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「もう5分だけ…って、これ10分前も言った」
朝の光がカーテンの隙間から差し込むなか、石川祐希はいつものように目覚ましより少し早く起きた。隣を見ると、髙橋藍がぐしゃぐしゃの髪のまま、彼の胸に顔をうずめて眠っている。
「……藍、起きるぞ」
「……やだ。あと5分……」
低く甘える声に、石川は眉をひそめながらも、どこか嬉しそうに微笑む。
「これ、さっきも聞いた。10分前にも」
「だってぇ……祐希さん、ぬくいんだもん……もうちょっとだけ……」
そう言って、ぴとっとくっついてくる。柔らかな髪が喉元に当たり、石川の心臓が小さく跳ねた。
「……お前さ、ずるいよな。そういうの」
「うん。祐希さんの前だけ、ずるくなるって決めてるから」
嬉しそうに微笑むその顔に、石川は結局、もう一度目を閉じた。
「ったく……あと5分だけな」
「うん♡」
(たぶん、あと3回は“あと5分”って言うんだろうな)
そう思いながらも、彼の腕は藍を包むように強く抱きしめた。