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#独占欲
#ダークファンタジー
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営業職である夫純也が
出張先で顔を合わせる取引先側の窓口は
——購買部だ
純也の会社とうちの会社に取引があった場合
購買部の鈴木さんと
純也との接点が生まれる可能性は
十二分にあり得る
伊藤さんの噂話
ひょんなことから
夫の浮気相手が鈴木さんである整合性が
まるでパズルの様に
嚙み合ってしまった
今更ながら
そういう事だったのかもと
腑に落ちてしまい
唖然としてしまう
その結論に辿り着けなかったのは
自身の会社組織の理解度の低さと
社会性の無知さが原因だ
会社の機能的な仕組みを
私は十分に理解しきれていなかった
それがこの見落としを招いた
社会と会社という盤上が正しく理解出来ていれば
疑念を抱いていた同僚の同期女子が
出張へ出向かずとも
逆に相手側が
出張で来るケースも考えられたはずだ
ましてや純也は営業職
他社への出張は頻繁にあるだろうし
鈴木さんは購買部だ
他社からの出張者と頻繁に会うだろう
そして
その鈴木さんの属する購買部は
今まさに
——不正疑惑の渦中にある
何と皮肉な話だろう……
「——さん、水川さん!」
「……え?」
「話聞いてましたか?」
個人的重大事項
夫の浮気
その浮気相手と目される鈴木さん
その二人の
接点の
辻褄が
偶然にも合致してしまった
そのあまりの衝撃に
いや
いつもの事かもしれない
私は
気付けばまた自分の殻に籠り
ボーっとしてしまっていた
「う、うん。聞いてるよ!」
「どうかしましたか?顔色悪いですよ?」
「ここのところ体調良くなさそうですし、無理せず体労わって下さいね」
「あと、この事はくれぐれもまだ内密にお願いします」
「うん、わかった……ありがとね」
体調を気遣ってくれる優しい伊藤さん
心配はありがたい
しかし
もう一方の心配は不要
内密も何も
私には内緒話をする相手すら社内にはいないのだから
***
営業本部と連携して仕事を進める
営業戦略室の定型化された仕事の一つは
競合他社の
市場調査や動向調査
定期的に数値を追い
最新情報に更新する
タイムリーにリュカ含め関連メンバーへ展開し
一元化されたクラウドのデータベースへ保存する
個人間でメールを送付し合っていた頃に比べると
とても効率的になった
必要な情報は
一元化されたクラウドのデータベースに蓄積され
持ち主に依頼せずとも
自身に与えられた権限内で
アクセス可能なフォルダであれば
タイムリーに確認も取得も出来る
私は
気になって覗いてしまった
購買部の取引先情報
それは
私にもアクセス可能な一般的な情報
購買部のフォルダを開き
ツリーの階層を下る
いくつもの階層を下った先にあった
取引先情報一覧
そこには
四半期毎に更新された取引先企業の一覧が
日時のサフィックス付きで並んでいた
恐る恐る
その中の
最新日時のファイルを開く
中には大量の企業名
ソートから
特定の企業に限定し
名前順に並べ替える
そこには
夫純也の務める会社名があった——
「……」
確定的な事実
だからといって
今更どうなる事でもない
98%の疑念が99%になっただけ
至って心は凪
純也の浮気で心乱れる事もなく
疑念が確信に近づいただけ
それは
夫婦間の感情や
男女間の感情というよりも
達成感に近い感情だった
ピコ♪
伊藤さんからの社内メールが届く
すぐ近くにいるのに
こちらを振り向きもせず
送って来たメールは例の噂話の件
女子は本当にこの手の噂話が好きだ
こと、この話題に関しては
私にとっても他人事ではない
タイムリーに共有してくれる伊藤さんには
感謝しかない
ことの進捗を知らせるそのメールの内容は
不正疑惑の調査中だった事案の
進捗情報
不正の発覚についてだった