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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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くろぬかさん、第159話読みました! シックスと先生の訓練、すごく熱かったです…!「音のノイズ」を味方につける段階から、武器の特性まで深く考えて戦う姿に、彼女の成長がしっかり感じられました。最後の「喉元にナイフ」の場面、ゾクッとしましたね。 そして旅行パートのオフショット騒動、ギャップが可愛すぎます(笑)真剣な訓練の後の仲間たちの温かさが、この話のいいアクセントになってますね。充実した遠征だったんだなあと伝わってきました!
「これまでの経験を生かし、更には自分の得意分野に当て嵌めてみて下さい。きっとシックスなら、言葉だけでも理解出来る筈です」
いくら逃げても、彼の声は付いて来た。
走れば走る程、大袈裟に動く程……“ノイズ”が増える。
度々襲い掛かって来る彼に対しては、むしろ立ち止まって対処した方が良いのでは?
なんて思えば、今度は銃を構えて登場するので、移動を続ける他無い。
けど。
「だんだん、分かって来た」
自分が立てる音は、周囲のBGMと一緒なんだ。
聞えるのが当たり前で、決してイレギュラーじゃない。
だからこそ、感覚から除外してしまえば良い。
むしろ自分が立てる音を少なくすれば、その分他に集中しやすくなる。
凄く当たり前だけど、走り方一つでも色々と工夫出来る事が分かって来た。
ついでに言うと。
「っ!」
彼から奇襲された際、咄嗟に動いても敵が間近に居る場合。
ハンドガンとはいえ、気が付くのが少しでも遅れれば対応が間に合ってない。
つまり、近接武器の方が有利。
という事でポケットからナイフを取り出し、シャコッとナイフの刃が飛び出してから構えたが。
「……あ」
「気が付きましたか? それらポケットナイフというのは、非常に便利ですが……たったそれだけで、相手に情報を与えてしまうのですよ。だってそれ、持ち手だって金属製でしょう?」
これもまた、余分なノイズ。
でも相手が武器を持ち替えた際、ナイフを抜いて投げてくる際。
全然、音がしない気がする。
「こういう刃物は大袈裟に見えるかもしれませんが、瞬時に抜ける。余計な音を立てない、戦闘においても安定する。色々便利なので、覚えておいて損は無いですよ?」
強襲を掛けられ、今度は左手に持ったナイフで応戦しようとしたが……駄目だ、コレ。
腕は当然向こうの方が上って分かってるんだけど、“武器”の違いも出てる。
こっちは飛び出しナイフで、向こうはしっかりと固定されている一本物の刃物。
防ぐにしろ、攻撃するにしろ。
この僅かな“ガタつき”が邪魔でしかない。
ナイフはホントに緊急手段というか、音を立てたくない時にだけ使うサブウェポン。
そんな認識があったからこそ、最初に貰った物をそのまま使っていたけど。
全然違う、これじゃ駄目なんだって今は分かる。
「素晴らしいです、シックス。貴女は“ガワ”さえあれば、それに適した状態に思考が切り替わる。それは才能であり、絶対的な可能性でもあります。もっと自分に自信を持ちなさい、過信する程に自分を信じなさい。既にそのアバターには、それだけの能力が有り。貴女の思考は、それを完璧に扱うだけの能力を持っている。私が教えた“きっかけ”を6keyに適応すれば、貴方は私などすぐ越えられるのですよ」
何か物凄い事を言われているけども。
こっちとしては自分を褒める前に、目の前の事に必死な訳で。
とにかく彼の攻撃をナイフで捌きながらも、どうにかハンドガンを正面に持って来てみれば……向こうはすぐさま撤退。
もう! 早い! 行動も判断も、早すぎるよ!
