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龍の中のラプソディ

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龍の中のラプソディ

8 - episode8-誰にも、渡さないで-

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2025年07月26日

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夜。雨は降っていないのに、なぜか窓の外は静かだった。

らんは、リビングのソファでいるまと並んで座っていた。


テレビもついていない。

音がひとつもない空間で、ただ隣に誰かがいる。それだけの安心感。


 


🎼🌸「いるまってさ……家族とか、今、いないの?」


 


いるまは、目を伏せてタバコの火を落とした。

細く吐いた煙が、視界に色をつけていく。


🎼📢「……もう誰もいねぇよ。組の中で一応“家族”って呼ばれるやつらはいるけどな。

でも、血の繋がりがあるやつは、もう一人も」


 


しばらく沈黙があった。

けれどらんは、ゆっくり言葉を選びながら、問いを続ける。


🎼🌸「そっか……そしたら、さ。

なんで俺を、ここに閉じ込めたの?」


🎼📢「……怖かったんだと思う。お前がどっかに行っちまうのが」


🎼📢「お前、笑ってても誰にも心開いてなかったろ。俺だけが、それに気づいてた」


🎼📢「俺は――今度こそ、“気づいて終わり”じゃ嫌だった。救えなかった弟の代わりに……お前を救いたかった」


 


その言葉に、らんは目を見開いた。


救う、なんて。


こんな場所にいて、そんなふうに思えるなんて――。


 


🎼🌸「……ねえ」


🎼📢「ん」


🎼🌸「俺、ここにいるの……嫌じゃないよ。

最初は怖かったし、今も……少しは、わかんない気持ちあるけど」


🎼🌸「でも、今は……自分でここにいたいって、思ってる」


 


いるまが、初めて驚いたような顔をした。

黙っていた指先が、わずかに震えた。


🎼📢「……ほんとに、そう思ってんのか」


🎼🌸「……うん。いるまといると、ちゃんと人間でいられる気がする」


🎼🌸「どこにも自分の居場所なんてないって思ってたけど、

いるまが『いていい』って言ってくれたから、信じてみたくなった」


 


静かに、静かに、その言葉は心に沁みていった。


その時だった。


 


ふと、らんが手を伸ばして――いるまの頬に、指先で触れた。


びくりと体が揺れたが、拒まない。


🎼🌸「……この顔、誰かに優しくされたことなかったんでしょ」


🎼📢「……なかったな」


🎼🌸「じゃあ……今、俺がするね」


 


手のひらで、そっとその頬を包む。


何の色気もなくて、ただ温かくて、まっすぐな仕草だった。


だけど――いるまの胸に、今までで一番深く、強く刺さった。


 


🎼📢「……らん」


🎼🌸「ん」


🎼📢「お前が……誰にも渡したくない」


 


それはまるで、恋の告白みたいだった。


けれど、それ以上の言葉はなくて。


二人の間に流れる静寂だけが、鼓動を煽る。


 


そして、らんがそっと身を寄せる。


肩と肩が触れるくらいの距離。

それだけで、すごく――満たされた。


 


🎼🌸「……いるまの隣、落ち着く」


🎼📢「俺も。お前が横にいると、呼吸しやすくなる」


 


手も繋がない。キスもしない。

それなのに、こんなに心が重なるなんて、知らなかった。


 


たしかに、今はまだ「恋」じゃないかもしれない。

けれどもう、それは――すぐそこまで来ていた。


 


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