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最終話です!
よろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
キヨが居なくなって静かになった部屋に レトルトは ぽつんと立ち尽くしたまま 動けずにいました。
泣きながら 「好きだ」と叫んだキヨの姿が脳裏に焼き付いて鼓動が煩く鳴り響きます。
『……キヨくんも……俺の事、好き…?』
まだ 信じられない。
でも――
「初めて見た時から、ずっと好きだったのに」
キヨが泣きながら言った言葉。
『……最初に会った時……?』
レトルトは あの日の夜ことを思い出そうとしました。
麦畑で倒れていた夜。
夢から覚めて。
知らない天井。
知らない家。
そして――
視界いっぱいに映った ひとりの少年。
「おーい、大丈夫か?」
太陽みたいな笑顔。
でも――
そこから先が ぼんやりとしている。
あの頃のレトルトは ほとんど心を失っていました。
自分の意思も 感情も 何もない 人形みたいだった。
ぼんやりとした記憶しかなくて。
思い出そうとすればするほど 霧がかかったみたいに 霞んでいく。
『……っ……』
レトルトは ぎゅっと胸元を掴みました。
苦しい。
思い出したいのに、 思い出せない。
キヨくんが どんな顔で笑ってたのか。
どんな顔で 俺を見てたのか。
思い出したいのに….。
そして――
キヨがいないこの部屋は こんなにも静かで。
こんなにも、 寂しい。
『……キヨくん……』
レトルトは、 はっと顔を上げました。
(行かなきゃ!! このままじゃだめだ!!)
自分の気持ちを伝える為に レトルトは 勢いよく家を飛び出しました。
庭を抜けて。
小道を抜けて。
ざわざわと揺れる 小麦畑をかき分けて――
ただ、 ひたすら走りました。
息が切れても
足がもつれそうになっても
止まれない
止まりたくない
そして――
小麦畑の、その先。
小麦畑を一望できる 小さな丘。
背中を向けて ぽつんと座るキヨ。
遠くからでも分かるほどキヨの背中は寂しそうで悲しそうでした。
レトルトの胸が ぎゅっと痛みました。
『……キヨくん……』
レトルトはキヨの背中に向かって 全力で走って行きました。
丘を駆け上がって――
レトルトは 後ろからキヨを力一杯抱きしめました。
離さないように。
逃がさないように。
「……っ!?」
突然のぬくもりに キヨの肩がびくっと揺れます。
けれどレトルトは そのまま強く抱きしめ続けました。
胸が苦しい。
息も苦しい。
でも――
ちゃんと 伝えなきゃ。
レトルトは 震える声で言いました。
『……俺……』
『……キヨくんが、大好きだよ』
キヨの瞳が 大きく揺れました。
『……キヨくんに、恋してる……!』
荒い息を整えながら涙混じりの声で 必死に続けます。
『ずっと……』
『ずっと、恋してたんだ……!』
その言葉に――
キヨは、 勢いよく振り返りました。
驚いているような、今にも泣き出しそうな 信じられない、 という顔。
そんな姿を見て レトルトは そっとキヨの頬に手を添えて 唇を 重ねました。
ちゅ――
優しくて、 震えるようなキス。
キヨは一瞬、 目を見開きました。
けれど――
すぐに その瞳を細めて、 受け入れるように そっと目を閉じたのでした。
唇を少し離してゆっくり目を開けると
太陽に照らされて きらきらと光るキヨの瞳に見つめられていました。
レトルトは 頬を真っ赤に染めたまま
まっすぐキヨを見つめて言いました。
『……キヨくん、大好きだよ』
『……俺、ずっと……』
『ずっとキヨくんにドキドキしてた……』
胸に手を当てて ぎゅっと服を握る。
『でも……』
『それが恋だって…… わからなくて……』
レトルトは恥ずかしそうに少し目線を落とし、 でも嬉しそうに 言葉を続けます。
『俺……いっぱい キヨくんに触りたい……!』
その言葉にキヨの瞳が 大きく見開く。
『キヨくんに、もっと… 触られたい……』
『……ずっと……』
『ずっと、一緒にいたい!』
その言葉を言い終えると――
レトルトは もう一度キヨの頬に手を添えて
そっと 唇を重ねました。
さっきよりも
少しだけ、 長いキス。
気持ちを伝えるように。
好きだと 伝わるように。
キヨはまた ゆっくりと目を閉じました。
そして レトルトの背中へ そっと腕を回して
ぎゅっと抱きしめます。
大事なものを抱きしめるみたいに
優しく。
強く。
離さないように。
キヨは、 レトルトを抱きしめたまま 静かに呟きました。
「……俺も……」
レトルトが ぴくりと反応して顔を上げます。
キヨは 照れくさそうに視線を逸らしながら、 それでも ちゃんと伝えるように言いました。
「……俺も、 レトさんが好きだ」
「小麦畑で倒れてた レトさんを見た時から… ずっと、好きだった」
