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「…いきなり一緒に来るの?」

「当然。いいか?俺はかなり忙しい身だ。琴音を完全に確保するまで仕事が手につかないんだから、早く話をすすめたいんだよ」

はぁ…そりゃすいません…と言いつつ、再会してすぐ結婚とか同居とか言うからいけないんだ…とも思う。

響と一緒に駐車場に降りると、黒のスポーツタイプのデカイ車が停まっていた。

運転するのは響みたい…。

2人で車内に乗り込むと、ナビに入力するらしく、住所を聞かれるまま答えた。

「結構近いとこに住んでたんだな…!」

と言ってため息をつく。

それは多分、知ってて隠してた優菜ちゃんへの怒りのため息かと思われる…。

後で響に怒られるんじゃないかと…こっそり優菜ちゃんを心配した。

「大丈夫だ。優菜のことは気にするな」

考えてたことがわかったみたいに言われてギクっとする…

住所は音声で入力完了らしく、車をスムーズに発進させた響。

グイっと引っ張られるような加速をする車は、まるで響そのものみたいで…私はハンドルを握る横顔をそっと見た。

……………

「…あらっ!まぁまぁまぁ!響くんじゃないのぉ〜!大きくなったわねぇ!」

「ども。久しぶりです」

ボロいアパートの一室。

響は私の実家に驚きもせず挨拶を返し、父も弟も、響に抱きつくように再会を喜んだ。

「…響くん…めっちゃイケメン…!昔より100万倍カッコよくなってる…」

弟…大学受験を控えてるとは思えない語彙力。

「響くん、連絡をもらって…本当に助かったよ。なんて…お礼を言ったらいいか…」

父に至ってはもう泣いてる。

…ていうかもしかして、会社倒産の危機、もう手を打ってくれたってこと?

「…お礼なんて…子供の頃可愛がってもらった思い出だけで、十分です」

あれ…意外。

私との同居とか結婚とか言ってたから、それをお礼として認めさせるかと思った。

「…それに長い間…琴音を思っててくれたなんて、本当に奇跡だ」

「…じゃあ、認めてもらえますか?」

母が脇から飛んできて、私を押しのけて響の手を握った。

「認めるどころか…こっちからお願いしたいわよ!」

「…え?あのさ、なんか私を抜きに…話がすすんでる気がするんだけど?」

ここで会う前に、もうすでに三者で話し合いがされてたみたい…。

両親は私を無視して、2人して響の手を握ってる。

響は、そっと私を見て笑うから…

あぁ…響の思う通りになったんだなぁ…と思っていた。

………………

「なるべく全部持って行ってくれる?」

弟と共同で使ってた勉強部屋。

1人で使えることになって、弟ってば嬉しそう…。

「…全部なんていきなり無理っ」

仕事をするようになったら、大学費用を出してあげたいとまで思ってた優しい姉に対して…何たる態度っ!

残りの荷物は響が手配した人が運んでくれるそうで…

私は身の回りの物を持って、あのマンションに戻ることになった。

帰りの車では、響はすこぶるご機嫌だった。

「…ちょっと寄り道するぞ」

着いた先は…知ってはいるけどこれまでの人生でまったく縁のない高級ブランドのお店。

迷うことなく入っていく響に慌ててついていくと…

暖色系のライトに照らされた服やバッグ。

繊細で、飾り物にしか見えない美しい靴。

足元はダークブラウンのカーペットが敷き詰められていて、過度な装飾なんて何もないのに、圧倒的な高級感を漂わせる店内。

多分、こういうのをラグジュアリーな空間…とか言うのかも。

そんなことを思っていると、店員さんが音もなく響の前に現れ、深く頭を下げた。

「ようこそお越しくださいました。武者小路さま」

ドアの中と外では時空でも違うのかと思うほど、静かな店内。

「…あぁ。今日の客はこの子。似合いそうな服、なんかある?」

…え?ちょっと待って私?

こちらへどうぞ…と、吐息みたいな声で言われ、私もハイ…っと吐息で答える。

店員さんが私と服を見比べながら、ボルドー色のワンピースを見せてくれた。

すごく大人っぽいデザインだけど、とても綺麗な色で惹かれる…

他にもモスグリーンのゆったりめのワンピースと、何点かトップスとスカートを選んでくれた。

するとそれをじっと見ていた響が注文をつけた。

「ミニスカートも着せてやって」

「…え?そんなの着たことないんだけど?」

店員さんは黒いシンプルなミニスカートを持ってきてくれた。

試着室に連れて行かれ、早速ミニスカートから着せられる。

店員さんが選んだこれまたシンプルな白いカットソーと合わせると…

あら不思議。鏡の向こうの自分に結構似合ってる。

…ただ…膝上15センチ。

こんなに足を出すのは人生初…!

スカートを無意識に引っ張る私を、店員さんはあっという間に響のところに連れて行ってしまった。

「…おぉ?」

一言、驚いたような声をあげた響。

ニヤッと笑って…

「選んでもらった服は全部購入するから、包んでくれる?」

店員さんにも笑いかけた。

そして響は、もう一度私の姿を見ながら近づいてきて、慣れた手つきで腰のあたりに触れた。

「…どどど…どこ触ってんのよっ」

小さく抗議するも、響の甘い表情は変わらない。

なに…?ミニスカート姿の私に萌えた?

なぁんか、調子狂うなぁ…と思っていたけど…まさかこれが、始まりの合図だったなんて。

スパダリは甘くない

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