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晴れ渡った、気持ちのいい朝だった。アイラ「ねぇ!セレン、私の別荘に行かない?」
セレン「別荘?え!アイラって、別荘持ってるの!」
アイラ「友達が貸してくれてね。操縦の練習も兼ねて、私たちが一番乗りよ!」
セレン「へぇ~!アイラの操縦なら安心ね」
アイラ「ふふ、任せなさい。早く行こ!」
セレン「ええ!」
空港へ向かった私達は、アイラの自家用飛行機「プロテウス号」で大空へと飛び出した。
突如として吹き荒れる、神の怒りにも似た嵐。
ガタガタガタ……!
激しい乱気流が、鉄の塊を木の葉のように翻弄する。
(点滅し、火花を散らす電気系統)
セレン「うわぁっ!何、今の揺れ……!?」
操縦士「まずい、落雷か!? 全電源が……!」
セレン「何があったの!? 前が見えないわ!」
アイラ「メイデイ、メイデイ、メイデイ! こちらプロテウス機! 全電気系統喪失、コントロール・ロス! 嵐で現在地不明、管制塔、レーダー誘導を……指示をっ!!」
アイラの叫びも虚しく、コックピットの計器はすべて沈黙し、深い闇に飲み込まれた。
私は、心臓が凍りつくのを感じた。
操縦士「危険です、何かに掴まって……! 衝撃に備え……!!」
ガタガタガタ……!
(急降下し、地表が迫る高度計の針)
セレン「いやぁぁぁぁぁ!」
――ドカァァァァァァァン!!
激しい衝撃と、引き裂かれる金属音。
私は、粉々に砕け散った機体の中で意識を失った。
……。
アイラ「……セ……セレ、セレン……!」
セレン「ア、アイ……アイラ……生きてるの……?」
アイラ「良かった、無事で……本当に……!」
アイラの夫「……セレンさん、良かったです。ご無事で」
私は、朦朧とする意識の中で見てしまった。
冷たい雨に打たれ、白い布で包まれていく操縦士の遺体を。
アイラ「……あの嵐の後、必死に操縦桿を引いたけれど、電気が丸ごと落ちて……機体はもう、私の言うことを聞いてくれなかった……」
私は、遺体の前に立ちすくむことしかできなかった。
セレン「私が……私が行きたいなんて言わなければ……あの方は死なずに済んだのに……!」
アイラが、震える私を強く抱きしめてくれる。
アイラ「違うわ、あなたのせいじゃない。あの嵐が……運命が残酷だっただけよ!」
ザァァァァァ……
降り続く雨が、すべてを洗い流そうとする。
アイラの夫「……とにかく、中へ。夕食にしましょう」
用意された食卓。けれど、私は罪悪感で一口も喉を通らない。
そんな中、アイラは懸命に振る舞い、夫婦で努めて明るく接してくれている。
すると、アイラの夫がそっと近づいてきた。
アイラの夫「セレンさん、これを」
セレン「これは……?」
アイラの夫「亡くなった操縦士が、私へのサプライズにと用意してくれていたフラワーボックスです。墜落の衝撃で、少し潰れてしまいましたが……」
セレン「……いいえ、ありがとう。……ありがとうございます」
私は、そのひしゃげた箱を、大切な宝物のように抱きしめた。
私の泣き声をかき消すように、外ではまだ嵐が吠えている。
私は、また人を救えなかった。
けれど、この潰れた花のように、誰かが私を必要としてくれているのなら。
私は、この罪を背負ってでも、生きていこうと思う。