キヨのまっすぐな言葉と まっすぐな気持ち。
そして――
キヨは、 ごくりと唾を飲み込んで、
「……俺だって.. レトさんに、 触りたい……」
その言葉に レトルトの顔は真っ赤になってしまいましたが、 キヨはさらに 耳まで真っ赤にして
もごもごと 口ごもりました。
「……それに …レトさんに……」
「……触って……ほしい……」
消え入りそうな声。
その瞬間――
レトルトの顔が 一気に明るくなります。
『……っ、嬉しい!!』
『キヨくん、大好きだよーー!!』
そう叫んで、 勢いよく もう一度キヨに抱きつきました。
キヨは驚いたあと、 すぐにくしゃっと笑って、
「ははっ……!レトさん、苦しいって!」
照れくさそうに笑いながら レトルトを抱きしめ返しました。
ざわざわと揺れる 金色の小麦畑の真ん中で
ふたりの笑い声が いつまでも響いていました。
ひとしきり笑い合って抱きしめ合ってお互いの気持ちを伝え合った2人は、 丘の上に並んで座り 金色の小麦畑を眺めていました。
ぎゅっと 手を握り合った 指先から伝わるぬくもりが 嬉しくて….。
そして、レトルトはふ っと息を吐きました。
胸の奥が、 少しだけ重い。
でも――
(ちゃんと、 話さなきゃ。)
レトルトは、 何かを決めたように きゅっと唇を結びました。
『……キヨくん』
いつもより 少し低い声。
『……聞いてほしいことがある』
その目は―― 真剣でした。
キヨも、 自然と表情を引き締めます。
そして、
こくりと頷きました。
「……うん」
少しの沈黙。
風の音だけが、 ふたりの間を通り過ぎる。
レトルトは、 握った手に少し力を込めて――
静かに、 口を開きました。
『……俺… ……実は……』
そして――
『….隣の国の、国王なんだ』
その言葉に キヨは ぴくりと肩を揺らしました。
(……やっぱり。)
胸の奥で 小さく呟く。
新聞で見た写真。
死んだと報じられていた国王。
レトルト王。
ずっと、 聞かないようにしていた真実。
でも――ついに。
キヨは ぎゅっと唇を噛みしめて レトルトの手を握り返しました。
その先の言葉を、 ちゃんと聞くために。
レトルトはキヨの手を握ったまま
ぽつり、 ぽつりと話し始めました。
『……俺の父さんと母さんは…… 殺された』
レトルトは ぎゅっと目を閉じて 震える声で続けます。
『……俺の叔母が、殺したんだ』
『その叔母は… 国を乗っ取るために……」
『……俺の事も…殺そうとしてた』
キヨの表情が、 強張る。
『……キヨくんが助けてくれた日……』
レトルトの瞳があの夜を思い出すように 遠くを見つめる。
『俺を殺す為に追いかけてきてた家来達から逃げてたんだ。』
レトルトの震える手を キヨは 何も言わずに
そっと強く握り返します。
レトルトは、
小さく息を吸って――
また、 言葉を紡ぎました。
『……俺… 叔母から、毎日、毎日 暴言を吐かれて……』
『殴られて、脅されて …気づいたら……』
そこで、 言葉が詰まる。
『……何も、感じなくなってた……』
キヨの胸が ぎゅっと締め付けられました。
レトルトは 静かに続けます。
『ただ…… 時間が過ぎるのを 待ってた……』
『死んでるのか、 生きてるのかも… わからなくなってた……』
『世界が….灰色に…見えてた..』
淡々と語るその声が、 あまりにも苦しくて キヨは 思わずレトルトを抱き寄せました。
「……もういい……」
震える声で そう言って。
「……もう……いいよ……」
キヨはレトルトを抱きしめました。
キヨの腕の中で―― レトルトはキヨの胸に体を預けます。
(キヨくん、あったかい)
苦しかった胸の奥が 少しずつほどけていく。
レトルトは 小さく笑って ぽつりと呟きました。
『……でも……』
キヨが 優しく顔を覗き込む。
レトルトは、 涙で少し潤んだ瞳のまま
ふわりと笑いました。
『……キヨくんに出会って 俺の世界は、変わった』
『綺麗で 色鮮やかで…… 生きてることが 嬉しかった……』
『キヨくん……本当に、ありがとう』
レトルトは キヨを抱きしめました。
強く。 愛おしそうに。
そのぬくもりを 確かめるように。
キヨはレトルトを抱きしめたまま、言えなかった真実を話し始めました。
「……レトさん、 実はさ レトさんが国王なの、
知ってたんだ」
レトルトは顔を上げて驚きを隠せないように 目を丸くします。
「……新聞で、読んだ」
「……でも、俺……」
首を横に振る。
「……そんなこと どうでもよくて」
レトルトの瞳が、 揺れる。
「俺……レトさんと 一緒にいれれば、幸せだった」
迷いのない、まっすぐな声。
「……レトさんと過ごせる時間が、 楽しかった」
「……笑ってくれるのが、 嬉しかった」
「それだけでよかったんだ」
その言葉に――
レトルトの目から 涙が溢れました。
今度は 悲しい涙じゃない。
