テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ラウールから貰ったお揃いのブローチを胸に飾り、2人は肩を並べて歩き出した。
❤️「(……綺麗だなぁ)」
胸元で光る小さなブローチを、時折眺めながら宮舘は自然と頬を緩めていた。
学園祭は普段の校内とは違って廊下には色々な装飾があり、あちこちから笑い声や歓声が響いている。
まるで、校舎全体が大きなお祭り会場になったようだった。
2人が最初に向かったのは、各クラスの屋台が並ぶ賑やかな中庭だった。
焼きそば。
たこ焼き。
フランクフルト。
鉄板の上で食材が焼ける音と共に、食欲をそそる香りが次々と漂ってくる。
❤️「(良い匂いだけど……俺は、お腹いっぱいだなぁ)」
宮舘は先程、目黒が自分のために作ってくれた特製パンケーキを堪能したばかりだ。
❤️「……そういえば、目黒は何も食べてないよね?」
🖤「うん。さすがに腹減った」
目黒は照れくさそうに笑った。
午前中は執事喫茶で忙しく、口にしたものといえば、味見程度のものだけだったらしい。
❤️「じゃあ、いっぱい食べよう」
🖤「うん」
宮舘がそう言うと目黒は嬉しそうに頷いた。
二人は人混みをかき分けながら、目についた屋台を次々と巡っていく。
❤️「焼きそば、食べる?」
🖤「食べる」
❤️「たこ焼きも美味しそう」
🖤「それも」
❤️「フランクフルトは?」
🖤「……それも」
❤️「ふふ、本当にお腹空いてたんだね」
🖤「だって、ずっと働いてたから」
そんな他愛もない会話を交わしながら、2人は両手いっぱいに屋台飯を買い込んだ。
運良く空いているベンチを見つけると、中庭の隅に並んで腰を下ろす。
🖤「いただきます」
❤️「どうぞ」
目黒は待ちきれないとばかりに、焼きそばを一口頬張った。
🖤「……うまっ。これ、結構本格的」
❤️「本当?」
🖤「うん。こっちのたこ焼きも美味い」
次から次へと料理を口に運ぶ目黒の姿を、宮舘は隣でそっと眺めていた。
大好きな人が、自分の隣で無防備に美味しそうな顔をしている。
ただ、それだけのことなのに宮舘には、どうしようもなく愛おしく思えた。
❤️「(……ずっと、こんな時間が続けばいいのに)」
そんなことを考えながら、宮舘は小さく微笑んだ。
やがて、目黒は買ったものを全て綺麗に食べ終えた。
🖤「……ふぅ、食った」
満足そうに息を吐いて、こちらを振り向いた時だった。
❤️「……あ」
宮舘は目黒の綺麗な頬に、小さくソースが付いているのを見つけた。
❤️「ふふ」
🖤「……何?」
❤️「目黒、ソース付いてるよ」
🖤「え、マジで?どこ?」
目黒が慌てて自分の頬を触ろうとする。
❤️「待って。俺が取るから動かないで」
🖤「え?」
宮舘はポケットから、丁寧に畳まれたハンカチを取り出した。
そして、目黒の顔をそっと引き寄せる。
❤️「……」
🖤「……」
不意に近くなった距離に、二人とも言葉を失った。
宮舘は目黒の頬にハンカチを当て、そっと汚れを優しく拭った。
❤️「……はい。取れたよ」
ハンカチが離れても二人の視線は、すぐには離れなかった。
至近距離で見つめ合うと目黒の瞳に、自分の姿が映っているのが分かる。
目黒の頬が、ほんのりと紅く染まった。
🖤「……舘さん、ありがと」
少し照れくさそうに呟く声。
その初々しさに宮舘の胸が小さく跳ねた。
❤️「……ううん」
それ以上、何を言えばいいのか分からなくなってしまう。
ただ、なんとなく気恥ずかしくなって、同時に視線を逸らした。
***
屋台の並ぶ中庭を後にした2人が次に向かったのは、賑やかな声が響いている場所だった。
❤️「射的だって」
🖤「やってみる?」
❤️「うん」
宮舘は屋台の前に立つと、コルク銃を受け取った。
❤️「よし、俺が……」
真剣な表情で狙いを定め、パンッ!と音を立ててコルクの弾が飛んでいく。
❤️「……あっ」
しかし、弾は的をかすめただけで景品は、びくともしなかった。
❤️「残念……」
宮舘が肩を落とすと、隣から声がした。
🖤「舘さん、俺に任せて」
❤️「目黒?」
目黒は宮舘から銃を受け取ると、景品をじっと見つめた。
先ほどまで屋台飯を楽しんでいた時とは違う、真剣な眼差し。
🖤「……ふぅ」
静かに呼吸を整える。
――パンッ!
