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残りの日本酒を飲んだあと、俺たちはまた浴衣に着替えて布団に潜る。少し離れた布団をくっつけて、何もない天井を眺めた。襖からは月の光が僅かに差し込んでいる。
「やっぱ修学旅行みたいだな」
「まぁ…」
「じゃあさ…」
あろまは体をこっちに向けてニヤニヤしている。
「なんだよ」
「えおえお、好きな人いる?」
わかったわ。こいつ、あの定番の質問をぶつけてきやがった。しかもそれをあえて俺にしてくるってんだから、なおさらたちが悪い。
さて、どう答えたものか。いねぇよそんな奴、って言うのも面白いけど、ここは素直に言ってみたい。そうしたらこいつはどんな顔をするんだろうか。最も月明かりしかないせいで顔は殆ど見えないんだけど。
「好きな人、いるよ」
「マジ!?誰!?」
おい、わざとらしすぎるだろ。
「俺の好きな人、お前だから」
そう答えると、満足そうな顔をした。このタイミングでそんなこと聞くなよ。俺は仕返しのつもりで同じ質問をぶつけてみた。
「あろまは誰が好きなの」
「俺も、お前が好きなんだけど」
紛うことないシンプルな答え。即答かよ。いや別にそれはそれで嬉しいんだけど。
「両思いじゃん」
そう言ってははっと笑う。ずいぶんと機嫌がいいみたいだ。あんなに会話が続かない関係だったのに、今ではお互いの気持ちを知ったからか、隠すこともなくなっている。
俺をからかって遊ぶあろまを、俺は無理やり自分の布団に引きずり込んだ。
「うわっ」
「大人しくしてろよ」
そしてその小柄な体を優しく抱きしめる。
「えおえお?」
やっぱりまだ俺は緊張していて、心臓がドクドクいっているのが自分でもすぐに分かるくらいだ。こんな近距離にいたらあろまにもバレちゃうかもしれないけど…
でもこいつを抱きしめて感じた。すごく速い心臓の音。俺と同じじゃないか。
「あろま、心臓の音すごい」
「お前もじゃん」
当たり前だ。好きな人を抱きしめてドキドキしないほうがおかしい。
「えおえお」
「ん?」
「好き」
「ん、俺も」
「付き合ってよ」
「もう付き合ってる」
こんな他愛のない会話をしながら、お互いの鼓動を確かめる。なんて幸せなんだろう。
「俺はえおえおにとって彼女?彼氏?」
「それって必要?」
「なんとなく聞いてみただけ」
「うーん…」
変な質問をされて困ってしまった。体格的には女性に近いのかもしれないけど、性別は男性だから彼氏か?正直どっちでも良いんだけど…
「あろみちゃんだったら彼女だな」
「俺に女装しろって?」
「してくれんの?」
「女装男子好きなのかよ、変態」
「女装男子が好きなんじゃなくて、あろまが女装したのが好きなんだよ」
あれ、俺いま凄いことカミングアウトした?
「ふーん、なんで?」
「驚かないの?」
「驚いたけど、別に予想の範疇というか」
企画で女装したときのことを話した。何でかノリノリだったこと。似合ってたことを。しかも、
「すげー可愛かったから」
「マジ?」
「うん」
そっか、と少し考える素振りを見せる。
「じゃあ…たまにならしてやってもいい…」
「ほんとに?」
「服を買ってくれたらな」
「マジで?買うわ」
「やっぱ変態じゃねーか」
冗談なのか本気なのかはわからないけれど、ちょっとノリノリだった。変な癖に目覚めそうでちょっと怖いけど…
To Be Continued…