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夜。雨は降っていないのに、なぜか窓の外は静かだった。
らんは、リビングのソファでいるまと並んで座っていた。
テレビもついていない。
音がひとつもない空間で、ただ隣に誰かがいる。それだけの安心感。
🎼🌸「いるまってさ……家族とか、今、いないの?」
いるまは、目を伏せてタバコの火を落とした。
細く吐いた煙が、視界に色をつけていく。
🎼📢「……もう誰もいねぇよ。組の中で一応“家族”って呼ばれるやつらはいるけどな。
でも、血の繋がりがあるやつは、もう一人も」
しばらく沈黙があった。
けれどらんは、ゆっくり言葉を選びながら、問いを続ける。
🎼🌸「そっか……そしたら、さ。
なんで俺を、ここに閉じ込めたの?」
🎼📢「……怖かったんだと思う。お前がどっかに行っちまうのが」
🎼📢「お前、笑ってても誰にも心開いてなかったろ。俺だけが、それに気づいてた」
🎼📢「俺は――今度こそ、“気づいて終わり”じゃ嫌だった。救えなかった弟の代わりに……お前を救いたかった」
その言葉に、らんは目を見開いた。
救う、なんて。
こんな場所にいて、そんなふうに思えるなんて――。
🎼🌸「……ねえ」
🎼📢「ん」
🎼🌸「俺、ここにいるの……嫌じゃないよ。
最初は怖かったし、今も……少しは、わかんない気持ちあるけど」
🎼🌸「でも、今は……自分でここにいたいって、思ってる」
いるまが、初めて驚いたような顔をした。
黙っていた指先が、わずかに震えた。
🎼📢「……ほんとに、そう思ってんのか」
🎼🌸「……うん。いるまといると、ちゃんと人間でいられる気がする」
🎼🌸「どこにも自分の居場所なんてないって思ってたけど、
いるまが『いていい』って言ってくれたから、信じてみたくなった」
静かに、静かに、その言葉は心に沁みていった。
その時だった。
ふと、らんが手を伸ばして――いるまの頬に、指先で触れた。
びくりと体が揺れたが、拒まない。
🎼🌸「……この顔、誰かに優しくされたことなかったんでしょ」
🎼📢「……なかったな」
🎼🌸「じゃあ……今、俺がするね」
手のひらで、そっとその頬を包む。
何の色気もなくて、ただ温かくて、まっすぐな仕草だった。
だけど――いるまの胸に、今までで一番深く、強く刺さった。
🎼📢「……らん」
🎼🌸「ん」
🎼📢「お前が……誰にも渡したくない」
それはまるで、恋の告白みたいだった。
けれど、それ以上の言葉はなくて。
二人の間に流れる静寂だけが、鼓動を煽る。
そして、らんがそっと身を寄せる。
肩と肩が触れるくらいの距離。
それだけで、すごく――満たされた。
🎼🌸「……いるまの隣、落ち着く」
🎼📢「俺も。お前が横にいると、呼吸しやすくなる」
手も繋がない。キスもしない。
それなのに、こんなに心が重なるなんて、知らなかった。
たしかに、今はまだ「恋」じゃないかもしれない。
けれどもう、それは――すぐそこまで来ていた。