テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ちいちゃんのかげおくり
四
次の日の朝、ちいちゃんは、フラフラしながら床下からははい出ました。
お腹が空きすぎて、もう涙も出ませんでした。
空を見上げると、あの日と同じように、雲一つない真っ青な秋の空が広がっていました。
ちいちゃんは、ふと、お父さんの言葉を思い出しました。
「空を見上げれば、いつでもいっしょにいる……。」
ちいちゃんは、自分の影法師をじっと見つめました。
「ひい、ふう、みい、よ、いつ、む、なな、や、ここ、と。」
ちいちゃんは、小さな声で数えました。
そして、パッと空を見上げました。
そこには、お父さんと、お母さんと、お兄ちゃんと、そしてちいちゃんの四人の白い影が、手をつないで、楽しそうに笑いながら浮かんでいました。
「あ、みんなだ。みんな、そこにいたんだね。」
ちいちゃんは、うれしくて、うれしくて、空に向かって両手を広げました。
「おかあちゃん、おにいちゃん、待って。ちいちゃんもいくよ。」
ちいちゃんの体は、ふわっと軽くなり、まぶしい光の中へと、吸い込まれるように上がっていきました。
もう、お腹も痛くありませんでした。寂しくもありませんでした。
四段落 終わり
霜月リラ@瑠璃ノ月第4夜
37
25
引退時。くわしくは作品へ
20
コメント
1件
第53話、読み終わったよ……。お腹空きすぎてもう涙も出ないって描写が、読んでて胸がぎゅってなった。でも最後に「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、そしてちいちゃんの四人が手をつないで笑ってる」影を見つけて、そして「みんなそこにいたんだね」って言うところでめちゃくちゃ泣いたわ。もうお腹も痛くないし寂しくもないってとこが、ちいちゃんにとっては救いだったんだなって思うと……温かい気持ちと同時に切なさも残る。ライオンさんのこういう優しい世界観、本当に好きだわ。