「ただし少し驚くと思考が遅くなる。普通だったら“仕方ない”で済まされますが、我々には許されない。だったら、慣れましょう。慌てている自分も予定に含めながら、次の行動を思考してみましょう。大丈夫です、君は凄い。自信を持って攻め込んでみなさい。6keyなら、それが出来る筈です」
その言葉と共に、今度は真正面から攻めて来た。
え、嘘……ステルスキルが得意な筈なのに、刀を横に構えたまま突っ込んで来た。
多分コレが、今言われた“混乱”による思考の鈍化。
驚いたからって動きを止めたら、それこそ一瞬で“狩られてしまう”世界だからこそ。
「ふっ!」
「そう、それです! もっと考えなさい、もっともっと先を予測しなさい! 君ならソレが出来る! 私が保証しましょう。想像さえ出来れば、あとは身体が勝手について来る筈です!」
刀を振り抜いた相手に対して、此方は身を逸らして回避。
それと同時にハンドガンの銃口を向けたが……駄目だ、遅い。
相手の蹴りが来て、銃を逸らされる。
コレが分かったからこそ更に身を伏せ、地面に這い蹲る勢いで姿勢を落としながら身体を捻って回し蹴り。
この人ならそれさえも回避する事は予想出来るからこそ、攻撃と同時に銃を構えて――
「お見事。しかし、もう少し先を見ないと……こうなります」
「……はい、先生」
振り抜いた足払いは、予想通り空振り。
しかしそのまま銃口を上に向ければ、相手の額を銃口が捉えた。
なんだけども……此方の喉元にも、向こうのナイフの切っ先が迫っていたのだ。
刀振ったばっかりじゃん……いつナイフ抜いたの。
などと、泣き事を洩らしたくなってしまうが。
「流石は、一日で“環境の把握”の訓練を見抜いただけはありますね。これまでで一番の教え子かもしれません。体力的には、ちょっとアレでしたけど」
「ご、ごめんなさい……今度はもっと鍛えてからお邪魔します」
という事で、どちらもキルは取らずに試合終了という運びになった。
むしろ最後に銃を向けた時、喉元には既にナイフがあったのだ。
普通に続けていたら、私の負けだったのだろう。
せっかくなら最後まで、そしてもう一回試してみたかったのだが。
どうやら時間的に、この辺が限界らしく。
「もしもまた機会が頂けるのであれば、今度は格闘術を徹底的に教えてあげますからね」
「その時は、是非!」
そんな事を言いながらも、彼に助け起こされてからログアウトを済ませるのであった。
凄く、不思議な感じ。
いつも通りの6keyなんだけど、これまでよりずっとすっきりしていたというか。
見える範囲が広がった気がするのだ。
きっと彼が言っていた様に、私の“心の余裕の無さ”が視野を狭くしていたのだろう。
自身を持てっていうのは……今すぐには無理かもしれないけど。
けどいつか、そんな風に。
せめてこのアバターを使っている間は。
ちゃんと胸を張って、もう一回timelimit:10と戦ってみたいなって思えたのであった。
リアルでは多分……物凄く遠い未来になりそうだけど。
普段の私じゃ、自信持てる所とか無いので……。
◆
「「「お世話になりました!」」」
皆揃って、物凄く頭を下げていた。
駅で。
「いえいえ、こちらこそ。またいつでもいらして下さい」
「親父が元気な内に、是非遊びに来て下さいね~」
「コラッ! 縁起でも無い事言わないの! 皆、本当にフラッと旅行に来る時とか、宿代わりにしてくれて良いからね? いつでもおいで?」
佐々木さん一家、三名。
timelimit10と、その息子夫婦。
彼等は物凄く良い笑顔で、私達を見送ってくれた。
だからこそ皆揃って元気に手を振ってから、また新幹線に乗り込んだ訳だけども。
「なんか、想像してた10倍すげぇ事習って来た感じするわ……」
そんな事を、ポツリと呟くグレーさん。
更に皆も、当然私も。
行きの電車と違って、浮ついた様子は一切無し。
「うむ……やはりハンドガンマスターの道は険しいと知った。しかしその拘りこそ、貫くべき信念だと教わった気分だ。なんたって、最後のVR訓練……物凄く丁寧に教えてくれた上に、めっちゃ褒めてくれたのでな」
よ、良かったですね……出っ歯さん。
ちょっと方向性の違う感想を残している人も居るけど、でもそれぞれ真剣な表情を浮かべている。
だからこそ。
「えっと……黒沢君と、ナナさん。どうでしたか? お二人が一番、意気込んでいた様に見えたので……」
そう声を掛けてみると、二人はフッと表情を和らげてから。
「す~っごく、身になった気がする。というのと、凄く楽しかった。動画取る云々を度々忘れるくらい、夢中になってたよ」
ナナさんは物凄く柔らかい微笑を浮かべ、これまでに無い程優しいお姉さんって感じの雰囲気で。
「俺も……凄く勉強になったって気分。当たり前の事を考え直すっていうか、自分を見つめ直す機会になった気がする。焦った所で上手くいかない、その原因は自分にあるんだって教えられた……みたいな」
黒沢君の方も、満足そうな笑みを浮かべていた。
彼の発案で、皆揃ってノリで旅行に来たって雰囲気だったのに。
なんだか全員、凄く充実した顔を浮かべているんだから……今回の遠征は、大成功を収めたと言えるのだろう。
あと、何だか。
ちょっとだけ黒沢君が大人っぽく笑う様になった気がする。
落ち着いてる時のお兄ちゃんとか、9Kみたいに。
なので少しだけ顔が熱くなりながらも、私も微笑で返したのだが。
「そ れ に~……シロちゃんのオフショットも撮れたし? 意外と寝相悪い……訳じゃないんだけど。丸くなったり、くっ付いて来たりするんだね? 隣の布団から手を差し込んでみたら、そのままこっちに移動して来たよ?」
「ブッ! な、何を!? そんな事ある訳無いじゃないですか! 子供じゃあるまいし!」
「ホレ、証拠」
差し出されるスマホに映っていたのは、ふにゃ~って笑うナナさんの胸に抱かれたまま、物凄く爆睡している私の姿。
わ、わぁぁぁぁ!
「見たい! 超見たい! 二人のオフショット!」
「男子として……これは抗えぬ!」
「ちょっ! こらこらこら! 駄目だって二人共!」
思いっ切りスマホの画面を覗き込もうとする男子二人と、それを止める黒沢君。
ナナさんはキャッキャと笑いながら、スマホを隠してしまったけど。
最後の最後で、どうしてこう恥ずかしい思い出を増やしてくれるのか。
やっぱりナナさんは、ちょっと意地悪なお姉さんだ。