超フライングハロウィン特別企画!!
(のボツ案です)
タンさんオンリーです。
お題【三千世界の鴉を殺し】
サブタイトル《離れるくらいなら、夜が永遠に明けなくていい。》
ネクロマンサーって不死身だと夢がありますよね。
この話で出てくるムスカリという花について捏造をしています。
本物の花は咲くのに数十年もかかりません。
物凄く謎。
めっちゃ長い。
感動系を目指したけど、感動系にはできなかったゴミです。
ほんのり死ネタ注意
タンさん視点!
三千世界の鴉を殺し、______。
私は夜が好きだ。
静かで、凪いでいて、月明かり一つ無い夜が。
こんな夜には、生者と死者の境目が曖昧になるから。
死者が闇に紛れて、遊びにやってくる。
私はこの夜が嬉しくて、待ち遠しくて、少しだけ悲しい。
こんな夜にしか、もう彼等には会えないのだから。
人気のない森の奥、死者が寄りつくこの場所で、私は今日も彼らと話す。
『めめさん?めめさん!』
『何ボーッとしてんですか?おねむなんですか?年ですね〜』
『いや〜、まだまだ現役だろ』
『メテヲもまだ現役だと思うよ!』
『めめさんはいつまでも綺麗なままですよね!羨ましいです〜』
『わたすも凄く綺麗だと思います!』
「あはは、ありがとうございます」
目の前で騒ぐ、懐かしい死者達を見ていると少しばかり感傷に浸ってしまう。
懐かしいな。
なんだか彼らが死者だなんて、数十年経った今でも信じられない。
ちゃんと皆んなを見送ったはずなのに。
これは夢で、目が覚めたらいつも通り皆んなが笑っていて、一緒にゲームをする。
愚かにも、そんな夢物語を懇願してしまう。
そんな事をしてしまうのは、あの日々が幸せすぎたからだろうか。
___めめ村として、活動した日々が。
『…?めめさん、何で泣いてるんですか?』
『ししょー!泣かないでください!』
あぁ、いけない。
涙なんて、ここ数十年流さなかったはずなのに。なんで今、流れるのだろう。
月に二、三回あるかないかの再会の時間を、一秒たりとも無駄にはできないのに。
涙が溢れて、止まらない。
「うっ、ぁああぁあぁっ……」
『えっ!?ちょ、ガチ泣きですか!?!?』
『ガンマスさんうるさいですよ。めめさん、大丈夫ですか?』
『ンマッ……』
『あわわわ……泣かないでください…』
『ぽれ、何かやっちゃいましたか!?』
『めめさん、大丈夫ですか?』
「うっ……うぁぁあ…」
あぁ、何て暖かいんだろう。
死者とは思えないほど、暖かくて優しさに満ちている。
ずっと、ここにいたい。
ずっとずっと、ここで笑っていたい。
昔の私も、そう願っていた。
ただひたすらに、一人の人として笑って。
何気ない普通の生活を送って。
不死のネクロマンサーである事も忘れて。
私が何故、メメント・モリの名前を頂いているかも忘れて。
____めめ村での日々が、永遠になる事を。
でも、その願いを叶えてくれるほど、世界は優しくも、慈悲を見せる事もなかった。
一人、また一人と、仲間達は私を置いて、先に彼方の方へ逝ってしまった。
悠久の刻を生きるネクロマンサーの私にとっては、死は最も身近で、最も彼方のものだった。
そして、最後の一人が旅立った時。
終わりのない絶望が始まったのだ。
永遠の孤独の果て。
日常の隅に、皆んなの事を思い出してしまう。
それでも、僅かな救いはあった。
それが、境界が曖昧になる夜にだけ、死者となった皆んなに会える事だった。
私はこの事を知った時、死者に干渉できるネクロマンサーである事を心から感謝した。
でも、朝が来れば皆んな黄泉の世界へと戻ってしまう。
だから、皆んなと居る時間は一秒たりとも無駄にはできないのに。
沢山楽しい事を話して、笑っていたいのに。
なんで、涙は止まらないんだろう。
「うぅっ…ぁああ…」
止まらない嗚咽と涙に苦しんでいた時。
『めめさん』
ふと、声をかけられた。
『置いていって、ごめんなさい』
申し訳なさそうに、ぐさおさんが話す。
貴女は可愛らしいから、笑顔が似合うのに。
そんな顔は、しないで欲しい。
『なるべく長生きしてみたんですけど…やっぱりダメみたいでしたね…』
あはは、と苦笑いをするiemonさんがいる。
貴方はそんな笑い方は似合わない。
いつもみたいに、明るく笑って欲しい。
『でも、何も残さずにこの世を去ったわけじゃないですよ!』
小さな体で懸命に叫ぶレイラーさん。
貴女はいつも、私の後ろをついて来てくれた。
それが何よりも嬉しくて、自慢の弟子だった。
『そんな事も気づいてなかったんですか?馬鹿がよ!』
涙ぐんでキツめの言葉をかけるLatteさん。
貴女はいつも意地っ張りで、我儘だった。
でも誰よりも仲間思いなのを、私は知っていた。
『今は優しい言葉をかけてやる時だろ、能無し放火魔』
小馬鹿にする言い方でLatteさんを嗜める、ウパパロンさん。
お調子者で、後先を考えない貴方だけど。
以外と周りに気を遣ってた事を、皆んな気づいていた。
『まぁまぁ、なんだか私達らしくて良いじゃないですか』
ちょっと喧嘩ムードだった空気を中和したのは、みぞれさん。
