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私
の名前は、三月兎。帽子屋さんだ。
今日も私はお茶会を開いていた。
「お客さんはいないけどね!」
私は自分でそう言ってみた。いつものことだけど、やっぱり悲しい。
私が住んでいるこの屋敷には、使用人がたくさんいる。でもみんな忙しいからあまりかまってくれないし、たまに話しかけると、「ああ」「はい」とかしか言わない。……なんかこう、もっとさあ!
「おはようございます、ご主人様」とか「紅茶をお持ちしました」とか、もうちょっとバリエーションがあっても良いと思うんだけどなぁ。
でも今は、そのほうが良かったかも。だってほら、目の前にいる人なんて――。
「うーん……むにゃむにゃ」
ソファの上でぐっすり眠っていた。気持ちよさそうな顔してるなぁ。
彼女は私の友達。名前はアリス。
アリスは不思議な女の子だった。初めて会った時、こんなことを言ってきた。
『貴方は私と同じ夢を見てるわ』
意味はよく分からなかったけれど、なんだか嬉しかった。だから私は彼女に近付いていった。彼女はとても素敵な人だったから、私も彼女のようになりたいと思った。彼女と仲良くなりたいと願った。その願いはすぐに叶うことになった。私は彼女と同じものになりたいと考えた。彼女がそうしていたように髪を染めた。同じ化粧をした。流行を追いかけた。スカート丈を短くしてみた。アクセサリーを身につけるようになった。それから私は彼女と同じ格好をして歩いた。それが一番彼女を近くに感じられる方法だったからだ。もちろんそれだけじゃなくて、私自身も可愛く見られたかったっていう理由もあったけどね。私はどんどん彼女に似てきた。でもまだ全然足りていなかった。もっと似ないといけなかった。だって私が憧れているのは本物の彼女なのだから。本物にはまだまだ程遠い。きっと私は一生かかっても追いつけないだろう。それでも構わない。それでいいと思っている。本物になろうなんて思ってはいないのだから。ただ私は少しでも近付きたいだけ。そのための努力をするだけだ。努力している間は少なくとも本物になれなくても良いって思える。
だけどある日、私は気づいてしまった。私と彼女が似ているんじゃないことに。私の真似をしている子が他にもいた。みんな髪の色を変えて、髪型を少し変えていただけだった。顔立ちまでそっくりにしている子もいた。それを見た瞬間、自分の愚かさに吐き気がした。どうしてこんな簡単なことを気付かずに今まで過ごしてきたのか不思議でしょうがなかった。今すぐ逃げ出したくなった。でもそれは許されないことだった。逃げることも隠れることもできない場所で私は生きなければならない。生きるためには彼女の姿を模倣し続ける必要があった。だから私は必死になって練習した。毎日鏡を見て、目を凝らした。
そのうち段々と分かってくるようになった。この姿は本当の彼女じゃないってことが。私はいつも彼女を探しながら歩いていた。だから分かった。彼女はもういないってことが。どれだけ探しても見つからないってことが分かった。でも私は諦めることができなかった。今でもどこかにいるんじゃないかって信じていた。そして今もずっと探し続けている…………あれからどれくらい経っただろうか?私は今、とある場所に来ている。ここに来るまでに色々あったけど、今はもう気にしていない。だってあの頃の私とは違うもの。今の私がどんなことをしてるかっていうとね………………あ!ほら!また会えた!!やっぱり私の目に狂いはなかったわ!さぁ行きましょう!早くしないと日が暮れちゃうよ!今日こそはちゃんとしたお店でご飯を食べさせてあげるんだから!ふふん♪待ってなさいよねー!絶対逃さないんだからー!!! ~完~
「あなたが好きだから付き合ってください!」
「ごめんなさい」
「え?」
「あなたのことは友達としては好きですが恋愛対象として見れないんです」
「そっか……」
「本当にすいません」
「じゃあさ、俺が君を好きになる可能性もあるわけじゃん?その時は考えてくれる?」
「はい。もちろんです」
「ありがとう。それじゃあこれからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうして俺は彼女と付き合い始めた。だけど彼女の気持ちが変わることはなかった。俺はそれでもよかった。彼女が笑顔でいられるならそれでいいと思った。ただそれだけだったはずなのに……どうしてこうなったんだろうな……