最後の一発が見事に的を捉えた。
「おおっ!」
周囲から歓声が上がり――ポロリ、と狙っていた景品が台から落ちた。
目黒が生徒から手渡されたのは、小さな薔薇の髪留めだった。
おもちゃながら丁寧に作られた赤い薔薇が、陽の光を受けてきらりと輝く。
🖤「舘さん。これ、良かったら貰って?」
❤️「……ありがとう。綺麗だね」
宮舘は嬉しそうに受け取り少しだけ迷うと、その場で前髪に薔薇の髪留めをあしらった。
❤️「どう?」
赤が良く似合う宮舘の姿を見て、目黒は満足そうに目を細めた。
🖤「うん、似合ってる」
❤️「ありがとう」
2人で目を見合わせると嬉しさで胸がいっぱいになり、宮舘はまた小さく笑った。
***
暫くして2人は賑やかな中庭を離れ、校舎の中へと戻った。
廊下をゆっくりと歩いていると宮舘の足が、不意に止まる。
❤️「あっ……」
目の前の教室に掲げられていた看板には、紫色の文字でこう書かれている。
【紫の占い屋】
独特なネーミングだった。
❤️「(……もしかして)」
それを見つめていると、宮舘の胸に小さな予感が過った。
❤️「目黒」
🖤「ん?」
❤️「ここ……ちょっと入ってみてもいい?」
宮舘が指差すと、目黒は看板を見上げてから、彼へ視線を戻した。
🖤「舘さん、占いに興味あるんだ」
❤️「うん。ちょっとだけ」
🖤「俺、こういうのよく分かんないから、外で待ってるよ。行ってきな」
❤️「分かった。すぐ戻るね」
宮舘は目黒に見送られ、一人で教室の扉を開いた。
.
.
.
中は薄暗かった。
窓から差し込む光は紫色のカーテンに遮られ、室内は怪しげな空気が漂っている。
中央に置かれた机上には、いかにも占い師らしい立派な水晶玉が鎮座していた。
❤️「……本格的だな」
宮舘は思わず呟いた。
水晶玉の向こうには、紫のローブを纏い、フードを深く被った人物がいる。
その顔を見た瞬間、宮舘の予感は確信へと変わった。
❤️「……ふっか」
視界の端に、いつもの文字が浮かび上がる。
【3年A組:深澤辰哉】
【バスケ部副部長】
【渡辺翔太のクラスメイト】
💜「ん?」
宮舘の声に深澤が顔を上げる。
💜「……あぁ、君が噂の宮舘くんか」
気だるげな声だが、その口元には怪しげな笑みを浮かべていた。
💜「いらっしゃい」
❤️「噂……?」
宮舘が首を傾げると深澤は、水晶玉を指先でトントンと軽く叩いた。
💜「1年のイケメンくん。……目黒と付き合ってるんだろ?」
❤️「……え」
💜「この学園で知らない奴はいないよ。お弁当作ってもらって、デレデレだってね」
❤️「あっ……」
直球な言葉に宮舘の顔が一瞬で熱くなり、思わず俯いてしまった。
💜「ははっ。そんな可愛い君らのことが、ちょっと気になるからさ」
深澤はそんな宮舘を見て、クスッと笑うと水晶玉へ視線を戻した。
💜「タダで占ってあげるよ」
❤️「え……いいの?」
💜「もちろん」
深澤は先程までの気だるげな雰囲気を消し、静かに両手を水晶玉へ翳した。
すると水晶玉は紫色に光り、ぼんやりと球体の中で揺らめく。
❤️「(………ゴクリッ)」
宮舘は息を呑み、その光を見つめる。
💜「なるほど」