いつも周りから無茶振りされて、困っていた貴女だけど。
それ以上に、真面目な性格が皆んなから好かれていた。
『いいのか……いや?いいのか?』
何か引っかかるようで、悶々と考え込んでいるルカさん。
何か、色々問題のある行動が多かったけど。
妹と仲間思いの優しい人なのは、皆んなが知っていた。
『ルカ兄も細かいとこは気にしなーい』
そう言って太陽のように笑うのは、ヒナちゃん。
明るくて、所々ぶっ飛んでて、お兄ちゃんっ子で。
誰よりも周りの空気を明るくできる、ムードメーカーだった、優しい子。
『ンマッ!ンマ!』
未だに理解の及ばない言語で慰めてくれるのは、八幡宮さん。
いつも狂った言動が多くて、理解不能だったけど。
それがとても面白くて、もっと見ていたかった。
『そうですよ!!!』
鼓膜を震わす大声で同調したのは、ガンマスさん。
サボってばっかりで、音割れはうるさいし、どうしようもなかったけれども。
こういう時は、真っ直ぐな思いをぶつけられる人だった事は、理解してるつもりだ。
『ぽれは…皆んなより早くに向こうに行っちゃって…ごめんなさいっ!』
大声で泣きながら謝るのは、ぜんこぱすさん。
熊なんだから、人より短い寿命なのは仕方ない事のに。
それを馬鹿正直に泣いて謝る、そんな貴方だから皆んなに愛されてた。
『メテヲも、ごめんね…置いていきたくなかったんだけど……』
辛そうな顔でそう呟くのは、メテヲさん。
いつも勝ち気な貴方が、そんな風に殊勝な態度を取るのは、似合わない。
私の事を馬鹿にしても良いから、いつもみたいに笑って欲しい。
『いや、皆んなめめさんに謝るんじゃなくて、私たちが残したものについて話そうよ!』
そう言ったのは、Sレイマリさん。
貴方は遅刻癖があって、悪ふざけをしがちだったけど。
そんな貴方が太陽のように周りを照らしていた事を、誰もが知っていて、感謝していた。
『わたすもそう思います!』
体を震わせて、声を上げたのは茶子さん。
この中では一番新しいメンバーだった彼女。
皆んなを尊敬していて、誰よりも真っ直ぐで一生懸命な人だった。
「残した物、ですか……?」
ぽつりと溢した声はとても寂しげで、迷子の子供のようだった。
「私に、何を残したんですか…?」
嗚咽を止め、震える声で問いかける。
彼らは一体、何を私に残したのだろう。
『それはですね〜!』
『めめさん、貴女の足元ですよ!』
足元が何だというのだろう。
そう思って、視線を向けると
「……わぁ…!」
この辺り一面に、青い青いムスカリが咲き誇っていた。
月明かりの無い暗闇でも青だと分かるほど、それは美しく色付いていた。
『も〜本当に疲れたんですよ。これ植えるの』
『この辺り一体に植えまくりましたからね…』
『まぁまぁ、めめさんが喜んでるんですからいいじゃないですか』
『でも漸く咲きましたね、この花』
『俺らが生きてる頃から植えたのに、全然咲かなかったからな〜』
『今日やっと咲いたのに、めめさん全然気づいてなかったですねw』
目の前で楽しそうに皆んながはしゃぐ。
「いや、気付きませんって…」
だって、皆んなと沢山一緒に居たいから、足元なんて気にしてる余裕がなかった。
こんなに綺麗な花に気づかないほど、私は周りが見えなくなっていたのだろうか。
「でも、この花……とても、綺麗ですね」
『そうでしょ!?いや〜頑張った甲斐がありましたよ〜』
『実はこれ、私達がまだめめ村をやってた頃に、めめさんのために植えたんですよ!』
『そうそう!この花、咲くのに数十年かかるから、私達が死んだ後でもめめさんが見れると思って!』
『俺達で、想いを込めて植えたんですよ』
「そう、だったんですね…」
私のために、ここまで…。
足元に咲くムスカリを見つめると、僅かに想いが伝わってきた。
〝めめさんに、何十年後も笑っていて欲しい〟
そんな、ただひたすらに暖かな想いが。
『あぁ、今日はもう、お別れですね』
「え?…あ」
言われて、空を見上げると、暗闇に覆われていた空の端がほんのりと色づき始めていた。
カアカアと喧しい鳴き声で、鴉が鳴く。
皆んなの半透明な輪郭が、朝靄に溶けて消えていく。
あぁ、嫌だ、嫌だ!
行かないで!私を置いて行かないで!
「待って!!」
焦燥に駆られて叫んだ言葉は、白く色付いた空を切り裂くだけだった。
『めめさん。笑って』
誰かの声だけど、誰のものでもない声が聞こえてきた。
その言葉を受けて、私は笑った。
あの日のような、微笑みを。
もう見えなくなった、大切な村民に向けて。
___カアカアカア。
明るく染まった空を、鴉が舞う。
ムスカリの蒼い海に溺れながら、想いを受け取った私は、泣いていた。
その涙には、冷たい寂しさに混ざって、暖かい思いやりも確かに存在していた。
_____三千世界の鴉を殺し、貴方達と共に永久の明けることの無い夜を過ごそうか。
コメント
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これちゃんと感動系だよ…
(இωஇ`。)ナキマシタ