あたたかい涙。 幸せの涙でした。
キヨは、 泣いているレトルトの涙を 親指でそっと拭いました。
優しく 大事なものに触れるみたいに。
そして、 いつもの太陽みたいな笑顔で にかっと笑います。
「……レトさん」
真っ直ぐな瞳。
まっすぐな声。
「レトさんの、辛い過去も――」
「これからの未来も――」
ぎゅっと、 レトルトを抱きしめる腕に
力を込めて。
「全部、 一緒に抱きしめたい」
レトルトの瞳からは止めどなく涙が溢れ落ちます。
キヨは、 そんなレトルトを見て ふっと笑って 額をこつんと合わせました。
「……俺が」
「レトさんの世界を――」
にっと、 自信満々に笑って
「カラフルにする!!」
その言葉は――
まるで、
魔法みたいでした。
レトルトの灰色だった世界に 色をくれた人。
ずっと暗闇にいた レトルトの手を引いてくれた人。
その人が今、 目の前で笑っている。
レトルトは、
涙をぽろぽろ流しながら――
くしゃっと笑いました。
『……うん…! ……うんっ……!!』
泣きながら 何度も何度も頷く。
金色の小麦畑の中で、 ふたりは いつまでも抱きしめ合っていました。
レトルトが顔を上げると、 涙で滲む視界の先には 大きな虹が かかっていました。
赤
橙
黄
緑
青
藍
紫
色鮮やかな光の橋。
まるで――
灰色だったレトルトの世界に 色が戻ったことを 祝福するように。
まるで――
ふたりの未来を、 優しく照らすように。
『……きれい……』
小さく呟いたレトルトの 瞳には、 もう絶望の色はありませんでした。
キヨは、 そんなレトルトを見て にかっと笑います。
「ほらな! 言っただろ?」
「レトさんの世界、 カラフルになった!」
その言葉に――
レトルトはにこっと と笑って、
『うん!! ほんとだね!!キヨくんと一緒なら、どんな世界でもカラフルに見えるね!』
そう言って、 キヨの手をぎゅっと握りました。
その日――
レトルトの世界は 完全に色を取り戻したのでした。
昔々、あるところに――
ひとりの王子さまがいました。
王子さまの見る世界は、
いつだって灰色。
空も、花も、
人の笑顔さえも。
なにもかもが色を失っていて、
王子さまは
その世界に絶望していました。
腕には、
死へと導く呪いを抱え。
生きる意味さえ
見失っていたのです。
そんな王子さまの前に
ある日、
ひとりの少年が現れました。
太陽みたいに明るくて あたたかくて
まぶしいくらいに 笑う少年でした。
少年が王子さまに見せた世界は――
空の青。
麦の金色。
夕焼けの赤。
涙の透明。
そして、
恋の色。
どれも、
きらきらと輝く
色鮮やかで
美しい世界でした。
カラフルに輝くその世界は、
王子さまにかかった
死の呪いをほどき
凍っていた心を溶かし
生きる希望を
与えてくれたのです。
そして王子さまは、
初めて知りました。
誰かを愛すること。
誰かに愛されること。
生きることの、
あたたかさを。
それからふたりは――
いつまでも、
いつまでも
幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
終わり
最後まで読んで頂きありがとうございました!
今回はねこかに様からのリクエストを元に
ストーリーを考えさせて頂きました👑🌈
童話風に書いてみましたが、どうだったでしょうか?
感想など頂けると嬉しいですヽ(*^ω^*)ノ
リクエストも募集していますので、リクエストBOXに是非コメント下さい😊
ねこかに様、素敵なストーリー案ありがとうございました🌈
とっても楽しかったです!
それでは、また。
魑魅魍魎
コメント
6件

今回の作品も最高でした〜!😭︎💕︎︎✨ふたりが幸せになれて良かった!!🥹 表現が好きすぎて終始感動してました😫🫶🏻💕︎︎ 素敵な作品、ありがとうございました🥳🥳

うわやっば、鳥肌たった……。最後昔話みたいに書いてあるのなんか伏線みたいで好きだ…!!! 怪盗レトルトの話に載ってた気がするけど、付き合うって、その人の過去や過ちを全部、自分も背負うことになるんだよね…。レトさんの辛い過去やトラウマを一緒に背負うっていうのは、キヨにしか出来ないことだよね……。幸せになりやがれぇぇっ!!!!(泣) 今回も神作品をありがとうございました!!!!!!

うぅぅぅうっ、ううぅぅ(இωஇ`。) 最後の最後でやられました。 今までの出来事が絵本のようにパラパラと蘇ってきて、色の無い世界の中でキヨがレトさんに与えた色を自然の色で現しているのがもうほんとうに素敵で。 私が読みたいものが詰まっている。そんなお話でした! こんなに心を揺さぶられる物語を書いて下さりほんとうにありがとうございます。大好きです⸜ ෆ ⸝
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