1000万サルド⁈あいつ…いやアグニスはいったいなんなんだ⁈何者なんだ⁈一見普通に騎士育成所から逃げて来た劣進病のやつかと思ったら1000万⁈
おれはとても信じられないような事実を知り、思わずメリアと話しているアグニスの耳元で
「おい、一体お前は何者なんだ?アグニス。あの掲示板の1000万って…」
と俺が問いかけると、アグニスは血相を変えて俺の腕を引っ張り
「…ちょっとこっち来て。 メリアちゃん!ちょっとそこで待ってて」
とマリアの方を向いて笑顔で言った。するとメリアは少し戸惑い気味で
「え、ええ。わかったわ」
アグニスは俺の腕を力強く引っ張りながら路地裏に連れて行き
俺を壁に追い詰め俯きいつもより少し低めの声で
「俺のこと…そんなに知りたい?」
と俺に聞いて来た。いつもと違う様子に驚きながらも、俺はすぐさまコクコクと頷く
するとアグニスは顔をあげ、少し困ったような顔で
「そっかぁ。そっか…」
少し声が震えている。
「まぁ.いつか教えるつもりだったしね。僕、人の未来が見えるんだ。」
「え。」
アグニスは驚いている俺を気にもせず話を続けた。
「僕、騎士育成所から逃げて来たって言ったじゃん?あれ嘘なんだぁ。」
アグニスは吐き捨てるように言った。
僕は恐る恐るアグニスに
「え…じゃあどこから?」
少し間をおいて、アグニスは儚げな声で話し始めた。
「僕、くらぁいくらぁい地下に閉じ込められてたんだ。そこで毎日毎日この王国の未来を聞かれた。でも、僕が得意なのは人の未来を見る事で、抽象的な「王国の未来」ってのは意図して見ることはできないんだ。そのことを伝えても嘘をつくなと言われ、信じてもらえず、喋らないならと拷問をされた。ね?可哀想でしょ僕。」
「……」
俺は何も答えられずにいた。俺たちの前ではあんなにも明るかった奴が、本当はこんな最悪な過去を持っていた事に驚愕したからだ。
俺が黙りこくっていると、アグニスは自虐気味に話し始めた
「王国は手放したくないんだよ僕を。こんな未来を見れるやつが他国の手に渡ってしまったら、それこそお終いだからね。まぁこんなにも必死なのは僕が一度未来を見て話しちゃったからなんだけどね。偶然見えたんだよね〜未来。」
「……」
静寂なこの空気に耐えかねたのか、アグニスが
「……暗い話おしまい!ねぇもう戻ろ?メリアが待ってるよ。」
アグニスはわかりやすい作り笑顔で俺に手を差し伸べた。俺はその笑顔に気づかないフリをして、差し伸べられた手を握った。
「…そうだな。」
メリアがいた広場に戻る。すると、メリアが1人の男に押さえつけられていた。
俺達はすぐに駆け寄り
「メリア!」
と俺が叫ぶとメリアは俺に気づき泣きそうな顔で
「兄さん!」
するとその声で男は気づき
「お、やっぱこの女指名手配犯の仲間だったんだな。」
男は俺の隣にいるアグナスに気付き
「お。アグニスくんもい るじゃーん?」
と男が言うと
アグニスは怒りを混ぜた笑顔で
「その子を離してくれないかな?カイ」
カイ?アグニスはこのカイとやらと知り合いなのだろうか。
「誰が呼び捨てしていいっていったのかなっ⁈」
と言いながらカイはメリアの腹を蹴る
「ぅぐっ⁈」
メリアは地面にうずくまり痛みに悶えている
カイは地面にうずくまるメリアの髪を引っ張り無理やり立たせ
「アグニスくぅん。この子…そんなに大事?」
俺は耐えられず
「お前、俺の妹を!」
と俺が剣を抜こうとした瞬間アグニスが俺を手で制止する。
「フレーク。君はカイに勝てない。」
俺はアグニスの言葉にまるで俺は妹を助けることもできない、弱いやつと言われているようで怒りを感じ、
「何でだよ!」
と俺はアグニスに強く言ってしまった。
「よく考えてみろ。未来が見える僕でも太刀打ちできなかったメリアが何もできていない。銃を抜く前にカイに見つかり捕まっている。…だから、ここは俺がどうにかする。」
アグニスには何か策があるようだ。俺は何もできない自分に腹を立てながら、大人しくアグニスの言うことを聴くことにした。
「なぁ、アグニスくん〜。ちょっと取引しない?俺ぇ別に他2人はいらないんだよねぇ。アグニスくんだけ手に入れれば良いの。だからさ、この子達返して指名手配書消してあげるから。あのくらぁいくらぁい地下室に俺と一緒に戻ろ?ね?もし、もしもぉ、この取り引き呑まなかったらぁ」
とカイはメリアの頭に銃を突きつけた。
「バンッ!だよ?」
何だこいつ!メリアを人質にするとは!くそっ!俺はアグニスに必死に
「だめだ!呑むな!何かもっといい考えが」
と俺が言い終わらないうちにアグニスはまっすぐカイを見て
「わかった。呑もう」
え…嘘だろそんな。まさか呑むとは思わなかった。予想外だ。
アグニスの返答を聞き、カイは狂気に満ちた笑顔で
「そうこなくちゃなあ?」
と言い、メリアをこちらに投げ飛ばした。
それと同時にアグニスの手首には俺たちには見えないような速度でもう手錠がかけられていた。人間業じゃない…!
俺はすぐに無造作に投げ飛ばされたメリアに駆け寄った。
カイに連れて行かれようとした際に、アグニスは
「ありがとう。楽しかった。またいつか会えるといいね。メリアちゃん。僕は…本当に、本気で君のことを愛してたよ。ごめん。」
と言った後メリアは泣き崩れ、
「何で…なんで謝るのよぉ…」
メリアは号泣している。
アグニスは後ろを向いたまま少し涙声で
「本当に…ごめんね…」
俺は耐えきれず
「っ…絶対!助けに行く…!だからっそれまでっ!」
俺が言いかけた時アグニスは食い気味で
「来るなっ!」
俺はアグニスの聞いたこともないような大声に驚きつつ戸惑った。
「もう…俺のことは助けに来るんじゃ無い。じゃぁな。フレーク。メリア。」
と言ったあとアグニスは連れて行かれた。
俺は悔やんだ。そして絶望した。自分の弱さと、敵の強さに。
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