと抱きかかえる。
『ひゃ〜っ!ごめんなさい山羊くんごめんなさい!重いのにごめんなさい!』
「全然大丈夫だよ。けど、ジタバタするよりしっかり掴まってくれたほうが抱えやすいし軽く感じるんだよ」
『!分かった…』
朋也に説得され、覚悟を決めて彼の首元にきゅっと腕をまわす咲茉。歓声や悲鳴が更に大きくなる。そのまま、朋也がゴールに向かって走った。スタートした時点では3番目だったが、指令の後は1位でゴールした2人だった。
「う!おねえちゃ、へーちゃ、いちば!」
「しゅごいでしゅ!」
大喜びの子どもたちも待つ赤組の応援席へ、2人がやって来た。しかも咲茉はまだ抱っこされたままだ。
『山羊くん!お願いだからもう下ろしてー!』
「ごめんごめん、みんなの大好きな結城さんと力を合わせて1位になれたよって報告して喜んでもらいたくて…!」
言い訳をしながらまた鼻血を垂らす朋也。竜一が慌てて朋也の顔にティッシュを押し当てる。
「朋也。もう終わったんだから結城さん離してあげろよ」
朋也の見張り役(?)の中吉が回収に来てくれた。
「結城さん、ごめんね。大丈夫?こいつの鼻血で体操服汚れてない?」
『あっ、うん、大丈夫』
ようやく下ろしてもらえた咲茉。その肩を隼がぐいっと引っ張って自分のほうに引き寄せた。
『か、狼谷くん…?』
「…ったく。結城をこいつらに近付く為の道具にしてんじゃねえよ」
「ごめんごめん。そんな怖い顔しないでよ、狼谷。結城さんもごめんね」
『ううん。1位になったのをみんなも喜んでくれたし。まあ、終わってすぐ下ろして欲しかったけど』
咲茉の言葉を聞いてから、中吉が朋也の首根っこを掴んだ。
「…ほら、行くぞ朋也」
「あ〜!まだみんなのほっぺたつついてないよ〜!」
「つつかなくていいから。怖いから」
朋也は中吉に引き摺られるようにして赤組の応援席を離れていった。
「…ねえ、中吉」
「何」
「もしかして、もしかしなくてもさ、狼谷って結城さんのこと好きなのかな」
「…まあ、さっきの様子を見た感じそうだろうな」
特進クラスのモテ男2人がそんな話をしていたことは、他の生徒は知らなかった。
昼食後、部活動紹介種目だ。マーチを演奏する吹奏楽部を先頭に、各部活ごとに並んで入場する。そして、その後吹奏楽部のマーチングが行われる。
部員がスタート位置にスタンバイする。曲の開始と共に動き出す。そこへ大きなフラッグを持ったカラーガード隊も登場。
「あっ、結城さんいた!」
一旦応援席に戻ってきた竜一と隼。スパンコールがキラキラ輝く衣装を身に纏ったカラーガード隊の中に咲茉を見つけた。朝から2つに結ばれていた髪はポニーテールにされ、靴下パーマによって縦ロールになった髪がふわふわと風になびいている。
「おっ、エマちゃんの靴下パーマいい感じになってるね。可愛い〜」
兎田も咲茉に気付いたらしい。スマホを取り出して写真を撮っている。
いよいよ咲茉が必死に練習していた箇所だ。
「!?」
「あっ、あれ!?」
その箇所で動いているのは咲茉だけだった。笑顔でフラッグを振り、高く投げて回転させ、その間にターンして、落ちてきたフラッグをキャッチして、またフラッグと一緒にターンする。
ソロで動くところもあると言っていたが、どうやら今の大技がその箇所だったしい。
見事成功させた技に、あちこちから拍手が飛んできた。咲茉も安心したようににっこり笑っている。
自分のことのように緊張していた竜一と隼は、咲茉の大技の成功でほっと胸を撫で下ろしたのだった。
吹奏楽部のマーチングが終わり、その後数種類の競技があって、最後は部活対抗リレーだ。それぞれの部の象徴を持って走る。ベビーシッター部は赤組文化部チーム。竜一と隼が弟をおんぶして走ることになっていた。
最初は遅れをとっていた赤組文化部チームだが、隼にバトンが渡ると、ものすごい勢いで走り、他の選手を次々に追い抜いていく。背中の鷹があまりにの速さに泣き出してもお構いなしだ。あっという間に2位まで来たところでアンカーの竜一にバトンタッチ。1位はまだ陸上部。竜一も背中の虎太郎を手で支えながら走り、陸上部員を追い抜いて見事1位でゴールした。
体育祭は白組の勝利で終わった。それでも一応兄として、最後はなんとか面目を保たれたので良しとしようと思う竜一だった。
つづく
コメント
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第21話、体育祭のエピソードめっちゃ楽しかったよ〜〜!!🎀✨ 咲茉ちゃんの靴下パーマにビックリしたし、技巧走でまさかのお姫様抱っこ指令で山羊くんに抱えられてる姿、キュンが止まらんかった😭💕 そしてカラーガードの大技!あの緊張感の中、ソロでキメた咲茉ちゃん本当にかっこよかった……! 最後のリレーで竜一くんと隼くんが弟おんぶして走るところ、お兄ちゃんズの絆感じて泣きそうになったよ〜。 次も楽しみにしてるね🌸