深澤が静かに口を開いた。
💜「今は、すごく順調みたいだね」
❤️「(……ほっ)」
その言葉に、宮舘の胸が少しだけ軽くなる。
💜「だけど……」
深澤の声が、僅かに低くなった。
💜「この先、君に大きな困難が訪れる」
❤️「……え?」
何を言われているのか、わからなかった。
❤️「何…?」
宮舘は思わず身を乗り出す。
❤️「俺、どうすればいいの…?」
先程までの楽しい学園祭の空気が、遠ざかったように感じ、背中に冷たい汗が伝う。
しかし深澤は不安がる宮舘をよそに、ローブの袖で口元を隠すように、
――フッと、意味ありげに微笑んだ。
💜「ん〜……そうだねぇ」
深澤は、ほんの少し間を置く。
💜「何があっても【信じること】かな」
❤️「信じる……?」
その言葉の意味を問い返すより先に、深澤は突然パンッと両手を叩いた。
💜「はぁい!これにて本日の占いは閉店!」
❤️「え?」
💜「お帰り下さーい!」
❤️「え、ちょっと待って……!」
有無を言わせぬ勢いで、宮舘は教室の外へと押し出されてしまった。
❤️「……なんだったんだ」
「舘さん」
扉が閉まる直後、聞き慣れた声がした。
顔を上げると、廊下で待っていた目黒がこちらへ歩いてくる。
🖤「どうだった?」
❤️「……うーん」
宮舘は少し考えてから、苦笑いを浮かべた。
❤️「なんか適当で、よく分かんなかった」
深澤から告げられた言葉。
『大きな困難』
『何があっても、信じること』
その二つが、頭の中に引っ掛かっている。
しかし、目黒に話す気にはなれなかった。
🖤「あはは!占いなんて、そんなもんだよ」
目黒はそんな宮舘の様子を見て、微笑むと優しく肩を叩いた。
🖤「気にしなくて大丈夫」
❤️「……そうだよね」
宮舘は気持ちを落ち着かせるために一度、深呼吸をした。
❤️「じゃあ、次行こう?」
宮舘はそう言って、目黒の手を取った。
🖤「うん」
2人は再び、人で溢れた廊下を歩いていく。
その後ろ姿は、少しずつ人混みの向こうへ消えていった。
――誰もいなくなった、占い部屋。
💜「…………」
その入り口から、深澤は静かに2人の背中を見つめていた。
先程まで浮かべていた軽い笑みはなく、深澤は小さく息を吐いた。
そして、誰の耳にも届かないほどの声で、ぽつりと呟く。
💜「……頑張ってね、宮舘くん」
その声は、どこか切なかった。
――まるで、これから始まる試練の、その始まりを告げるように。
学園祭という幸せなイベントの裏側で何かが動き始めていた。
クリオネ?
41
クリオネ?
100
#ご本人様とは一切関係ありません
コメント
9件
初コメ失礼します いつも楽しみに読ませてもらってます!毎回ニヤニヤしながら読んでます。 自分もめめだて大好きなので次回も楽しみにしています!
デートシーンがめちゃくちゃ可愛すぎて口角緩みました( 💓∀💓) 素敵なストーリーで次回も楽しみにしています✨️✨️
もうぜっちゃん監督の映画のようだよ✨️✨️✨️ 初々しい2人に今回もドキドキキュンキュンさせてもらいました🥰🥰🥰 そしてこれからどうなってしまうのか!? 毎回気になる展開が書けるぜっちゃんはやっぱ天才だぁ♡♡♡