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沙耶の父は多くの不動産、建設会社、ホテル、飲食店等のチェーン店を経営する巨大企業の社長である。
祖父は戦争に行き、その悲惨さを知っていた。戦後に苦労して友人と会社を立ち上げて缶詰工場や飲食店等を経営していた。
――会社で得た利益で孤児院を作ったり、寄付をしたりと、自分の事よりも人間社会を優先していた。実直かつ人道主義的人物であった。
祖父を見て育った沙耶の父はその生き方を嫌った。祖父が亡くなり、会社の跡を継ぐと祖父が所有していた儲けが少ない会社等を売って、不動産を買い始めた。建設会社も設立、自分の会社でビルを作っては売るという事を繰り返して莫大な財を一代で築いた。人間は衣食住に如何に固執するかを知っていた。生きるために不可欠のものである。さらには、その時の状況に応じて人間達が何を欲しているのかと見抜く能力には長けていた。
――沙耶が小学校に入学するころには政財界の黒幕的存在となっていた。
沙耶は祖父に特に可愛がられた。祖母も他人の痛みが分かる優しい女性であった。
祖父を尊敬していたので自分の父親を好きになれなかった。父には愛人が複数いた。沙耶の知らぬ子どもが何人もいるであろう。金が全ての父の考えは大抵の男女問わず殆どの人間は従うのである。
だが、実子の沙耶を愛していない訳ではなく彼流に愛していた。
――沙耶が小学校の時は常にお抱え運転手がいて送迎をさせていた。だが、父の敵や恨んでいる人物も少なくなく、娘が誘拐されるのを恐れていたのである。四歳上の兄も同じであった。
世田谷にある千坪を超える豪邸には様々な政治家、実業家達が来訪した。父の権力のおこぼれ欲しさにである。
沙耶が通った学校には父が多額の寄付金をしていた。今、通っている高校にも多額の寄付がされていた。金で買えぬものは無い、が父親の考え方である。現実的には金が無ければ何も出来ない。人間が生存する為の最大の弱点を見抜いていた。
沙耶の性格はは祖父の考え方、生き方に似ていたのである。