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第15話【暴露された正体と、神魔の胎動】
人間界と魔界の不可侵条約、2日目の会議。
昨日と同じ黒曜石の会議室は、開始早々、異様な雰囲気に包まれていた。
円卓の最上席に座る魔皇帝アイラナの身体から、隠しきれないほどの凄まじい魔力が、陽炎のように立ち上っていたからだ。
それは禍々しい暗黒の魔力でありながら、同時にぞっとするほど清らかな、神聖な光を帯びている。
(くっ、……あ、……、ダメ、だ……抑えきれない……っ)
アイラナは机の下で、自身のまだ平らなお腹を愛おしそうに、そして必死に押さえていた。
一晩中レミエルに甘やかされ、純度の高すぎる神聖魔力を注がれ続けた結果、体内で成形され始めた「新しい命」。
その赤ちゃんの持つポテンシャルが規格外すぎて、2日目の会議が始まった途端に胎動(魔力の収縮)を起こし、アイラナのポーカーフェイスを完全に破壊していた。
「陛下……? お顔色が優れませんが、もしやその悍ましくも清らかな魔力は一体……」
魔界の宿老たちが、ざわざわと騒ぎ始める。
人間界の特使たちも、アイラナから放たれる圧倒的な神魔の覇気に恐怖してガタガタと震えていた。
そんな中、斜め向かいに座るアーモンド(レミエル)だけは、すべてを察して、薄紫色の瞳の流し目をひどく愉しげに細めていた。
(がんばれ、アイラナちゃん。……でも、もう限界みたいだね?)
その、どこまでも余裕でドSな視線が、限界を迎えていたアイラナの最後の導火線に火をつけた。
これ以上、この世界を滅ぼしかねない超魔力の理由を隠し通すことなど不可能。ならば――。
バンッッ!!!
と、アイラナは激しく円卓を叩いて立ち上がった。
そのレッドダイヤモンドの瞳は、羞恥で真っ赤になりながらも、魔皇帝としての凄まじい覚悟の光を宿している。
「静粛にせよ、我が臣下たちよ! ……隠し通すことは不可能ゆえ、ここに真実を告げる!」
アイラナは真っ直ぐに指先を突きつけた。その先にあるのは、にこにことアーモンドをお口に放り込もうとしていた、ミラディア帝国の若き王。
「私の体内で今、新たな命が、凄まじい超魔力とともに育まれている! ……そして、その父親は、そこに座る人間界の王だ!!」
一瞬の静寂が訪れ…
『な、……なんだとぉぉぉぉーーーーっ!?!?』
会議室がひっくり返るほどの衝撃が走る。
魔族の臣下たちは目を剥き、
「あの人間の若造が、我が清らかな皇帝陛下を……っ!?」
と一斉に殺気立ち、武器に手をかけようとした。
「動くな、愚か者ども!! 命が惜しくば、その男に指一本触れるな!!」
アイラナの怒号が響き渡る。
怒りと羞恥を綯い交ぜにしながら、アイラナは全魔族を震撼させる真実を叫んだ。
「その男の正体は、人間などではない! 1000年前の天魔大戦において、最高神の背後に控え、傷の回復にのみ専念していた天界最強の大天使――レミエルその人だ!!」
ピキリ、と会議室の空気が完全に凍りついた。魔族の宿老たちの顔から、一瞬で血の気が引いていく。
「な、……あの、不戦の大天使……!? だが奴は、大戦時は一歩も前線に出ず、ただ最高神を癒やすだけの置物だったはず……っ」
「置物だと? 貴様ら、何もわかっていないな」
怯える宿老を、アイラナは冷徹な眼差しで見下ろした。
「奴が戦わなかったのではない。天界最強であるレミエルが一度でも動けば、我が魔族は一兵残らず『全滅』してしまう。
ゆえに――最高神ゼウスから直々に
『お前は絶対に戦うな』
と厳命され、縛られていただけだ!!」
「な……っ!?!? 全、全滅……っ」
あまりの次元の違う事実に、魔族たちは完全に戦意を喪失し、言葉を失った。
自分たちが生き残れたのは、最高神がレミエルに課した「枷」のおかげだったのだと、1000年越しに突きつけられたのだ。
「その天界最強の男が、私の夫であり、我が子の父親だ! 異論のある者は、今すぐその枷の外れた男を相手にしてみせるがよい!」
緊迫と静寂が支配する会議室の中。
正体を暴露されたレミエルは、焦るどころか、くすくすと低く愉しげに笑った。
そして、口元に添えていたアーモンドをパチンと指先で弾くと、薄紫色の瞳を妖しく輝かせ、魔族たちを冷徹に見下ろした。
「あはは、アイラナちゃんにそこまでバラされちゃったら、もう大人しくしてる意味もないよね。……そう、あのハゲジジイ(ゼウス)に
『世界のバランスが壊れるから見てるだけにしろ』
って言われて退屈してたんだ。
でも、今はもう天界の命令なんて関係ない」
ゾクッ!!!と、会議室全体に物理的な風圧を伴うほどの神聖魔力が吹き荒れる。
背後に揺らめく、幻影のような漆黒の十二枚の羽。
「さあ、僕の可愛い奥さんと、まだ見ぬ我が子を侮辱しようとした不届き者は誰かな?神ゼウスの命令(枷)がない僕が、今度こそ直々に、君たちを塵に還してあげてもいいんだよ?」
さっきまで武器を抜こうとしていた魔族たちは、その底知れない覇気に圧倒され、ただガタガタと震えて平伏するしかなかった。
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ぽんぽんず