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準備を整え、城の庭に集まった。
「皆さん、お集まりですね」
これからエドゥのテレポートでドヴォルザーク帝国に飛ばしてもらう。
さすがに馬車では遠すぎるし、時間も掛かる。ので、大賢者であるエドゥのテレポートでサクっと転移だ。
「エドゥ、準備は万端だ。飛ばしてくれ」
「分かりました。ドヴォルザーク帝国へ飛びます。自分のどこでも良いので触れてください」
みんなエドゥの肩に触れていく。
さて、俺は……って、肩のスペースがなくなった。エドゥは小さいからな。
「ラスティ様は、自分の胸とかお尻でも」
「なんでそっちなんだよ。無理だっ」
「そんな照れなくとも」
照れるとかそういう問題ではない。スコルたちが妙な目で見つめてきているので、それは無理だ。
俺はエドゥの手を握った。
「これでいいだろ」
「……こ、これはこれで……素晴らしいです」
エドゥは照れつつも嬉しそうにしていた。
そして、ついにテレポートは始まったんだ。
* * *
ドヴォルザーク帝国の噴水広場に到着――かと思いきや、城の前に到着した。
「あれ……エドゥ」
「以前は噴水に座標を固定していましたが、こっそりお城の前に修正しておきました」
どうやら、俺の知らない間に帝国に行き来していたようだな。
「ここがドヴォルザーク帝国のお城……。ラスティさんが住んでいた場所ですよね」
スコルの言う通り。
俺は帰ってきた。
スターバトマーテル城。
子供のころから、ここで育ち――そして、追放された。
元親父アントニン、第一皇子ワーグナー、第二皇子ブラームスとの日々。それと、アルフレッドに守られてきた。
今はガラリと変わってしまった。
元親父は、親父ではなく魔王だった。
ワーグナーとブラームスの兄貴は、勝手に自爆して勝手に俺の島に住みつき始めた。
アルフレッドは、一度は死に……スコルのリザレクションで蘇生したが、まだ混乱の最中。
となれば、まともに動けるのは俺だけだ。
「それで、ラスティ様。これからどうなされるのですか?」
「ストレルカ、良い質問だ。ひとまず、城へ入ってみる。それからだな」
「では、気を付けた方がよさそうですね」
「ああ、俺は言ってしまえば部外者だ。元第三皇子で、一応偽物だからなあ。歓迎されるかどうか」
城内にいるのは、元親父に仕えていたロイヤルガーディアンにして“轟雷の魔女”の異名を持つ『スケルツォ』だろう。
その他にも侯爵、伯爵、辺境伯など多数の大貴族いる。もちろん、ストレルカの父親であるゲルンスハイム帝領伯も含まれる。
「大丈夫です。いざとなれば、自分が守ります」
「ありがとう、エドゥ。そういえば、エドゥも元はレオポルド騎士団の副団長だったよな」
「ええ、なので顔は利きますし、知り合いもいるはずですよ」
「それは助かる」
こっちにはストレルカもいるんだ。なんとかなるだろう。
いよいよ、スターバトマーテル城へ入っていく。
中は恐ろしいほど静かで……衛兵の姿がなかった。
みんな出払っているのか。不用心だな。
とはいえ、神聖王国ガブリエルと戦争中なんだ。こっちに割いている戦力がないという現れかもしれない。
どんどん中へ進んでいくと、ようやく衛兵が現れた。
「む、貴様達……いつの間に! はっ……あなた様はもしや」
こちらに気づいた衛兵は、俺の顔を見るなり萎縮した。コイツは知っている。なんで、こんなところにいるんだかね。
派兵されたって聞いたけどなぁ。